日本看護協会が夜勤の働き方について要望書を提出
夜勤の働き方について指針を策定するよう促す
日本看護協会は、病院や介護施設などにおける夜勤の働き方について指針を策定するように促す要望書を厚生労働省に提出しました。
要望書には、夜勤の回数および時間の制限や、夜勤の後の十分な休息を確保することなどが盛り込まれています。
また、新たに策定するように促したものとしては以下の4項目があります。
- 3交代勤務での夜勤を月8回以内にする
- 1回の夜勤の長さを13時間以内にする
- 1回の夜勤後は概ね24時間以上、2回連続の夜勤後は概ね48時間以上の休息を確保する
- 仮眠室といった環境を整える
夜勤の現状とこれまでの政府の対応
今回取り上げられた夜勤の働き方についてですが、これまでの状況と政府の対応をみていきましょう。
『2019年 病院および有床診療所における看護実態調査 報告書』によると、3交代勤務体制をとる病院において、11時間以上の勤務間インターバルを実施しているところは44%でした。半数近くの施設が十分な間隔を開けずに夜勤を実施している状況です。
2014年の調査では42%ですので、問題視されつつも、それほど改善されていません。

また、病院では長時間夜勤についても改善がみられません。2交代勤務体制で1回16時間以上の夜勤をする方は、それ以外の方と比較して離職を考えている割合が多い傾向があります。それだけ心身ともに負担が大きいということでしょう。
実際のところ、1ヵ月の延べ夜動時間が72時間を超えると、ストレスが高まるとともに、起床時に疲労感を強く自覚する傾向がみられます。
その一方で、『2019年 病院および有床診療所における看護実態調査 報告書』によると、仮眠専用の個室が確保されている病院は20.7%にとどまっています。適切な仮眠は必要だと理解しつつも、環境の整備はまだまだ不十分な状況です。
それらの問題に対して政府は、「労働安全衛生法」や「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」を定めたり、過労死の防止のための対策に関する大綱の変更を行うなどの対応をしてきました。
これらの法律には、看護師の夜勤に関しては、負担軽減のために勤務間インターバルの確保といった配慮が図られるよう検討を進めていくことが明記されています。
夜勤のあり方や今後の課題
日本看護協会の要望書の目的は夜勤を担うすべての人の健康維持
夜勤の働き方を正すべきなのは、病院の医師や看護師だけでなく、介護施設における職員についても同じことがいえるでしょう。
日本看護協会が夜勤の働き方に関する要望書を提出した目的は、看護師に限らず、夜勤を担うすべての人の健康を守る対策の強化を図ることだといえます。
日本医療労働組合連合会によると、人間の生体リズムは元来、夜間に寝て昼間に活動するようにできており、夜勤の健康リスクや安全性のリスクは、長時間夜勤になればなるほど高まるといいます。夜勤明けの注意力は、飲酒運転レベルになることもあるようです。
また、WHOのIARC(国際がん研究機関)は、「交代勤務はおそらく発がん性がある」と認定しています。
夜勤がある方は、年齢を問わずに乳がんあるいは前立腺がんの定期検診を義務づけるべきだといわれることもあるのです。
健康を損なわず無理なく働き続けられるように
また、夜勤の働き方の是正は、年齢を重ねた方や介護・子育てとの両立を目指す方なども、健康を損なわず無理なく働き続けるために必要な観点です。
無理な夜勤を続けると、睡眠障害やうつ、肥満になりやすく、心疾患や糖尿病といった生活習慣病の疾患リスクも高まります。
また、本人は寝ている自覚がなくても「マイクロスリープ」と呼ばれる、わずかな時間の睡眠状態が頻発します。この状態では、不注意でミスが起きることも増えるでしょう。
さらに、夜勤時間が72時間を超えると、複数人での自宅外娯楽時間が減る傾向がみられます。

これは2018年調査のデータです。2020年から猛威を振るう新型コロナウイルス感染症の影響で複数人での外出はさらに減ったことでしょう。
継続的に就業できるような取り組みが必要
介護施設では夜勤の負担が大きい
今後も夜勤の問題点を明らかにして、継続的に就業できるような取り組みを行っていく必要があります。
日本医療労働組合連合会の『2019年介護施設夜勤実態調査結果』によると、「12時間以上の勤務間隔が確保されていない」と回答した施設は22%にも及びます。

特に、生活施設である特別養護老人ホームや短期入所では、「12時間以上の勤務間隔が確保されていない」と回答した割合が3割にも達しています。
また、介護施設での夜勤は、大半が1人でワンフロアを担当するいわゆる「ワンオペ」の状態になっているという現状もあります。
例えば、介護施設の夜勤では、就寝前後の介助や定期巡回を行いつつ、寝たきりの入居者に対しては床ずれ防止のために体位変換を行います。夜勤には、日勤とは違った仕事があるのです。
ワンオペで対応し続けるのには無理があるため、心身ともにつらくなり、就業を継続するのが困難になってしまった方も少なくないでしょう。
ミスを減らすためにも1人にかかる負担は軽減させたいところ。介護職員の負担軽減のために、見守りセンサーやインカムを推奨する動きもみられます。
進められる見守りセンサーやインカムの普及
2020年、厚生労働省は、見守りセンサーやインカムを普及させるべく、これらの機器を導入した施設では「夜勤職員配置加算」の「加配(最低基準に追加して配置すべき人員)」を最大で0.6人に緩和するという案を取りまとめました。
対象機器は、入居者の部屋に訪問する回数を減らしたり、介助時間を少なくしたり、介護事故の減少の効果が期待できたりするものです。
こういった機器やシステムの導入により、介護職員の負担を軽減させるのは理想の形。さらに、そもそもの夜勤時間の見直しも同時に行っていきたいところです。
みんなのコメント
ニックネームをご登録いただければニックネームの表示になります。
投稿を行った場合、
ガイドラインに同意したものとみなします。
みんなのコメント 11件
投稿ガイドライン
コミュニティおよびコメント欄は、コミュニティや記事を介してユーザーが自分の意見を述べたり、ユーザー同士で議論することで、見識を深めることを目的としています。トピックスやコメントは誰でも自由に投稿・閲覧することができますが、ルールや目的に沿わない投稿については削除される場合もあります。利用目的をよく理解し、ルールを守ってご活用ください。
書き込まれたコメントは当社の判断により、違法行為につながる投稿や公序良俗に反する投稿、差別や人権侵害などを助長する投稿については即座に排除されたり、表示を保留されたりすることがあります。また、いわゆる「荒らし」に相当すると判断された投稿についても削除される場合があります。なお、コメントシステムの仕様や機能は、ユーザーに事前に通知することなく、裁量により変更されたり、中断または停止されることがあります。なお、削除理由については当社は開示する義務を一切負いません。
ユーザーが投稿したコメントに関する著作権は、投稿を行ったユーザーに帰属します。なお、コメントが投稿されたことをもって、ユーザーは当社に対して、投稿したコメントを当社が日本の国内外で無償かつ非独占的に利用する権利を期限の定めなく許諾(第三者へ許諾する権利を含みます)することに同意されたものとします。また、ユーザーは、当社および当社の指定する第三者に対し、投稿したコメントについて著作者人格権を行使しないことに同意されたものとします。
当社が必要と判断した場合には、ユーザーの承諾なしに本ガイドラインを変更することができるものとします。
以下のメールアドレスにお問い合わせください。
info@minnanokaigo.com
当社はユーザー間もしくはユーザーと第三者間とのトラブル、およびその他の損害について一切の責任を負いません。
2020年9月7日 制定