本来必須のケアマネ実務研修に特例措置
新型コロナの影響で実習が条件付き免除に
新型コロナウイルス感染症の影響で、今年度に限り、ケアマネージャーの実務研修が条件付き免除になりました。
ケアマネの合格者が必ず受講しなければならない実務研修の免除処置は、コロナ禍を踏まえた例外的な措置。感染リスクをゼロに近づけるためあらゆる予防策を講じている介護事業所では、例年のように実習生を受け入れて積極的に研修をする状況にはなりにくいのです。
ケアマネの実習免除の認定条件などについては、2020年8月13日の厚生労働省による通知で公表。すでに『介護保険最新情報vol.868』で介護業界にも広報されています。
実習免除の認定条件のポイントは次の通りです。
- ICTを活用するなど主に講義形式で実務研修を実施する
- 実習では、利用者の居宅訪問時の基本的な対応や心構え、ケアマネジメントプロセスの再確認と定着につなげるレポート提出を求める
- 実践的な内容になるように、ロールプレイを通じて習得した事例にしたがったアセスメントに関するレポート提出を求める
なお、実習の未受講者は、業務開始にあたって先輩ケアマネのOJTを最低3日以上受けることも盛り込まれています。
2020年3月、ケアマネの実務研修の実施については都道府県単位で柔軟な判断に委ねられ、ガイドラインに沿っていれば実習期間の短縮も認める方針となっていました。その後、依然として新型コロナ終息の状況が不透明なため、さらに柔軟な取り扱いを示したのです。
ケアマネは合計87時間以上の実務受講が必要
今回、例外的措置が取られることとなった実務研修は、ケアマネの資格取得のため、試験の合格後に参加が必要なカリキュラムです。
ケアマネになるための試験を正式には「介護支援専門員実務研修受講試験」と呼びます。筆記試験の合格後に、87時間以上の実務研修を受ける必要があります。
実務研修は、都道府県単位で実施されていて、主な内容は、ケアプランの作成や要介護認定についての専門知識や実際の作業を学ぶものです。
2019年に実施された「第21回第2期東京都介護支援専門員実務研修」の例では、東京都の「介護支援専門員実務研修受講試験」の合格者を対象に、6月から10月にかけて研修が実施されました。
研修カリキュラムは前期課程、実習、後期課程の3つに分かれています。まず、前期課程では、ケアマネジメントに必要な専門スキルや知識、利用者の自立支援を考えるための視点について学びます。
次の実習では約1ヵ月の間に、都内の居宅介護支援事業所で3日間の実習を実施。現場でケアマネジメントの実務を見学したり、アセスメントシートやケアプラン作成を行って、知識を具体的なものへと定着させます。
後期日程では、実習全体の復習やグループワーク演習、実際にケアマネとして活躍する際に必要な知識や技術、倫理観をさらに深めます。受講料は自治体によりますが、5万円~6万円前後となっています。
業務負担増でケアマネのなり手は減少している
ケアマネ試験の受験者は8,000人減
介護人材の不足が社会問題となる中、ケアマネを志す人材の不足も深刻化しています。
2019年に実施されたケアマネ試験では、昨年に比べて受験者数が8,000人減少。受験者数、合格者数ともにケアマネ試験の開始以来、大幅な落ち込みを見せています。
「第22回介護支援専門員実務研修受講試験」は、2019年度に台風の影響で2回実施されました。受験者数は合計で4万1,049人、合格者数は8,018人、合格率は19.5%となっています。
その前年度、2018年度、第21回は受験者数4万9,332人、合格者数4,990人。2017年度の第20回が受験者数13万1,560人、合格者数2万8,233人でした。

合格率が過去最低といわれた2018年度に比べると2019年度は9.5ポイント増の19.5%。しかし受験者数をみると、ケアマネのなり手の減少は止められない状況です。
ケアマネの負担は増加…1人で30人近く担当
ケアマネ人材が減少している背景には、業務の負担増が指摘されています。
厚生労働省の調査によると、2018年度のケアマネ1人あたりが担当する利用者数は27.1人。
その2年前の2016年度の25.2人より約2人増となっており、1人あたり30人前後の担当を抱えるケースが増えています。
また、2018年度のケアマネ試験から、受験資格が厳格化。2級ヘルパーなどが受験資格の対象者から外されたことも、受験者数の減少に拍車をかけました。
そして何より、ケアマネは仕事の重要性や業務量、求められる専門知識やスキルの質に比べると、報酬額が見合わないという問題があります。
もともと介護職ではヘルパーから介護福祉士、そして最終的にケアマネを目指すというキャリアルートがありました。
しかし、頑張ってケアマネになるよりも、介護福祉士やヘルパーのまま現場で働き続ける方がコストパフォーマンスが良いと考える介護人材が増えていることが予想されます。
来年の介護報酬改定でケアマネの働き方が変わる
居宅介護支援の報酬増が求められている
2020年8月19日、厚生労働省は、2021年4月改定の介護報酬をめぐる審議会でケアマネの業務である居宅介護支援の取り扱いを協議しました。
現在、ケアマネの人数減少が心配される中、優秀な人材を安定的に確保していくためにも働きやすい環境整備は欠かせません。
特に、居宅介護支援の基本報酬の引き上げは大きな鍵を握ります。
2018年度の厚生労働省のデータによると、居宅介護支援の事業所の決算時の利益率はマイナス0.1%。
介護保険サービスの事業所の中で唯一マイナスの利益率となっていて、厳しい経営状況にさらされています。
黒字を出す事業所はケアマネ1人あたりが担当する利用者数が30人台であり、特定事業所加算(Ⅱ)以上を取得しているケースに限られているのが現状です。
試験制度の変更以降、ケアマネを志望する人材が減少。業務の範囲や量、そして受講すべき研修が増加するなど、現場のケアマネの負担は増大しています。
一方で、介護職員の処遇改善が進んだことで、ますますケアマネを避ける傾向が強まっています。こうした深刻な状況を打破するためには、次期の介護報酬改定でケアマネの処遇改善を実現していく必要があるのです。
ケアプラン作成にAIを導入して業務効率化
業務効率化として、ケアマネ業務の中でも負担の大きいケアプラン作成にAIを導入する動きが加速しています。
厚生労働省は、AIやICT活用で介護福祉の業務改善を目指すウェルモに実証実験を依頼。2019年12月には、開発中だったケアプラン作成支援AI「ケアプランアシスタント(β版)」による実証実験が実行されました。
実証実験の結果報告では、AIをケアマネの現場に導入した場合に、以下のような一定の効果が認められています。
- ケアプラン第2表の原案作成時間が最大約40%(15分)短縮される
- 「ケアプランアシスタント」の利用で、情報収集の負担軽減につながった(ケアマネの約82%が回答)
- 新任ケアマネのスキルアップに役立つ(ケアマネの約93%が回答)

さらに介護福祉関連の技術の進展を受け、2020年8月3日、全国介護事業者連盟では提言を実施。
全国介護事業者連盟が行った提言の内容
- ケアプランAIを利用した場合に、インセンティブとなる介護報酬加算の新設をする
- ケアプランAIの導入を条件にケアマネ1人あたりの担当可能な利用者数を増やす
- 紙による業務遂行を大幅に削減する
- 書類を簡素化する
- 自治体ごとに異なるローカルルールを廃止する
厚生労働省の審議会でもAI活用の議論や提言が繰り返されていて、とりわけAIと業務効率化の相性が良いケアマネの業務にはいち早い導入が期待されます。
利用者ごとの環境や状況、QOLなど幅広い専門的見地からケアプランを作成するという重要な仕事を担うケアマネ。減少傾向から増加傾向へと引き戻すためにも、AI活用を前提とした大胆な施策が必要です。
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2020年9月7日 制定