高齢ドライバーが関与した交通事故は増加傾向に
政府が高齢ドライバーの事故対策について関係閣僚会議を開会
2019年6月18日、政府は以前より検討を重ねていた交通安全緊急対策について、関係閣僚会議を開きました。
この緊急対策の中で、幼稚園や保育園の付近など未就学児が日常的に集団で移動する場所に、防護柵の設置や車の通行を制限するといった「キッズゾーン」の創設を検討。
さらに、公共交通機関の利用環境の改善や、地域の輸送サービスの多様化など、高齢者の日常生活における移動を支える取り組みを行うとしています。
また、高齢者向けの免許として、安全機能がついている車しか運転できない限定免許についても検討を開始。
この安全機能とは、ペダルを踏み間違えた時に急加速をしてしまうのを抑制する自動ブレーキシステムや、センサーで障害物を感知した際、エンジンの回転数を落として急発進を防ぐシステムを指します。
この機能はすでに多くのメーカーで実用化されていますが、現在ではメーカーが独自の規格で作っている状況で、性能に差があります。そのため、これらの機能の認定制度を創設し、クオリティの高い安全機能の普及を図るとしています。
池袋で高齢ドライバーが起こした交通事故がきっかけ
高齢ドライバーの事故については度々ニュースとなっていますが、改めて世間から注目を浴びたきっかけは、なんといっても4月に池袋で発生した、80代の男性が運転する乗用車が暴走し、母子2人が死亡し8人が重軽傷を負った事故でしょう。
こうした高齢ドライバーの交通事故は、現在の日本における社会問題のひとつです。
交通事故の発生件数自体は、2007年の6万8、603件に比べて、2016年には3万2,412件とで半分以下に減少しています。
しかし、高齢ドライバーが関与した事故の割合は、2007年では13.1%でしたが、2016年には22.3%となっており、増加の一途を辿っているのです。

こうした状況を受け、政府は道路交通法を改正。75歳以上の運転者が免許を更新する際、認知機能の検査を受け問題があった場合は医師による診断を受けることが義務となりました。
免許返納したくとも生活のためにできない高齢者が約70%
地域に住む高齢者にとって「足」を失うのは死活問題
高齢ドライバーの数は、年々増加傾向にあります。
警察庁の運転免許統計によれば、2017年時点での日本国内で運転免許の保有者は8,225万5,195人。
そのうち75歳以上の高齢者は全体の約6.6%にあたる539万5,312人。
65歳以上の高齢者をあわせた場合、その数はさらに増加します。
なぜ、高齢ドライバーは免許を返納しないのでしょうか?
同じく警察庁が発表している資料によれば、75歳以上の免許更新の際に継続した人を対象として、自主返納をためらう理由についてアンケートを行ったところ、「車がないと生活が不便なこと」という回答が68.5%となっています。
注目すべきなのは、このアンケートの対象者は「免許の自主返納を考えたことがある人」ということ。

つまり、「免許を返納したほうが良い」と考えている高齢者ですら、状況的にできない人が多く存在しているということです。
公共交通機関が発達していない地方では、コンビニやスーパーなどに車で向かう必要がある場所も多く、こうした状況で車を取り上げると身体が虚弱体質になってしまう「フレイル」になったり、身体を動かさないために要介護度が重度化するといった新たなリスクも生まれるため、「高齢ドライバーを免許返納させれば一件落着」という単純な話ではないのです。
限定免許の登場で普通の車を運転できなくなる可能性が
そうした高齢者と車を巡る状況のなか、打ち出されたのが冒頭で紹介した高齢ドライバー対策です。政府が限定免許の創設を検討していることについては、すでに多くのメディアで明らかとなっています。
先述した通り、この限定免許は自動ブレーキシステムや、急発進を防止する機能を備えた装置がついた車のみを運転できるというもの。
装置の例を挙げると、大手自動車メーカーが開発した「踏み間違い加速抑制システム」というのがあります。
これは、車両の前後に超音波の出るセンサーを取り付け(後付け可能)、前後にある障害物を検知するとブザーがなるというもの。
このとき、ブレーキと間違えてアクセルを踏んだとき、加速を抑制し、衝突被害の軽減に貢献します。
このような装置のついた車しか運転できない限定免許が創設された場合、当初は一般免許と限定免許のどちらかを選べるという選択制になりますが、装置を備えた車が十分に普及してからは、一律に限定免許のみになるとみられています。
この施策の問題点としては、経済的な事情などで、こうした装置をつけることができない高齢者は車が運転できないという問題があります。
6月には東京都が装置を装着する費用を9割補助することを打ち出していますが、こうした自治体はまだ多く存在していないのが現状です。
また、こうした装置を購入する費用を用意しても、依頼を受けてから半年後にしか用意できない場合も報告されており、すぐに装置を装着できず、タイムラグが生まれる点も問題とされています。
定年の延長により高齢者が運転する機会も増える可能性が
免許返納者にとっての新しい「足」であるライドシェア
現在、高齢ドライバー問題の解決に効果的ではないかと注目を集めているものがあります。それが、ライドシェアサービスです。これは、スマホアプリを通じて一般人がタクシーのように人員の輸送を行うという配車サービスです。
このライドシェアは、口コミがあることから質のいいドライバーがそろいやすいこと、既存のタクシーよりも価格が安いことなどから、すでに外国において交通事情を劇的に改善しているという報告が上がっています。
特に、高齢者にとって免許返納が難しい地方においては、ライドシェアにおける恩恵がより大きいと考えられており、そうした面も高齢ドライバー問題の解決に効果的です。
政府も、今年の3月に行われた未来投資会議で、安倍首相がライドシェアの活動拡大に向け、法整備を行う方針を示すなど、このライドシェアへの期待を示しています。
しかし、ここでハードルとなるのがこのサービスに競合すると考えられるタクシー業界の反発や、強盗の発生などのライドシェアで懸念される行為への対策が整っていないということ。
少なくとも、このライドシェアが高齢ドライバーの事故への対策として、今すぐ運用できるものとは言えないのが現状でしょう。
高齢者が使う代表的な交通手段は車!地方では半数も…
高齢ドライバーへの規制を打ち出す一方で、政府は企業に対して高齢者の雇用企画を創設するように努力義務を課す方針を表明するなど、定年を70歳まで引き延ばそうとしています。
これは高齢社会の中で労働力を確保するための施策の一環であると考えられますが、このときに問題になるのが、高齢ドライバーの運転する機会が増加するということです。
国土交通省が高齢者の代表的な交通手段を調べたところ、三大都市圏では65歳以上で自動車が37.3%、75歳以上では33.7%となり、地方都市圏では、それぞれ57.6%、51.7%と、圧倒的に多くなっています。

当然、70歳まで働くとなれば、通勤によって高齢ドライバーが運転する機会も増えるので、事故の可能性が増えると考えられます。
また、限定免許などの規制が実施された場合には、先述したような補助装置を車に取り付けられない事情により、通勤が困難になる高齢者が増加すると考えられます。
特に、公共の交通機関が発達している都市部はまだしも、地方においては、そうしたケースの増加が顕著になると考えられます。
「新しく補助装置のついた車を買う」という方法もありますが、収入が減少しやすい高齢者となってから車を新たに手に入れるというのは、なかなか難しいものがあります。
高齢ドライバーの対応は確かに必要ですが、免許返納をしたくともできない人がいることも確か。まずは高齢者が免許を返納しても大丈夫と思えるような環境を作ることが政府にとっての急務でしょう。
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2020年9月7日 制定