介護保険の費用や医療費は増大している
介護保険の費用額が過去最多の10.5兆円に
11月18日、厚生労働省は2019年度の『介護給付費等実態調査』の結果を公表。
それによると、受給者の自己負担分も含めた介護保険の費用額は、10兆5,095億円(介護予防サービスも含む)。
2018年度よりも3,559億円(3.5%)の増加となり、過去最多となりました。
サービス別にみると、居宅サービスが4兆7,010億円、施設サービスが3兆4,797億円、地域密着型サービスが1兆8,133億円、居宅介護支援が5,155億円。いずれのサービスでも2018年度より増額しています。
高齢者の増加によってニーズが高まったのに加え、受給者1人当たりの費用額も増えていることが大きな要因です。
同資料によると、2019年度の介護サービスの受給者数は611万1,100人。
2018年度の597万3,500人と比較して13万7,000人(2,3%)の増加です。
さらに2019年度の4月審査分における受給者1人当たりの費用額は17万2,600円で、2018年度の17万円と比べると2,600円高くなっています。
2020年4月に控える介護報酬改定の議論が進む裏で、増え続ける介護給付費の実態が明らかになりました。
さらに医療費も年々増加している
医療費もまた、増加傾向にあります。厚労省の資料によると、2019年度の医療費は43.6兆円。これは2018年度と比べると1兆円(2.4%)も増えています。

1人あたりでみると、年間の医療費は34.5万円。こちらも前年度比で2.6%の伸びとなりました。また、1日あたりの医療費は2019年度で1万7,300円となっており、こちらも2018年度の1万6,700円を上回っています。
年齢別の年間医療費では、75歳未満が22.6万円であるのに対し、75歳以上は95.2万円。75歳以上は75歳未満に対して4倍以上かかっていることが判明しています。
残薬対策は医療費削減のため急務
残薬は医療費増大の一因
医療費増大の要因には、ポリファーマシーや残薬問題があります。「ポリファーマシー」は、単に服用する薬剤数が多いのみならず、それに関連して薬物有害事象のリスク増加、服用過誤、服薬アドヒアランス低下等の問題につながる状態をいいます。
日本調剤は定期的に通院して投薬されている65歳以上の男女1,046人を対象として、2015年に調査を実施。それによると、5種類以上の薬の処方を受けている人は24.8%でした。

さらに医療機関を複数受診している人が52.5%に上ったことも判明しています。
ポリファーマシーなどを原因として起こるのが残薬問題です。本来服用しなければいけない処方薬を服用しきれず、残してしまうことを指します。処方箋が多過ぎるために高齢者の飲み忘れや飲み残しが起きていることが考えられるのです。
また、滋賀県薬剤師会が2014年12月から2015年2月の3ヵ月間にわたり、薬局を対象に行った調査では、患者1人あたりの残薬額は4690.8円であると推計。1年間の残薬が8,744億円に上ると試算しています。
また、薬剤師の介入により残薬額の74.6%が有効利用でき、全国で6,523億円の医療費削減が可能だとしています。あくまでも試算であることには注意が必要ですが、残薬削減が重要なのは事実です。
残薬解消には継続的な服薬指導が必要
2017年、厚労省は薬局に対して「患者情報を継続的に把握する取り組みを行っていて良かったこと」について調査。結果、「残薬解消につながった」という回答が83.4%に上ったことが判明しています。
加えて、「節薬バッグ(ブラウンバッグ)」と呼ばれる袋を用いて薬剤師が服薬状況の把握や管理を行った結果、患者が薬についての理解を深め、治療や服薬への主体的な行動をとる「患者アドヒアランス」が向上したという結果も出ています。
しかし2016年に厚労省の調査によると、患者の来局日以外に継続的な服薬指導を行っているかという質問に対して、「ある」と回答した薬局は39.9%、「ない」と回答した薬局は47.9%とおよそ半分近くが行っていないことがわかりました。
ケアマネとの連携や「節薬バッグ」で残薬対策
ケアマネと薬剤師の連携で残薬が改善
残薬問題解消のためには、薬剤師と介護支援専門員の連携が必要です。茨城県古河市にある「古河薬剤師会」と「茨城県介護支援専門員協会」の「古河地区会」は、2018年10月より、薬剤師とケアマネージャーが連携して服薬状況を管理する試みを行いました。
この中では、ケアマネージャーが「在宅服薬気づきシート」と呼ばれる6つのチェック項目のついたシートを用いて、利用者の服薬状況を把握します。

そして、必要となった場合には、ケアマネージャーがシートを利用者のかかりつけ薬局にファクスで通知。
連絡を受けた薬剤師は、利用者のアセスメントを行い、その結果をケアマネに知らせ、服薬状況に問題がある場合には、両者で協力して解決するという内容になっています。
この試みは、3期に分けて2020年3月まで行われました。ケアマネージャーと薬剤師が服薬状況を継続的に管理した利用者257人に残薬の減少傾向がみられ、一定の効果があると判明しています。
「節薬バッグ運動」も全国に広がる
服薬管理によって残薬を減らす試みのほか、利用者本人に対して薬を再利用する「節約バッグ運動」が広がっています。
先述の「節薬バッグ(ブラウンバッグ)」に、利用者が飲み忘れなどで発生した残薬を入れて持参。そのまま薬局で回収します。残薬が新たに処方された薬と同じであった場合、医師の承認を受けて処方する量を減らし、残薬を本人に対して再利用するのです。
この取り組みは東京都墨田区や福岡市など、各地で行われるように。全国的に広がれば、年間3,300億円の薬剤費を削減できるという推計もなされています。
残薬の再利用以外にも、薬局を訪れる機会が増えることで、薬剤師による継続的な服薬指導ができ、利用者の身体状況を把握する効果も見込まれています。
医療費の増大に歯止めをかけ、利用者の健康を守るためにも、こうした残薬問題の解決策が継続して行われることが必要です。
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2020年9月7日 制定