新型コロナ感染の労災認定基準が明確になった
介護職の新型コロナ感染が「労災」に
新型コロナウイルスの感染拡大により、5月6日まで日本全国に発令されていた「緊急事態宣言」が5月いっぱいまで延期となりました。
※5月14日の政府の発表により、一部地域を除く34県で解除の見込み
一時期より感染者数は減少傾向にあるものの、まだまだ予断を許さない状況です。
新型コロナウイルスは高齢者にとっては重症化リスクが高く、命の危険にもかかわります。
感染力が非常に強く、介護施設において集団感染「クラスター」が発生した例が複数報告されていることもあり、勤務中に介護職の感染リスクが高まることが懸念されています。
そこで4月29日、厚生労働省は「介護職が勤務中に新型コロナに感染した場合を原則的に労災として認める」方針を示しました。
これにより、勤務中や通勤途中のケガなどと同様に、新型コロナ感染により欠勤を余儀なくされた場合でも、介護職は賃金の8割が補償されることとなります。

また、新型コロナ治療の最前線で働く医療従事者も介護職と同様に、新型コロナ感染が原則労災として認められます。
厚生労働省の発表によると、5月8日時点で7件の新型コロナウイルスによる労災請求があったことが報告されています。
労災が認定されるための条件とは?
職場で新型コロナウイルスに感染した場合、どのような条件で労災と認定されるのでしょうか。
ポイントとなるのは、業務以外で感染の可能性がないかどうかです。
労災の認定には、以下の2つの基準があります。
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業務中に発生したかどうか |
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業務に起因したケガや病気かどうか |
新型コロナ感染に関しても、業務中に感染者と濃厚接触をして感染した場合は労災として認定されます。
ただし、感染者との濃厚接触の可能性がある職場で働いていたとしても、業務外で感染者と濃厚接触の可能性があった場合、明らかに業務外で感染したことが明らかである場合は労災として認められません。
このような「業務外での感染の可能性」がなく、職場以外に感染の疑いがないケースのみが労災と認定されるのです。
厚生労働省が公開しているQ&Aでは、「感染経路が判明しない場合は潜伏期間の業務従事状況と一般生活状況を調査のうえで業務との関連性を判断する」としています。
また、労災と似た制度として、公的保険の被保険者へ支払われる「傷病手当金」というものがあります。これは、ケガや病気により働けなくなり十分な報酬を受け取れなくなった場合に備えた制度です。
一見、労災と似ているように思われがちですが、傷病手当金の対象は業務外でのケガや病気です。業務中や通勤中のケガや病気に支払われる労災とは、逆の意味合いを持ちます。
連続する3日間を含む4日以上勤務ができない場合で、休業期間の給与支払いがないことなどが条件になっています。そのため、労災と傷病手当金両方を受け取ることは不可能です。
もし業務外で新型コロナに感染して働けなくなった場合は、傷病手当金のみを受け取ることができます。
介護職はもともと感染症のリスクが高い
介護現場は3密を避けられない
そもそも、介護施設は多くの高齢者が集団生活をする場のため、新型コロナの感染リスクが高いとされる「3密」を避けることが難しい場所です。
もし施設内に感染者がいた場合、同じ施設の利用者はもちろん、そこで働く介護職も濃厚接触者となってしまいます。
同じ介護施設でも、デイサービス(通所介護)と入所して利用する施設を比較すると、デイサービスの方が高リスクだと言われます。
どちらも感染リスクが高いと考えられる入浴介助や食事介助などの業務が含まれますが、入所系施設は現在面会を制限している状態で、出入りする人が限られています。
しかし、デイサービスでは入所系施設より利用者の数が多く、すべての利用者が自宅との往復で利用していることから、外部から施設へ出入りする機会が多くなってしまうのです。
また、デイサービスでは利用者の送迎も行われます。その際に利用する車内が密室になりやすいことも、デイサービスのリスクが高いと言われる原因のひとつです。
特に近年は政府の方針で、デイサービスの「大規模化」「効率化」「合理化」が進められてきました。そのため、同じ場所により多くの人が集まらねばならず、「3密」になりやすい状況となっていたのです。
さらに衛生用品の不足も深刻に
感染予防のためのマスクや消毒液、防護服などの衛生用品は、医療現場はもちろんのこと、感染リスクが高い介護現場でも不足しています。
政府は介護事業所向けに布製マスクを配布しているものの、1人1枚のみと少ないうえ、「洗って使いづらい」「小さくて使いづらい」などの声も聞かれます。
日本介護クラフトユニオンが介護事業者向けに実施したアンケート結果によると、「衛生用品が揃っており十分余裕がある」と回答したのは全体のわずか7.8%。
「揃っているが余裕がない」が62.4%、「揃っていない」が34.9%にものぼり、9割以上の介護事業所が満足に衛生用品を使えていないのが現状だとわかりました。

介護の現場における衛生用品の不足は深刻で、一刻も早い安定供給が望まれます。
衛星用品の供給が不安定な状況は、介護施設での新型コロナ感染リスクに直結します。そこで現在、各地で有志の介護職員による「感染予防のための防護用品の安定供給」などを求める署名活動も、インターネット上で行われています。
崩壊寸前の医療・介護に対する支援が急務
介護職への「危険手当」が支給可能になった
前述のとおり、3密を避けられない場所で勤務を続けなければならない介護職は、新型コロナの感染リスクが高い職業といえます。
一部の施設では、新型コロナ感染者や濃厚接触者が入院できずに施設にとどまっているケースなどもあります。
そのような状況を踏まえ、介護福祉士会は介護職員へ危険手当を支給するよう要望書を提出。それを受けて、厚生労働省は4月30日に成立した補正予算で、介護職への危険手当を補助する方針を示しました。
しかし、危険手当補助の対象となる施設はPCR検査で陽性となった利用者を抱えるハイリスクな介護施設や事業所に限られるため、今後さらに対象範囲を広げる要望も出てくる可能性があります。
また、感染者の有無にかかわらず、独自の手当支給を決めた事業者もあります。
大手介護事業者の「SOMPOケア」では、全国の施設で働くパート社員を含む介護職を対象に、緊急事態宣言発令中の勤務1日あたり3,000円の特別手当支給を発表しました。
休業する介護事業者も出ている中、3密の職場で働くリスクに対し、企業独自の待遇改善を実施したというわけです。
人手不足で介護崩壊…?長期化を前提とした対策を
以下に示すグラフの通り、高齢化が進む日本において、要介護者が増加していることは周知の事実。
2019年に厚生労働省が公表した「介護保険事業状況報告」によると、要支援または要介護認定を受けた人の数は過去最高の641万人を記録。2年前と比較して、3万人の増加が見られました。

そのため、介護施設で働く介護職の新型コロナ感染リスクは依然高く、しかも現在の状況は先が見えません。
介護の現場で介護職が感染した場合、人手不足に陥り介護の質が下がる、またはリスクを恐れて退職する介護職が出ることにより、介護崩壊を起こす可能性もあります。
介護を必要とする人に適切な量のサービスが行き渡らなくなってしまう「介護崩壊」を防ぐためには、そのような事態を防ぐためには、感染対策の長期化を前提とした対策が急務です。
そんななか、公明党は介護施設や障がい者施設の職員に対する特別手当の支給を求め、厚生労働大臣に申し入れをしました。
この特別手当は、感染リスクが高い場所で肉体的・精神的に大きな負担を強いられながら働き続けている職員に対する、処遇の改善の一環として求められたものです。
そして、感染の疑いがある介護職に対して速やかにPCR検査を受けられる体制を整えることも要望書に盛り込まれました。
介護職の処遇改善は協議されている段階ですが、現状のまま何も対策が行われない場合、介護職の処遇悪化から介護崩壊を招く恐れがあります。
介護職への支援として新型コロナに対する対策を講じることは、要介護者が必要な介護を受けるために必要不可欠です。
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2020年9月7日 制定