認知症を理解することの重要性
横浜市では認知症理解のためにSNSを活用
厚労省では地域での認知症支援を進めるため、認知症サポーター制度を設けて、全国で認知症に関する知識と理解を持った人の育成を進めています。こうした国の要請を受け、横浜市では「まちかどケア」という事業を展開しています。
この事業の一環として、一般の市民が認知症の理解を深められるよう、SNSの専用アカウントが作成されました。認知症のさまざまな情報が提供されるほか、市民からの相談窓口としても活用される予定です。
こうした事業が活発に行われる背景としては、地域ぐるみで認知症の方をケアするためです。
一般市民に認知症への理解を進めることが、そのために有効だと考えられているのです。
認知症の方が住み慣れた地域で生きていくには、家族や友人だけでなく、地域に住む人々の理解が欠かせません。
自治体には、認知症についての情報を広く発信することが求められているのです。
なぜ認知症を理解することが大切なのか
厚労省の調査によると、介護が必要となった主な原因として「認知症」が17.6%で最多です。「脳血管疾患(脳卒中)」が16.1%、「高齢による衰弱」が12.8%と続きます。

認知症を発症すると、介護が必要になるケースが多くあります。
認知症のケアは、これまで身体介護が中心に据えられてきました。
その後に治療法の確立や研究が進んだ結果、認知症の人へのレクリエーション(音楽や絵画)が提供されるようになりました。
現在は、当事者である「認知症の人」の意思を中心に考える地域ケアへと考え方が変わっています。
認知症の「人」を中心とするケアは、その人らしく生きる環境などを提供することが大切です。認知症サポーター制度などを通じて一般の方への理解を深めることは、こうした認知症ケアの変遷とも大きく関連しているのです。
若年性認知症の人の社会参加には職場や行政の支援が必要
ポイントは周囲の環境整備
認知症のなかでも、一般の人の理解度が進んでいないのが若年性認知症です。主に65歳未満の方が発症する認知症のことで、まだまだ働き盛りの40~50代に多いとされています。
若年性認知症が発覚した際、本人はまだ労働に従事していることがほとんどです。しかし、周囲は「認知症は高齢者の病気」という認識が強いため、適切な対応が取られていないケースも少なくありません。
若年性認知症が発症した際に、職場で行われた配慮について尋ねた調査結果では、「いずれの配慮もなかった」が22.9%で最多になっています。

さらに若年性認知症を発症した人の67.1%が退職を余儀なくされており、これは65歳以上の認知症発症者の64.4%を上回っています。若年性認知症をとりまく環境は整っているとは言いがたい状況です。
国は社会参加を推進している
こうした問題を受けて、国では若年性認知症の人の社会参加を促すよう、介護サービス事業者などに通知をしています。その詳細は以下の通りです。
- 介護サービス計画に沿って個別サービス計画が作成されており、利用者ごとの個別サービス計画に、あらかじめ社会参加活動等が位置づけられていること
- 社会参加活動等の内容が、利用者ごとの個別サービス計画に沿ったものであること
- 利用者が社会参加活動等を行うにあたり、事業所の職員による見守り、介助等の支援が行われていること
- 利用者が主体的に社会参加活動等に参加することにより、利用者が日常生活を送る上で自らの役割を持ち、達成感や満足感を得て、自信を回復するなどの効果が期待されるような取組であること
主に事業所外でのボランティアなど、利用者の状態にあわせて社会参加活動を行い、自立支援につなげる狙いがあります。こうした動きにあわせて認知症の人も当事者としてワーキンググループを立ち上げるなど、活動の輪は広がっています。
認知症の人に社会参加を促すための地域での支援
大切なのは地域ぐるみでの取り組み
町田市では、デイサービス事業者との連携によって、デイサービス「DAYS BLG!」という事業を展開しています。これは認知症の人の社会参加を支援することを目的としたものです。
デイサービスを利用する認知症の人が、地域企業からの依頼に対して有償ボランティアとして働く機会を提供するというサービスです。今では典型的なモデルとして、全国で知られるようになりました。
この事業を進めるうえで、市役所とつながりのある企業や、個人的につながりのある企業の人、農業関係者などを集めてワークショップを開催。意見交換を活発にすることで、認知症の人に提供できる仕事などの確認し、お互いの理解を進めています。
このように、地域ぐるみで支援を考えることで、認知症の人の社会参加を促進させているのです。
若年性認知症の人の社会参加への意欲は高い
しかし、こうした取り組みはまだまだ発展途上にあり、社会参加の場が限られているのが現状です。若年性認知症の人で、「社会参加の場が少なく、社会とのつながり薄い」と感じている人は22.7%に及び、65歳以上のケースより高くなっています。
若年性認知症の人が求める通いの場としては、以下のようになっています。「就労支援を受けられる場」「軽作業に取り組むなど就労に近い内容の場」については、いずれも65歳以上の人よりも割合が高くなっています。

若年性認知症の人は、65歳以上の方に比べて社会参加へのニーズが高い傾向にあります。こうした人への支援の輪を広げるため、町田市のような事例を全国に拡大し、今後も労働環境などを整えていくことが大切なのではないでしょうか。
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2020年9月7日 制定