外国人技能実習制度とは、開発途上国等に対する技術支援の一環。
中国をはじめ、ベトナムやインドネシアといったアジア各国の開発途上国に対して、先進国としての日本における技能や技術、知識を習得させるという名目で、各国の20~30代の労働者を受け入れるという制度があるのです。
外国人を受け入れることができる業種も決まっており、農業や製造業など全68職種において、現在、実に15万人以上もの外国人が技能実習生として入国しています。
確かに、「日本の技術を開発途上国に移転させる」という国際貢献の名目と、自国の発展のために技術を習得したいと考える外国人の思いとがマッチした取り組みで、理想的な制度と言えるかもしれません。
しかし一方で、“日本円”という(アジアの中では)高い賃金を得られると考えるアジア諸国の外国人のニーズを逆手に取った策とも言うことができ、「実態は、労働者不足の業界における外国人労働力の確保にすぎない」という声も挙がっているのも事実です。
こうした功罪の両面が見て取れる外国人技能実習制度ですが、受け入れ可能な業種の中に「介護」を加えようとする動きが活発化しています。
人手不足が叫ばれて久しい介護業界でもあり、外国人介護士に期待する声もありますが、果たして理想通りに事が運ぶでしょうか?実現に向けてどのようなハードルが待ち構えているのか、現状と課題について考えてみました。
外国人介護士へのニーズは高い!介護業界における人材不足の救世主!?
経済連携協定(EPA)によって来日した外国人介護士は1300人超!
外国人介護士の採用や育成については、すでに多角的な支援が提供されており、地域活動の一環として、介護士を志す外国人に対して、自治体や病院、介護施設の関係者が一体となって、日本語や資格試験の勉強を行うための場を用意しています。
外国人介護士の育成するために、政府も政策的な側面からバックアップしており、制度的な整備も進んでします。そのひとつが日本といくつかのアジア諸国が締結している経済連携協定(EPA)を足場にした、看護師・介護福祉士候補者の受け入れです。
この結果、中国をはじめ、インドネシアやフィリピンといった国々を中心に外国人の看護師・介護士の候補者もどんどんと増えてきています。特に介護士では、受け入れ人数は7年間の累計で1300人を超えています。

2014年からはベトナムとの連携もスタートし、今後も毎年500人前後のペースで増えていくことが見込まれています。
「介護業界は今後も人手不足が続く予想」「日本で介護職に就きたいという外国人も多い」というのが情勢。
外国人介護士へのニーズの高さを考えると、冒頭のように、外国人技能実習制度が適用となる業種に新たに「介護」を加えるという案が出てきたのも不思議ではないと言えるでしょう。
外国人技能実習生の受け入れ可能な職種に「介護」を追加へ…そこに立ちはだかる3つのハードルとは?
外国人技能実習生のうち全体の3%にあたる約5000人が行方不明に…現状は法整備が追いついていない!?
しかし、ここに気になるデータがあります。外国人技能実習生で来日している外国人の中で行方不明になっている人が毎年1000人単位で増加を続け、2013年には5000人に迫る勢いにまでなっているのです。

外国人技能実習生のなかには、斡旋業者に多額の費用を払って来日している人もいます。
そうした斡旋を生業とする会社は、煩雑な事務手続きや、外国人に対する日本語の教育、逆に外国人を受け入れる日本の企業や団体との間に立って調整業務を行うなどしています。
しかし、そうした大義名分のもとに、当の本人(=技能実習生)から法外な報酬を徴収しているという側面があるのも事実です。
技能実習生は斡旋業者への借金を返済しながら日本で働いている人も多いのですが、膨大な借金に対する返済が滞り、結果として失踪してしまう人が後を絶たないのです。
行政としての問題も大きく、斡旋業者に対しての監督が行き届いておらず、いまだに技能実習生の失踪という事態を招いているというのが現状です。いざ実習生として働き出しても、突然、失踪などされたら現場が混乱するのは目に見えますよね。
介護は高齢者の命を預かる仕事でもあるだけに、外国人技能実習生の行方不明者が増えているという現状は、決して看過できるものではないことが明白と言えるでしょう。
言葉・習慣の壁も高いハードルに
もうひとつ、「言葉の壁」も見過ごすことができない大きな問題。日本語習得の支援がさまざまな形で行われていることからも、日本語の習得が大きな壁になっていることがわかります。
当然ながら、日本語をうまく話すことができない外国人は、日本人高齢者と意思疎通を上手く図れません。結果として、介護サービスを受ける高齢者が外国人の介護士を受け入れられない可能性も出てきます。
| N3 日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる |
N4 基本的な日本語を理解することができる |
|
|---|---|---|
| 読む | ●日常的な話題について書かれた具体的な内容を表す文章を、読んで理解することができる。 ●新聞の見出しなどから情報の概要をつかむことができる。 |
●基本的な語彙や漢字を使って書かれた日常生活の中でも身近な話題の文章を、読んで理解することができる。 |
| 聞く | ●日常的な場面で、やや自然に近いスピードのまとまりのある会話を聞いて、話の具体的な内容を登場人物の関係などとあわせてほぼ理解できる。 | ●日常的な場面で、ややゆっくりと話される会話であれば、内容がほぼ理解できる。 |
確かに、ハードルを下げることで希望者が増え、結果的に人手不足の解消へと向かう可能性はあるでしょう。しかし一方で、“サービスの質”という点では大きな不安が立ちはだかるのも事実。
介護の現場では、介護だけでなく看護や医療も含めて専門用語が飛び交っており、それをN4程度の日本語能力で対応できるのか?要介護高齢者と上手くコミュニケーションを取っていけるのか?
こうした言語の問題も残したまま、外国人技能実習制度の介護分野への拡充は進められそうな風向きですが、皆さんはどのように感じますか?
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2020年9月7日 制定