「医師の確保を目指す知事の会」が発足
2019年12月27日、岩手県は青森、福島、新潟、長野、静岡の5つの県とともに「地域医療を担う医師の確保を目指す知事の会」という組織を立ち上げることを発表しました。
この会が結成された背景には、昨年2月に厚生労働省が行った都道府県などの医師数の偏りを示す数値である「医師偏在指標」の公表があります。
この発表では、上記6県を含む16県が医師の数が需要に対して不足している「医師少数3次医療圏」とされ、そのなかでも岩手県は最も医師不足とされていました。
岩手県の達増知事は、医師の偏在により、不利益を受けている県の声を発信することを表明。この会を通して知事同士が連携し、医師の配置調整など、医師の不足や偏在について対策を提言すると発表しています。同会は、今月31日に東京で発足式を開く予定です。
かねてより、医療界では、「医師不足」の問題が叫ばれていました。
2010年に厚生労働省が全国の病院や診療所を対象に行った調査によれば、全国で16万7,063人の医師が勤務しているものの、必要数は2万4,033人不足しており、全国的に医師の数が足りていない現状が明らかになっています。
医師自体の不足に加え、厚生労働省の発表にある通り、地域によっては医師の数がまったく足りていないという状況も起こっているのが、現在の日本における医療の現状です。
このままでは地域によって受けられる医療の質に違いが出たり、地方の病院の存続にも関わる事態にもなりかねません。
地方では不足するのに、都市部では4万人が過剰人員に
医師の数は過去最多で増えている
しかし、医師の数自体が減少しているというわけではありません。2019年12月に政府は、2年に1回実施されている「医師・歯科医師・薬剤師統計」の結果を発表しました。
それによれば、2018年度末における全国の医師数は32万7,210人となっており、前回の調査に比べて7,730人増加したことが判明しています。
単純計算で家や1年で4,000人近くの医師が増加しており、1982年と比較するとほぼ倍増。
人口10万人に対する医師数でも増加しています。

こうした増加の原因は、医大などが増えたことにより、医師の養成機関数そのものが多くなっていることが挙げられます。また、現在、退職などで引退する医師の多くは、養成数が少なかった1970年代に医師となった人々です。
2018年、2019年に国家試験に合格し、医師免許を得た人はいずれも9,000人を超えています。1970年代に医師免許を取得した世代の退職者数に比べて、新たに医師になる人が多いという状況が、現在の増加を生み出している背景にあると言われています。
全国医学部長病院長会議の公表している資料によれば、1969年における全国の医大の定員は4,040人でしたが、その後80年代に医大の新設が行われ8,280人に増加。
その後7,000人台まで抑えられた時期もあったものの、現在では再び増加し、約9,400人となっています。
こうした状況を鑑みるに、80年代に医師となった世代が退職するまでは、この増加傾向が続くと考えられています。
東京と岩手では2倍も医師の数に違いが
では、何が「医師不足」を引き起こしているのでしょうか。原因とされているのが「医師の偏在」。医師数の地域格差が深刻化しているのです。
冒頭で紹介した厚生労働省の調査でも、2010年時点で勤務している医師数に対する必要な医師数の倍率について、東京や大阪で1.1倍以下なのに対し、岩手県は1.40倍、青森県が1.32倍となっているということが示されています。
また、昨年に発表された「医師偏在指標」においても、最も数値が高い東京都と、最も数値が低かった岩手県では2倍の差があることが示されました。
都道府県の地域ごとにさらに細分化された2次医療圏においては、最も高い東京都の区中央部と、最も低い秋田県の北秋田では、なんと10倍以上の開きが生まれている状況です。

つまり、「大都市などの医師の多い場所」と「地方の医師の少ない場所」の格差が非常に大きいものになっているのです。
同じ病気に罹患した場合でも、充実した医療が受けやすい体制が整っている場所と、そうではない場所で、提供される医療の質が異なってくる可能性もあります。
結果として、住む場所によって十分な医療を受けられるかどうかが決まってしまうという、不公平な状況が生まれているのです。
地方各地に広がる「無医師地帯」
こうした医療格差が最も深刻化しているのが、全国各地に存在する「無医地区」です。
「無医地区」とは地域の中心的な場所から概ね半径4kmの区域内に人口50人以上が居住しているものの、医療機関が存在しておらず、医療機関を利用するのが困難な地域のことを指します。
厚生労働省が2014年に公表した調査結果によれば、2014年時点で無医地区は637地区存在しており、その人口は12万4,122人となることが判明しています。
これは2009年の705地区に比べると68地区減少しており、同じく居住人口も13万6,272人から、1万2,000人以上減少。国や自治体の施策によって改善傾向にあります。
しかし、東京都や大阪府、神奈川県をはじめとした8県の都市部では無医地区はゼロとなっているものの、北海道や広島県、高知県などでは「無医地区」が増加しており、都市部と地方との医療格差は依然として解消させていません。
また、厚生労働省が2019年2月に行った発表によれば、2036年に医師の不足は約220地域、2万4,000人にわたると推計。一方で、必要な医師数を確保できる約60の地域では、4万2,000人が過剰人員となるとされています。
このまま対策が行わなかった場合、医師の偏在による医療の地域格差は、今後も続いていくことが予想させています。
入院患者の51%が75歳以上!2025年には1.2倍に増加する
団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者になる2025年には、少子高齢化がピークを迎え、社会保障費の捻出が困難になる可能性が指摘されています。
2025年から2040年にかけて、高齢化はさらに加速します。医療需要も増加することが見込まれます。
厚生労働省が発表した「平成26年患者調査」によれば、入院患者の51%が75歳以上の後期高齢者であることが判明しています。
同資料によれば、2010年から2025年にかけて後期高齢者の人口は1.5倍となり、それに伴い1日あたりの入院患者数は1.2倍になると推計されています。

高齢化の進行による医療需要の高まりで、今後、地方での医師の確保は大きな課題になることは間違いありません。
こうした「医師不足」への対策として現在でも、奨学金と引き換えに地方での勤務を一定期間義務とする地域枠とよばれる制度があります。
これをさらに活用、拡充するなどのほか、医師が不足する地域での勤務経験がキャリアアップに役立つような施策を打ち出すなど、医師が地方に行くことがメリットとなるような仕組みを作ることが今後は必要です。
地域に関係なく、すべての人が安心して医療を受けられるような体制づくりが急がれています。
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2020年9月7日 制定