紙おむつ廃棄の新たな手段に期待!
国交省、「紙おむつを下水道に流せる仕組み」検討
国土交通省では、下水道インフラを使った紙おむつの廃棄処分システムを検討しています。2020年1月15日はその第2回の会合がありました。
人口減少に伴って、近い将来下水道の処理能力に余裕が出ると予想されます。そこで、使用済みの紙おむつをそのまま下水に流せる仕組みが考えられているのです。
乳幼児用だけでなく、介護用紙おむつの使用量も増えています。
下水道にそのまま流せられれば、使用済みの重たい紙おむつの持ち運びにともなう家族や介護者の負担が軽減できます。
高齢化社会がさらに加速して紙おむつを使う高齢者が増えても、少ない介護人材で現場をカバーできますし、ゴミ排出まで保管の必要がないため臭いも出ず、衛生状態も保てます。
トイレに装置を設置して、汚物だけを流す、おむつを粉砕するなど、下水道管に負担のかからないよう、いくつかの具体策を産官学で検討中です。
背景にあるのは介護用おむつ、育児用おむつの消費量の増加!
乳幼児とともに近年ニーズが高まっている大人用紙おむつ。
どちらも生産量は増加傾向で、2018年のデータでは乳幼児用が約150億枚、大人用が約83億枚で約235億枚が生産されています。
2010年の生産量から比べても乳幼児用で1.7倍、大人用で1.5倍も増えているのです。

紙おむつの生産量に伴ってゴミの排出量も増加します。2015年度の一般廃棄物のうち紙おむつの割合は4.7〜5.1%でしたが、2030年度には7.1〜7.8%まで増加するとの推計もあります。
将来的にゴミ処理量の約8%を紙おむつが占める時代がすぐそこまでやって来ているため、社会のゴミ処理能力やエコロジーの観点から「使用済みの紙おむつをどう処理するのか」という問題を解決するニーズが高まっているのです。
介護負担軽減につながる「紙おむつを下水道に流せる仕組み」
紙おむつには石油起源の材料が使用
消費量が増える紙おむつを下水設備を活用して処理する取り組みは、介護業界でも負担軽減になるため期待が高まっています。

ただし、実際に大量の紙おむつを下水処理していくと、環境への影響が懸念されます。ポイントは、紙おむつに石油由来の原料が多く使われていることです。
紙おむつを粉砕して下水に流した場合、MPと呼ばれるマイクロプラスティックによる海洋汚染のおそれが指摘されています。
紙おむつは、表面材や防水材、漏れを防止する立体ギャザーやテープからできています。
「紙おむつ」と呼ばれていますが、その材料の大半は石油やポリエチレン、ポリウレタンなど石油から製造された素材です。
とくに防水材の中には高分子吸収材が使用されていて、し尿を吸収するとかさが膨らみ重くなる性質を持っています。
紙おむつ業界でも、環境への負荷を減らす取り組みを続けているものの、森林保護や紙のエコリサイクルなどにとどまっていて、紙おむつの材料である石油資源の削減の取り組みは遅れているといった報告もあります。
また、紙おむつのリサイクルも進んでいないのが現状で、下水処理と環境への配慮とバランスをいかに図るかが大きな課題だといえます。
費用負担はだれが?実現に向けた技術・制度的問題
検討会で挙がって処理方式は次の3つ。
- Aタイプ(固形分離タイプ)…トイレに設置した紙おむつ専用固形佛分離装置に紙おむつを入れて汚物を分離。固形物は下水に、紙おむつはゴミに出します
- Bタイプ(粉砕・回収タイプ)…トイレに設置した紙おむつ粉砕装置で使用済みの紙おむつを粉砕。専用配管で建物外の敷地内の処理装置まで送り、固形物を分離してゴミとして回収します
- Cタイプ(粉砕・受入タイプ)…トイレ内に設置する粉砕装置で粉砕して、そのまま下水道に流します
3つの処理方式にはそれぞれメリット、デメリットがあります。
例えば、Bタイプは使用済みの紙おむつのゴミ出しが不要になる反面、敷地内に設置する分離・回収装置の維持や管理でコストがかかります。
一方、最もシンプルなCタイプでもゴミ出しが不要になるものの、そのまま粉砕して下水道に流すため、下水管や下水処理場への負担や環境への影響が懸念されます。
利用者の負担を考え、下水道施設や環境への影響をどこまで配慮できるか探りながら、技術的な課題をクリアしていく必要があります。
また、技術面以外でも、従来と異なる下水の利用方法となるため、下水道への受入推進の調整、行政や市民の費用負担の割合、市民の適正利用の対策など、さまざまな検討課題が立ちはだかっているのが現状です。
国交省による下水道への紙おむつ受入ガイドラインの作成・公表は2022年度の予定で、まだまだ実現にはまとまった時間が必要と考えられます。
並行して紙おむつリサイクルも推進する必要あり!
処理方式の開発、下水施設や環境への配慮、費用負担など制度面の整備など、紙おむつの下水処理実現にはさまざまな課題が考えられます。介護の負担を軽減するためにも、引き続き国や業界全体で取り組みを進めて、下水活用の実現化を目指していく必要があります。
一方で、現状のように石油系素材を使用した紙おむつのゴミはマイクロプラスティックによる海洋汚染やゴミ処理能力の圧迫につながります。環境への影響を考慮し、下水道のインフラ整備と合わせた使用済み紙おむつのリサイクル化の実現も必要です。
紙おむつは、素材として上質パルプ、樹脂、高分子吸収素材から構成されています。現在、主に焼却処理されていますが、リサイクルによってパルプなどの有効活用が期待できます。

現在、紙おむつのリサイクルは、一部市町村で実施されています。回収した使用済みの紙おむつを消毒・分離して脱水乾燥。パルプやプラスティックのリサイクル原料となって段ボールやバイオマス燃料へと生まれ変わります。
ただ、こうしたリサイクル事業はまだ地域も限定的で規模も小さいため、環境保全のために一層推進していくべきでしょう。
高齢化率の上昇に伴って、紙おむつの消費量は今後も増大していきます。
社会全体で下水インフラの活用をベースと併せてリサイクルの方法も模索していくことが求められています。
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2020年9月7日 制定