地方での医師不足が深刻化している
山口県、医師確保計画を公表
2020年3月31日、山口県は第7次山口県保健医療計画の一環として、「山口県医師確保計画」を策定しました。
この中で、同県は医師の偏りを表す指標である「医師偏在指標」が全国31位であることや、医師の平均年齢が52.5歳と全国で最も高齢化が進んでいることを指摘しています。
2024年に医師の時間外労働について規制が始まることや、医師の中で女性の割合が増加していることを考慮し、医師の労働環境について改善が必要であることを説明。県全体の医師の総数を増やすことが重要と述べています。
同県では、医師確保の方法の一つとして、山口大学医学部に推薦入試の「緊急医師確保対策枠」を設置。この枠での入学生全員に対して、「山口県医師修学資金」という、修学に必要となる資金の貸し付けを行っています。
この貸付は、大学卒業から2年以内に医師免許を取得し、同県の公的医療機関に9年間勤務することで、返済が免除されるのが特徴です。
山口県に限らず、現在地方では医師不足が深刻化し、確保の必要に迫られています。
医師の数は地方では不足!都市部では4万人が過剰人員に
全国規模で医師の数は減少しているのでしょうか。
2019年12月に政府が発表した「医師・歯科医師・薬剤師統計」によれば、2018年度末の全国の医師数は32万7,210人。
調査は2年に1度行われていますが、2016年の前回調査に比べると7,730人増加しており、過去最高となっています。
単純計算で言えば、年間当たり4,000人近くの医師が増加していることとなり、1982年と比較すると、ほぼ2倍まで増加しています。
しかし、医師数の地域格差は広がっています。
地域格差を表すのに使われるのが「医師偏在指標」です。
これは医師の地域偏在を表す指標として使われ、数値が大きいほど医師数が多く、小さいほど医師数が少ないことを表しています。
2019年に厚生労働省が発表した医師偏在指標では、全国1位となる東京都と47位の岩手県ではほぼ倍の差があることが判明。
さらに、地域ごとに分かれた2次医療圏の場合では、最も高い東京都の23区中央部と、最も低い秋田県の北秋田では、10倍以上の差となっています。

さらに問題視されているのが「無医地区」と呼ばれる場所です。これは、地域の中心的な場所から概ね半径4kmの区域内において、人口50人以上が居住しているものの、医療機関が存在しておらず、医療サービスを利用するのが困難な地域を指します。
2014年に厚生労働省が行った調査では、こうした無医地区は全国に637地区存在し、そこに含まれる人口は12万4,122人にも上ります。
超高齢社会では医師も高齢化する
2060年には4人に1人が75歳以上になる
日本は超高齢化社会に突入しつつあります。
内閣府が発表したデータによれば、65歳以上の高齢者人口は、2015年に3,392万人となりましたが、「団塊の世代」と呼ばれる人々が全員高齢者になる2025年には3,657万人まで増加。
2042年に3,878万人となるピークを迎えるまでは、増え続けると推計されています。
その後、高齢者人口は減少するものの、高齢化率は上昇を続ける見込み。さらに、75歳以上となる後期高齢者の割合についても同じく上昇し続けるとされています。
2035年には高齢化率が33.4%に達し国民の3人に1人、2060年には39.9%で2.5人に1人が高齢者になると予想されています。1971年から1974年生まれの「団塊ジュニア世代」が後期高齢者となった後、2060年には後期高齢者の割合は26.9%となり、4人に1人が75歳以上になると推計されているのです
こうした社会の高齢化が進むにあたって、今後はより医師の必要数が増えていくことが考えられます。
2036年には65歳以上の医師が2倍になる
しかし、高齢化の波の中で、医師の高齢化も深刻な状況となっています。
日本医師会総合政策研究機構が公表した調査結果によれば、医療施設に勤務する医師数は、2016年時点の30万4,759人から、2036年に36万8,593人になり、20年で6万3,834人の増加が見込まれています。
年齢構成別に見ると、24歳から34歳の医師数は2016年時点の6万518人から6万5,676人と5,000人程度の増加で、35歳から49歳までの増加も8,464人と8%程度の増加。
そんな中、65歳以上は4万4,898人と大幅に増加し、2倍にせまることが予想されています。

また、勤務地別で見た場合、病院では65歳以上の医師が2万3,516人増え、実に149%の増加。診療所では、53%にあたる1万7,168人が増加し、75歳以上に関しては90%増となる1万889人増えるとされています。
また、診療所では35歳から49歳、50歳から64歳の医師は、それぞれ28%、39%の減少することも合わせて述べられており、医師の高齢化がより顕著になりそうです。
働き方を改善して若手を確保
各地域で行われる医師不足への対策
こうした医師の高齢化や偏りについて対策を推し進めているのは、冒頭で紹介した山口県だけではありません。
まず千葉県では、「千葉県地域医療支援センター」という機関を設置。医師不足の状況把握や分析、修学金の貸し付けや医師不足の病院への医師派遣を促進する事業などを県の直営事業として行っています。
また、医師や医学生のキャリア形成支援や、修学資金を受けた医学生や医師への面談などのサポート事業を、NPO法人である千葉医師研修支援ネットワークに委託するなどの包括的な支援を実施。その影響で、ここ数年は研修医の数が毎年増加傾向となっているそうです。
長崎県では、日本一離島が多いという特徴を持つことから、離島の医療体制を充実させることを目標に「ながさき地域医療人材支援センター」という機関を設置。
アンケート調査をもとに、離島における勤務の問題点を調査し解決を目指すほか、医学生に離島での生活や診療について情報発信を行うなどの活動を行っています。
北海道では、修学資金の貸し付けに加えて、北海道大学や札幌医科大学、旭川医科大学など、医師の養成機関の枠を増やす取り組みが実施されています。
このように全国の自治体が医師不足を対象するべく、それぞれの対策を行っているのです。
医師の6割以上が「今の働き方は過剰」と回答
とはいえ、医師不足の解消には、いまだ高いハードルがあることも事実です。
厚生労働省が2017年に発表した「医師の勤務実態及び働き方の意向等に関する調査」という資料では、50%以上の医師が地方での勤務をする意思がないと答えています。
その理由としては、すべての年代で共通して「労働環境への不安」を挙げているのです。
日本病院会が2016年に発表した資料では、1ヵ月あたりの宿直や日直の回数が5回以上となる割合は、指定都市や中核市で6.3%であるのに対し、郡部・町村では22.5%。
1人当直の割合も指定都市、中核市の34.8%に対して、郡部・町村では80.0%と、地方での過酷な労働環境の実態が明らかになっています。
そもそも、ただでさえ医師は過酷な労働環境に置かれています。リクルートメディカルキャリアが429人の医師を対象にアンケート調査を実施したところ、「今の働き方は過重だと思いますか?」という質問に対して60.2%の医師が「過重である」と回答しています。

こうした状況下で、さらに厳しい労働環境になると考えられる地方での従事について、消極的になる医師が多いのは当然とも言えるでしょう。
また、2016年には、新潟県で研修医として勤務していた30代の女性が、月80時間以上の時間外労働の結果、過労死をしてしまった事件が起きました。
こうした問題を再び起こさないためにも、地方自治体における医師不足の解消では、単なる医師数の確保だけでなく、労働環境の改善など、地方で働くことが医師のデメリットにならないようにするための取り組みが求められています。
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2020年9月7日 制定