老人ホームでの感染の実態とは
高齢者施設ではクラスターが相次いでいる
4月下旬現在、新型コロナウィルスの感染拡大はなおも全国的に拡大しつつあり、各地の介護施設においても「クラスター(集団感染)」が多数発生しています。
例えば、東京都大田区にある特別養護老人ホームでは、4月1日に30代の男性職員の感染が判明。この男性が担当しているフロアの入居者70人にPCR検査を実施したところ、12人の感染が確認されました。
また、群馬県伊勢崎市にある有料老人ホームでは、4月12日までに合計で43人もの利用者の感染がわかっています。
群馬県の感染者数90人のうち約半数が、1ヵ所の介護施設で発症していたわけです。
さらに4月20日には、富山県にある介護老人施設において18人の感染が確認されています。
当初この施設では、1人が亡くなり、そのほかにも4人の感染がわかっていました。その後も検査を行ったところ、合計で18人の感染が明らかとなりました。
多くの人が集団生活を送る介護施設では、1人が感染した場合に、ほかの入居者や職員に感染していく危険性は極めて高いと言えます。
特に高齢者は感染すると重症化しやすいため、万全の予防策が必要です。
通所は多く、入所は少ない傾向
要介護の高齢者などに提供される介護サービスには、大きく分けて以下の3種類があります。
- 特別養護老人ホームなどの「入所介護」
- デイサービスなどの「通所介護」
- ホームヘルパーによる「訪問介護」
現状において、これらのサービスのうち最も集団感染が多く発生しているのは通所介護です。
4月7日、政府は緊急経済対策を発表しました。その中では感染リスクの高さから通所系サービスが休業要請を受けると想定され、特例ともいえる支援策が盛り込まれています。
例えば、デイサービスにおいて訪問介護など代替サービスを提供できるようにする施策もその1つです。そのために必要な経費や訪問介護のヘルパーとの連携に対する補助を行うことも決められています。
また、デイサービスが訪問サービスを行う際には、通常は必要となるサービス担当者会議の実施も不要とされました。
なぜ、通所介護では感染者数が多いのでしょうか。
通所介護では多数の利用者に事業所まで来てもらい、入浴や食事、レクリエーションなどのサービスを提供します。そのため、営業中は毎日多くの利用者が出入りするため、感染者が混じる危険からは避けられません。
さらに、車による利用者の送迎時や入浴や食事の介助のとき、あるいはレクリエーションの場面では、利用者同士あるいは職員と利用者がいわゆる「3密(密閉空間、密集場所、密接場面)」の状態にならざるを得ません。

老人ホームなどの入所系施設であれば、外出するのはサービス提供者のみであり、来訪者も原則立ち入り禁止としているため、利用者が感染するリスクは低いのです。
閉鎖や倒産の可能性もある
実際に閉鎖された施設はあるのか?
NHKの調査によると、4月20日までに全国で883の介護サービス事業所が休業していることが明らかとなっています。
多いのはデイサービスなど通所型の施設。全国各地のこれほど多くの施設が一度に休業することは、いまだかつてない事態です。
デイサービスのような通所型施設とショートステイなどの短期入所施設については、緊急事態宣言に基づき都道府県知事が必要と判断すれば、休業要請を行うことができます。
しかし、現状では多くの自治体が、休業要請は行わずにサービスを継続していく方針です。
そのため休業を行わなかった場合でも、行政的に問題があるわけではありません。
つまり4月20までに休業を決めた介護施設の多くは、自治体からの要請ではなく自らの判断で休業を決めた施設であるわけです。実際、NHKの取材によると休業を決めた883施設のうち98%にあたる863施設が自主休業でした。
例えば北信越地方にあるグループホームでは、職員の1人が新型コロナウィルスの感染者と接触してしまい、「濃厚接触者」となったのを契機に施設を閉鎖しています。
ただ、入居者は重度の障がいを持つ人が多いため、運営者である法人は男女3人の職員に交代でケアを行うよう依頼しているとのことです。
福島県の市が運営する保健福祉関連施設でも、4月上旬に職員2人の感染が判明。正職員260人のうち37人が自宅待機を行うことになりました。
これだけの職員が一度に勤務できなくなると、保健福祉関連施設としての正常な運営はできません。必要な公的サービスが、十分に行き届かない事態が発生しています。
介護施設利用時に感染する危険性があることから、デイサービスなどの利用控えが広まっているのも事実です。
このような状況が続くと、倒産に追い込まれる施設が続出する恐れもあります。
老人ホームが閉鎖されたらどうなるの?
デイサービスを利用しない場合、自宅で過ごす要介護者には訪問介護による支援が必要です。
厚生労働省は、発熱を理由に利用を断った利用者に対して、訪問介護などのサービス提供を検討するようデイサービス側に求めています。
通所介護事業所は休業する場合に、職員が利用者宅を訪問してリハビリなどのサポートを行ってほしいということです。
しかし、通常デイサービスの利用者は1施設につき数十人~100人。多くの利用者の自宅をデイサービスの職員だけで訪問し、サービスを提供していくというのは難しいことが想像できます。
そこで厚生労働省は、休業したデイサービスの代わりにホームヘルパーの利用を促進する方針も提示しました。
それまでデイサービスを利用していた人には、担当のケアマネージャーに相談して新たに訪問介護事業所を見つけてもらい、そこで生活援助や身体介護などの介護サービスを受けてもらおうという訳です。
しかし近年、訪問介護の人手不足は深刻化していています。
2018年の訪問介護事業所の有効求人倍率は、平均13.1倍。全職種で平均1.46倍ですから、それより約9倍も高いのです。

新型コロナウィルスの影響で急に訪問介護の利用者が急増しても、その需要に対応できない恐れがあります。
コロナ禍での入居は「応相談」となっている
通所介護、訪問介護の利用が難しくなりつつあるなか、選択肢として考えられるのが老人ホームへの入居です。新型コロナウィルスが猛威を振るう現状において、老人ホームに入居することはできるのでしょうか。
実際に入居できるかどうかについては、各施設に問い合わせる必要があるでしょう。
しかし有料老人ホームを全国展開している大手事業者の中には、現地見学を当面の間休止しているところもあります。
老人ホームの入居は、利用者本人もしくはそのご家族が現地を訪れ、施設の見学をした後で入居するかどうかを決めるのが定石です。
そのため、これから複数の施設を見学して入居先を選ぶというプロセスを経るためには、「その施設が見学受け入れを行っているかどうか」を確認する必要があります。
また、大手有料老人ホーム運営会社の中には、5月以降における有料老人ホームの新規開設時期を遅らせるという判断をしているところもあるようです。
さらに、老人ホームによっては、職員・入居者に感染者が発生しています。各運営会社のホームページでもそうした事態は報告されていますが、入居を考える場合は事前に施設側に相談が必要です。
今回は各種介護施設における新型コロナウィルスの影響(4月下旬時点)について考えてきました。
実際に介護施設を利用になる際は、担当のケアマネージャーや介護施設、そしてご家族の間でしっかりと話し合い、「感染しない・させない」を実現できる判断が必要です。
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2020年9月7日 制定