今年度から始まった「認知症伴走型支援事業」
厚労省は伴走型支援の拠点整備に乗り出す
厚労省は今年度から「認知症伴走型支援事業」を開始しました。この事業は、認知症の人とその家族に対する専門的な相談やアドバイスなどを地域にある介護施設で行えるようにすることを目的としています。
対象となるのは、全国にある約3万4,000施設。グループホームや小規模多機能型居宅介護施設、特別養護老人ホームなどの既存施設に対し、事業を積極的に活用するよう通知を出しました。

この通知の中で、厚労省は伴走型支援の狙いを次のように説明しています。
- 本人の生きがいにつながるような支援や専門職ならではの日常生活上の工夫などの助言
- 家族の精神的・身体的負担軽減につながるような効果的な介護方法や介護に対する不安解消に係る助言
超高齢化社会へ向けて、認知症の早期段階から専門家がかかわることで、重度化を予防しようという観点から、こうした支援を加速させていく狙いがあります。
伴走型支援の基本的な考え方
伴走型支援とは、市町村が住民の孤立、困窮、介護といった生活課題に総合的に対応するための支援を指しています。社会福祉分野では、これまで生活困窮者などに対する支援の形として広く実施されてきました。
日常生活に困難をきたした人を対象に、地域で包括的な支援を行うことを目的としています。そのため、複合的な課題を抱えた人には、制度を横断的に適用するように呼びかけてきました。
これまでの具体的な支援は、サロンや社会活動に参加できるような機会の創生にありました。
対象者の困りごとそのものを解決するだけでなく、生活の幅を広げて、困りごとを相対的に小さくすることも狙いの一つ。
こうした支援のあり方を認知症に適用したのが「認知症伴走型支援事業」です。
認知症における伴走型支援の狙いは、以下の通りです。
- 認知症の早期段階から地域で相談できる施設をつくる
- 認知症の経過に伴って生じる生活の課題に、専門的知識をもった職員が対応する
- 介護離職の防止につなげる
伴走型支援には2つの方法がある
伴走型支援が必要とされる理由と背景
認知症の初期段階は、物忘れやコミュニケーションの不具合などが典型的な症状として知られています。しかし、こうした初期段階の人を前にしても、その家族などが専門機関に相談したり、医療機関を訪れたりするケースは決して多くありません。
重度化してしまってから医療や介護機関などにかかるため、支援に結びつく頃には、本人とその家族ともに疲れきっているケースが多いのです。
こうした状況に陥る背景には「相談するまでもない」「恥ずかしい」などといった個人の価値観や、「認知症かどうかわからない」などの不安が挙げられます。そういった人たちが気軽に相談できる窓口を設けることは、早期段階からの支援を実現する入口にもなります。
そこで、強く期待を抱かれているのがグループホームです。グループホームは、認知症の高齢者が、専門スタッフの援助を受けつつ、5人から9人のユニットで共同生活する介護福祉施設です。そのため、認知症の人の生活に深く携わるプロフェッショナルが多くいます。
また、地域密着型の施設でもあるため、地域のさまざまな事情について知識が豊富です。
そういった理由から、アドバイザーとしての役割を果たすことが求められています。
グループホームは日頃から専門機関とも連携しているため、地域包括ケアの入口としては最適なのです。
相談窓口の設置と支援拠点の整備が事業の要に
伴走型支援の具体的な方法にあたって、次の2つの考え方がベースになっています。
- 1.伴走型相談支援
- 認知症の症状は進行の度合いによって、次々と課題が変わっていきます。こうした変化に対応するためには専門家による適切なアドバイスが効果的です。その点で重要になるのは継続的な支援。これまでは地域包括支援センターなどが担っていた支援です。
出典:『認知症高齢者や家族に対する伴走型支援拠点の整備の推進』(厚生労働省)を基に作成 更新 - 2.伴走型支援拠点の整備の推進
- これまで限られていた相談窓口を増やし、より専門的なアドバイスを受けられる機関を設置。地域包括支援センター、認知症地域支援推進員などといった、これまで認知症の支援にあたっていた機関との連携体制も視野に入れられています。また、支援拠点として認定された場合、委託費用によって運営され、認知症の人やその家族への費用負担は発生しません。
これらの考え方をベースに、地域の既存施設が連携して取り組むことが想定されています。
支援事業を成功させるために必要なこと
カギを握るのはスキルを持つ人材の確保と拡充
伴走型支援を実現するためには、相談を受ける人材が、対象となる人やその家族と信頼関係を構築することが肝心です。厚労省が作成したマニュアルには、次のようなスキルを持つ人材が望ましいと明記されています。
- 相談支援を行ううえでの対応技術を持っていること
- 認知症に関する知識や情報を持っていること
- 認知症高齢者の介護の経験を通じ、対応等の技術を持っていること
こうしたスキルを持つ人材として、中堅以上の経験を持つ職員が想定されています。さらに、認知症介護指導者養成研修、認知症介護実践リーダー研修、認知症介護実践者研修などの研修を修了していることなどを条件に挙げています。
業務の効率化も必要
しかし、現状ではほとんどの介護施設が人員不足にあえいでおり、日々の業務にあたるだけでも苦労が絶えません。介護職員の悩みや不安を尋ねたアンケートでは、「人手が足りない」が55.7%で最多となっています。

日々の業務に加え、相談窓口ともなると、どれだけの施設にこの事業を受け入れる余力があるのか疑問が残ります。
実施日時などを指定するなどの対策を挙げていますが、それでも特定のスキルを持つ人材への負担を強いていることに変わりはありません。
こうした人材の育成や拡充を図る施策が必要です。
そこで同時並行して、介護業務における標準化を考えていかなければなりません。標準化とは、「いつ・誰が行っても、同じ手順で無駄なく作業を行えるようにすること」で、これが生産性の向上につながると考えられています。
すでに一般企業で取り入れられているように、業務フローを「見える化」したり、適切な評価基準を設けるなどして、業務の効率アップを目指しています。介護にあたる職員一人ひとりの効率がアップすれば、専門的な知識を持つ人材への負担が軽減するでしょう。
みんなのコメント
ニックネームをご登録いただければニックネームの表示になります。
投稿を行った場合、
ガイドラインに同意したものとみなします。
みんなのコメント 5件
投稿ガイドライン
コミュニティおよびコメント欄は、コミュニティや記事を介してユーザーが自分の意見を述べたり、ユーザー同士で議論することで、見識を深めることを目的としています。トピックスやコメントは誰でも自由に投稿・閲覧することができますが、ルールや目的に沿わない投稿については削除される場合もあります。利用目的をよく理解し、ルールを守ってご活用ください。
書き込まれたコメントは当社の判断により、違法行為につながる投稿や公序良俗に反する投稿、差別や人権侵害などを助長する投稿については即座に排除されたり、表示を保留されたりすることがあります。また、いわゆる「荒らし」に相当すると判断された投稿についても削除される場合があります。なお、コメントシステムの仕様や機能は、ユーザーに事前に通知することなく、裁量により変更されたり、中断または停止されることがあります。なお、削除理由については当社は開示する義務を一切負いません。
ユーザーが投稿したコメントに関する著作権は、投稿を行ったユーザーに帰属します。なお、コメントが投稿されたことをもって、ユーザーは当社に対して、投稿したコメントを当社が日本の国内外で無償かつ非独占的に利用する権利を期限の定めなく許諾(第三者へ許諾する権利を含みます)することに同意されたものとします。また、ユーザーは、当社および当社の指定する第三者に対し、投稿したコメントについて著作者人格権を行使しないことに同意されたものとします。
当社が必要と判断した場合には、ユーザーの承諾なしに本ガイドラインを変更することができるものとします。
以下のメールアドレスにお問い合わせください。
info@minnanokaigo.com
当社はユーザー間もしくはユーザーと第三者間とのトラブル、およびその他の損害について一切の責任を負いません。
2020年9月7日 制定