年末年始のアルコール中毒に注意を
急性アルコール中毒での搬送者数は12月が多い
年末年始を迎え、忘年会や新年会などの飲み会を楽しみにしている方も多いことかと思います。
しかし、その分、「急性アルコール中毒」の患者が多くなるシーズンでもあります。
東京消防庁の発表によると、東京消防庁管内で過去5年間、急性アルコール中毒によって救急搬送された人は、2014年の1万4,303人から2018年の1万7,755人まで増加の一途をたどっています。
そのうち12月に搬送された人は1,955人(2018年の場合)。1年間で搬送された人数の約8分の1近くとなっており、年間では最多です。

先に挙げた忘年会など集団でお酒を飲む機会が多いことが、理由として考えられます。
東京消防庁は、「体調に注意すること」や「一気飲みをしない」「飲酒の無理強いをしない」などのポイントをあげ、急性アルコール中毒にならないよう注意喚起をしています。
また、「身近に急性アルコール中毒になった人がいた場合、気道確保を行って吐しゃ物で窒息しないための回復体位を取らせる」などの対策もあわせて説明しています。
この季節は、お酒のトラブルで命の危険にさらされないよう、節度を保った行動を心がけましょう。
アルコール依存症になると身体的かつ社会的なダメージが
一時的な飲み過ぎによる急性アルコール中毒も危険ですが、過度の飲酒を繰り返すことによっておこる「アルコール依存症」も問題です。
アルコール依存症とは、自分でお酒との付き合い方(量や頻度など)をコントロールできなくなった状態のこと。
継続的にアルコールを摂取していると、体に耐性ができます。それにより、より多くの量を飲まないと酩酊状態になることができなくなります。
このような状態になった後、さらに飲酒を続けることで、理性のコントロールができず、場所やタイミングなどを考えずにお酒を飲んでしまうアルコール依存症になってしまうのです。
日本では、純アルコール換算で10gを1ドリンクと定義し、6ドリンクを超える場合を多量飲酒として、アルコール依存症の危険が高くなるとしています。
これは、ビールなら500ml缶を3本程度、日本酒なら3合弱に相当する量です。
アルコール依存症に陥った場合、体内のアルコール濃度が下がる際に自律神経症状や手の震え、幻覚などに代表される「離脱症状」が出てきてしまいます。
この症状を緩和するためにさらに飲酒がやめられなくなり、仕事をクビになったり、飲酒運転を行ってしまったりなど、社会生活にもさまざまな悪影響がおよぶことが知られています。
高齢者はアルコール依存症になりやすい
老化によってアルコール体制が弱くなっている
日本では、アルコール依存症患者における高齢者の割合の高さが問題となっています。
アルコール依存症の専門的な治療を実施している久里浜医療センターが発表した調査結果によると、アルコール依存症の受診者における高齢者の割合は年々増加。
1990年には10%以下であった割合が、2011年には20%を超え、アルコール依存症患者の5人に1人が高齢者であることが明らかとなりました。

この理由として、久里浜医療センターの樋口院長は、高齢者になるとアルコールへの耐性が弱くなり、若年層に比べて少ない飲酒量であっても、アルコール依存症になりやすいことを挙げています。
また、マーケティングリサーチを行う会社であるドゥ・ハウスが2014年に実施したWebアンケートの調査によると、65歳の男性のうち、ほぼ毎日自宅で飲酒をしている割合は44.4%と、約半数にのぼることがわかりました。
現在の高齢者は、お酒が大人のたしなみとして習慣となっていた世代であると考えられます。
高齢となり、アルコールへの耐性が低くなっているにも関わらず、この習慣を続けてしまうことで、現在高齢者のアルコール依存症が増えていると考えられるでしょう。
高齢者のアルコール依存の原因には「孤独」も
また、高齢者のアルコール依存症には、「孤独な環境」も影響していると考えられています。
定年退職などによって自由な時間が生まれると、昼夜を問わず、お酒を飲める環境ができます。
加えて、職場などとの社会的なつながりが断たれてしまうことや、生きがいを喪失してしまうことで、孤独感からお酒に走ってしまうというケースも多いのです。
また、配偶者や友人との死別や離別を経験すると、その反動で過度の飲酒をしてしまうという例もあるようです。
先に述べた通り、高齢になるとアルコールへの耐性が低くなっています。それにもかかわらず、お酒を飲む環境は整う場合が多いことが、依存症の人数を増やしていると考えられます。
さらに、高齢者のアルコール依存症では、認知症を合併する場合が多いことも問題視されています。
2003年に入院中のアルコール依存症患者に対して行われた調査によれば、60歳以上の18%で認知症が疑われ、25%で軽度の認知障害があることがわかりました。
これは飲酒により脳がダメージを受け、脳が萎縮してしまうことが原因ではないかとされています。
「お酒は少量なら体に良い」には疑問が
飲酒はがんになるリスクが高いことが判明
「酒は百薬の長」という言葉をご存じの方も多いと思います。長年、適度な飲酒は体にいいという俗説が信じられてきました。
しかし、最新の研究では、少量の飲酒であっても体に害があるということが判明しつつあります。
東大などの研究チームが2019年12月19日に米国の医学誌に発表した研究でも、その傾向が明らかとなりました。
この研究では、2005年から2016年までに全国の33ヵ所の労災病院に入院したがん患者と、がんではない患者それぞれ6万3,000人を対象に、飲酒の量や期間などを分析。
その結果、飲酒をしない人が最もがんになるリスクが低く、飲酒量が増えるにしたがって、がんのリスクが上昇したそうです。
研究では、1日に日本酒1合、ワイン1杯、ビール中瓶一本、ウイスキー1杯のいずれかと同等のアルコールを毎日飲んだ場合、食道がん、咽頭がん、大腸がん、胃がんのリスクはそれぞれ45%、22%、8%、6%上昇。がん全体では5%上昇したとされています。

これらの飲酒量は、上で紹介したドリンク単位で言えば2ドリンク程度に当たる量であり、過度の飲酒とは言えないものです。
「減酒」をサポートする新薬も登場している
アルコールの毒性は、体に悪影響を与えます。さらに依存症になってしまった場合は、社会的にダメージを負うことにもつながります。
アルコール依存症になるのを防ぐためには、お酒を飲むことを自身でコントロールできなくなる前に、酒の量を意識して減らすなどの対策を行うことが必要です。
特に高齢者においては、アルコールへの耐性が低くなっていることなども加味すべきです。
血中のアルコール濃度の急激な上昇を防ぐために、食事と一緒に飲酒することや、度数の低い酒をゆっくりと飲むことも重要です。
とはいえ、「自覚をしていてもやめられない」場合は多くあります。
この場合には、専門的な医療機関に相談する、カウンセリングを受けるなど、ひとりで解決しようとせず、周りの協力を仰ぐようにしましょう。
2019年3月には、アルコール依存症の人を対象とした処方薬で、酒量を減らすのに貢献する新薬である「セリンクロ」が発売されて注目を集めました。
このように、アルコール依存症の医療的な対策も日進月歩の進化を遂げています。しかし、まずは依存症にならないようにすることが一番です。
この年末年始は、お酒との付き合いを少し見直してみてはいかがでしょうか。
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2020年9月7日 制定