厚生労働省、自立支援・重度化防止のために口腔ケアを推進
自立支援・重度化防止の推進が議論のテーマに
口の中を清潔に保つ「口腔ケア」は高齢者の健康において重要視されています。そんな口腔ケアが、9月14日に開かれた厚生労働省の社会保障審議会・介護給付費分科会において、議題として挙げられました。
「利用者の自立支援・重度化防止の推進」をテーマに話し合われた今回の会合では、口腔ケアと栄養ケアを取り上げ、「健康寿命の延伸やQOLの向上を行ううえで重要」と指摘。
口腔ケアを充実させるために、通所介護などを中心として具体策を検討していく方針であることを公表しました。
東京都健康長寿医療センター研究所の調査によれば、通所サービスの利用者で「歯科を受診する必要がある」と診断された人は59.1%。
また口腔機能の低下がある利用者に対して、改善計画に基づいたサービスの提供や定期的な評価、計画見直しなどを行うことを要件とする「口腔機能向上加算」の算定率は約1割。
今回の厚労省による具体策検討・強化は、このような加算率の低い状況を改善することを目的としています。

口腔ケアは健康的な生活を送るのに必要不可欠
口には、「食べる」や「話す」、「呼吸をする」などの機能があります。
口腔ケアの目的は、これらの機能を低下させることなく健康な状態を維持することです。
それは口の中を清潔にするだけではありません。
検診や咀嚼(そしゃく)・嚥下(えんげ)などのリハビリ、食事の介助も含まれています。
口腔ケアは「器質的口腔ケア」と「機能的口腔ケア」の2種類に分けることができます。
器質的口腔ケアとは口の中を清潔に保つためのケアのこと。
歯磨きやうがい、義歯や口内、舌の清掃などが含まれます。
口の中の雑菌は、虫歯や歯周病はもちろん、気道に入ることで誤嚥性肺炎の原因になることがあります。
つまり口の中をきれいにすることは、それらの予防にもなるということです。
機能的口腔ケアは、舌や口内、口の周りの筋肉を動かすことで口腔機能の維持・向上するためのケアになります。口や口周りのマッサージ、飲み込むための筋肉を動かす「嚥下体操」などです。
高齢者に多い歯周病が認知症を加速させる
高齢者が歯を失う最も多い原因は歯周病
厚生労働省が口腔ケアへの取り組みを強化する理由の1つとして、歯周病予防が挙げられます。生活習慣が病気の進行に大きく関わる歯周病は、口腔ケアが不十分である場合に進行しやすくなってしまうからです。
歯周病とは、細菌の塊「細菌性プラーク」が歯ぐきや歯の根元を支える「歯槽骨(しそうこつ)」がダメージを受けることにより起こる病気のこと。
日頃の歯磨きが不十分だと、粘着性の高い細菌性プラークは取り除かれることなく歯に残ってしまい、やがて石灰化して歯磨きでは取り除くのが難しい「歯石」となります。
通常、歯は歯槽骨から抜け落ちないよう、セメント質と歯槽骨の間を「歯根膜(しこんまく)」という繊維でつながっています。しかし歯周病が進行すると歯槽骨が溶けていき、最終的に歯が抜け落ちてしまうのです。
公益財団法人8020進財団が公開している『第2回 永久歯の抜歯原因調査』によると、歯周病は「歯を失うきっかけ」として最も多く全体の37.1%を占めています。
また、同財団が公表している『歯を失ってしまう原因と対策』では、歯を失った高齢者のうち約5割は歯周病が原因です。
このことから、歯を長く健康な状態に保つためには、歯周病を予防するための口腔ケアが重要と言えるでしょう。
歯周病は認知症を悪化させる
口の中の疾患である歯周病は、歯や口腔機能はもちろんですが、認知症の悪化に大きくかかわる病気だといわれています。
名古屋市立大学が公表している『歯周病で加速するアルツハイマー病分子病態と認知機能障害』によると、認知症で最も多いタイプであるアルツハイマー型認知症は、その原因がいまだはっきりとはしていないものの、動物実験において歯周病のマウスの方が認知機能の悪化が認められたことから、「歯周病が悪化因子の1つである」としています。
また、歯を失うこと事態がアルツハイマー病の発症そのものに関係していると言われています。
歯で噛むことは脳へ刺激を与えるわけですが、歯を失うと噛む機会が減ると同時に脳への刺激も減ると考えられ、その分神経伝達物質が減少。
アルツハイマー病発症の原因になりかねないというわけです。
公益財団法人8030推進財団が公開している『口腔と全身の健康との関係Ⅱ』によると、アルツハイマー型認知症の人は健康な人よりも残っている歯の数が少なく、残存する歯の数が少ないほど脳の萎縮が進行していることもわかっています。
つまり、歯の健康が認知症の発症や悪化に関係しているといえるでしょう。

歯周病をなくすために口腔ケアと定期健診を行おう
日本人は歯のメンテナンスについて消極的
歯磨きをはじめとした口腔ケアは、長く健康を保つために大切です。しかし、きちんと毎日歯のメンテナンスを行っていると言える人はさほど多くはないのではないでしょうか。
口腔ケア用品を多く販売するサンスターが6ヵ国を対象に実施した『世界のオーラルケア・歯周病事情に関する調査』によれば、日本は歯周病に対する認知率は高いものの、「歯のケアには時間やお金をかけたくない」と回答した人の比率が全体の約3割に上り、6ヵ国中最も多かったという結果が出ています。
日本人が歯周病ケアに消極的であることが浮き彫りとなりました。

歯周病に対する知識もそれほど高いとはいえず、歯周病を感染症であると「正しく理解している」と回答したのは25%。一方で、歯周病を「怖い」と回答した割合は93.9%と、他国と比較すると飛び抜けて高い結果も出ています。
一番の口腔ケアは定期的な歯科検診
「体の健康を守るために口腔ケアをしたい」と考えていても、どのように行えば良いのか疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
口腔ケアでまず行っておきたいのは、やはり定期的な歯科検診です。
日本医師会が公開している『歯科医療に関する一般生活者意識調査』によれば、1年以内に何らかの歯科検診を受けた人は49%で、半数にも満たないことがわかっています。
同様の調査でアメリカやスウェーデンの受診率が70%を超えていることと比較すると、日本はかなり低いといえるでしょう。
受診率が高い国では、高齢者の平均残存歯数も多いので、歯科検診をしっかりと受けることは歯の健康に大きく影響するといえます。歯が残っていれば、その分歯科受診の機会も減り、医療費削減につながるでしょう。
歯科検診の受診に加えて、口腔ケアは毎日自宅で行うことも大事です。特に高齢者であれば、入れ歯のケアは毎食後行うことが理想。少なくとも1日1回は入れ歯洗浄剤を使って丁寧に洗いましょう。
高齢者は加齢により唾液の量が減ることに伴って口腔内の細菌が増えがちなので、歯だけではなく、舌や上顎などの口腔内の粘膜の掃除も自宅で行う口腔ケアのポイントです。
口内が乾燥している場合は、十分湿らせてから舌や粘膜専用のブラシを使って汚れを取り除きましょう。
毎日の口腔ケアで、さまざまな病気や認知症の原因となりかねない歯周病は減らせます。健康を守るためにも、歯のメンテナンスは積極的に行いましょう。
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2020年9月7日 制定