特殊詐欺の被害額は301億円超にもなっている
認知件数は減少するも依然として多い
2020年3月、警視庁は、2019年の特殊詐欺による被害額が全国で300億円を超えていることを明らかにしました。
この発表によると、2019年に行われた特殊詐欺の認知件数は1万6,836件で、被害額は301億5,000万円。件数では全体の5.6%にあたる1,008件、被害額では21.3%に当たる81億4,000万円が減少となりました。
しかし、8年連続で被害額は300億円を突破するなど、いまだに多くのお金が詐欺によってだまし取られていることになります。

特殊詐欺とは、「電話やはがきなどの連絡方法で、直接対面することなく現金あるいはキャッシュカードをだまし取る詐欺」を指す言葉で、「オレオレ詐欺」などが代表的です。
現在、こうしたオレオレ詐欺と呼ばれる手法は知名度が上がったことから被害件数が減っており、前年度に比べると26.8%減に当たる6,697件。
同じく知名度が高い、架空の事実を口実として、金品を請求する詐欺「架空請求」が同じく26.8%減で3,546件となるなど、周知が進んだ影響が見て取れます。
しかし、医療費や税金の還付を装って金品を要求する還付金詐欺については、前年度比25.2%増の2,383件と被害は増加しています。
こうした中、警視庁は2020年1月から特殊詐欺の手口について10種類の分類を行うことを発表し、被害防止に力を入れています。
| 特殊詐欺の10分類 | |
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オレオレ詐欺 |
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預貯金詐欺(新設) |
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架空料金請求詐欺 |
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還付金詐欺 |
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融資保証金詐欺 |
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金融商品詐欺 |
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ギャンブル詐欺 |
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交際あっせん詐欺 |
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その他の特殊詐欺 |
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キャッシュカード詐欺盗 |
被害者の8割は女性高齢者である
特殊詐欺の被害者に多いのが高齢者で、圧倒的に多くの割合を占めるのが高齢女性です。
警察庁の発表によれば、被害者全体のうち、約65%が65歳以上の女性。オレオレ詐欺においては、6,697件中、84.3%に当たる5,643件が高齢女性の被害となっています。
また、年齢別で言えば、特に80歳前後の女性が多く被害に遭っているようです。この状況が生まれた背景には、主に環境によるところが大きいと考えられます。
総務省の発表した労働力調査によれば、65歳以上の就業率は24.9%です。しかしこれを男女別で見ると、男性が就業率34.1%であるのに対して、女性は17.8%と、倍近い開きがあります。
また、厚生労働省の国民生活基礎調査では、2018年6月時点で75歳以上の高齢者が単身で住んでいる高齢単身世帯について、男性が約94万4,000世帯であるのに対して、女性が約293万5,000世帯と、こちらは女性の方が3倍近く多い結果となっています。
これらのデータから、高齢女性は家にひとりでいるというケースが非常に多く、詐欺集団のターゲットとなっていると考えられるのです。
キャッシュカードをすり替える手口が多発している
近年、特殊詐欺の中でも流行しつつあるのが、キャッシュカードをすり替えて金銭を盗む「キャッシュカード詐欺」と言われるものです。
これは、警察官や銀行協会、あるいは大手百貨店など、社会的信用の高い職業を名乗り、高齢者などに対して「キャッシュカードが不正に利用されている、偽造されている」などの連絡を行います。
その後、受け子と呼ばれる詐欺グループの一員が、実際に被害者宅を訪れ、キャッシュカードと暗証番号のメモに封をして保管するよう指示。
それをポイントカードなどが入った別の封筒とすり替えることで、キャッシュカードを不正に入手するという方法が一般的です。
従来のオレオレ詐欺などでは、主にATMなどを介して現金を振り込ませる、または郵送させるという形で詐取する形がほとんどでした。
しかし、現在ではこうした詐欺についての周知が進み、金融機関や郵便局で、詐欺の可能性に気付いた職員がそれを阻止するなどの水際対策が多く行われるようになっています。
そのため、こうした実際に人が訪れてキャッシュカードを不正に入手するという方法が流行するようになったと言えます。
また、この方法では、別の封筒を被害者が保管することから、キャッシュカードが盗まれたことに気づくのが遅れることが多くなります。それもまた被害を増やす一因となっています。
詐欺がなくならない背景には防犯意識の薄さが
特殊詐欺が横行し続けている理由には、多くの人が「自分は詐欺の被害に遭わない」と考えて十分な対策が行えていないことがあります。
2017年に内閣府が発表した「『特殊詐欺に関する世論調査』の概要」という資料では、特殊詐欺の手口の認知度は、オレオレ詐欺の97.8%を筆頭にかなり高いという結果が出ています。
一方で特殊詐欺に対する意識の調査では、「自分は被害に遭わないと思う」「どちらかと言えば自分は被害に遭わないと思う」と答えた人が80.7%と大多数に上りました。
特に被害に遭いやすい70歳以上の人に関しては、81.4%がこの2つの回答を選んでおり、平均以上に詐欺への被害に遭わないと考える人が多い傾向が見て取れます。

さらに、特殊詐欺への対策のついての調査では、情報収集やナンバーディスプレイの活用などの対策を一切行っていないと答えたのが14.4%でした。
70歳以上では23.9%が、何の対策も行っていないと回答しています。
また、奈良県警察本部が行った同様のアンケートでは、特殊詐欺への対策を取っていないと答えた人の割合が70%になっています。
このように、根拠のない自信を理由に、特殊詐欺への対策を取らない人が多くいるのです。
国や民間企業が取り組む新たな特殊詐欺対策とは
不正利用された固定電話の停止が始まっている
国も、特殊詐欺への新たな対策に乗り出しています。
2019年9月には、警察が要請を行うことで、通信事業者が固定電話の利用を止めることができる規制措置を設けました。
これは「特殊詐欺に使われる電話のおよそ8割に固定電話の番号が使われている」状況を打破するためのもの。
実際、詐欺グループは携帯から電話をかけていても、固定電話からかかっているように見せることができる転送サービスを悪用しています。これらを規制することが重要であると国が判断した結果でしょう。
この規制に協力しているのはNTTやKDDI、ソフトバンクなど、通信大手5社です。
まず詐欺に使用された固定電話に対して、警察が警告。その後、固定電話が再び詐欺に使用された場合は、通信事業者に警察が利用停止を要求するという流れとなっています。
また、利用停止を受けた番号を販売した再販業者に対して、「販売した番号が詐欺に使用されているケースが多い」との判断が下された場合、通信事業者がその再販業者への販売を停止する措置もあわせて取られることになりました。
この規制措置が設けられた2019年9月から12月までの3ヵ月間に、実際に固定電話が利用停止になった例は887件。この規制措置は、一定の効果を上げています。
AIの音声解析による詐欺対策も
通信事業者も、特殊詐欺への対策を打ち出しています。
2019年8月、NTTグループは、特殊詐欺を解析するAIを使うことで、電話の会話内容が詐欺である可能性のある場合、警告が行われるシステムの実証実験を開始することを発表しました。
このシステムが組み込まれた電話機を使うと、通話が録音され、クラウド上へと転送されます。
AIがその録音された音声や会話内容を解析します。
特殊詐欺である可能性が疑われた場合には、あらかじめ登録された本人や親族などに、注意喚起のメールを送信してくれます。
NTTは、実証実験の後、2020年秋ぐらいからの実用化を目指すとしています。
警察庁のデータによると、特殊詐欺の被害者たちがだまされたタイミングとして、最も多いのは通話中で70.3%。NTTのシステムが実用化されれば、水際対策のひとつとして、特殊詐欺を防止する一助となると考えられます。

上記で説明した固定電話の停止や、新たなシステムの活用など、今後も官民が一体となった特殊詐欺対策の動きは広がりつつあります。
同時に、自分が特殊詐欺に遭うかも知れないという心構えを持ち、日ごろから対策を欠かさないことも大切です。
特に被害者となりやすい高齢者が身近にいる方は、こうした詐欺の危険性について本人と話し合っておくなど、被害者とならないための対策をしておきましょう。
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2020年9月7日 制定