シニアカーでの踏切内トラブルは重大事故につながる可能性が高い
踏切で立ち往生のシニアカーが列車と衝突
2021年8月下旬、香川県でシニアカーに乗った70代の女性が、踏切を横断中に特急列車にはねられて死亡するという痛ましい事故がありました。亡くなった女性は、寝たきりや車椅子の生活ではなく、歩いて日常生活を送っていたそうです。
事故後の調査で、警報機や遮断機に問題はなかったことがわかっています。遮断機の支柱近くに非常ボタンが2ヵ所設置されていましたが、ボタンを押した形跡はありませんでした。女性が乗っていたのは四輪タイプのシニアカーだったそうです。
脱輪などの危険あり、踏切は回避を推奨
「製品評価技術基盤機構(NITE)」によると、シニアカーを含む電動車椅子による踏切内の事故は、2009年からの10年間で16件発生しています。
シニアカーで線路を渡る場合、スムーズにいけば10秒ほどで横断できます。
しかし、車輪が通路をはみ出して脱輪したり、線路の溝に挟まる可能性もあります。
また、横断中に警報機が鳴り、遮断機が下りて焦ってしまい、いつも通りの操作ができなくなることも考えられるので、踏切はシニアカーにとって鬼門と言えます。
そのため「電動車いす安全協会」が発行する「安全利用の手引き」では、踏切の横断はできるだけ回避することを推奨しています。
やむを得ず渡る場合は、脱輪を防ぐためにハンドルをしっかり握り、線路に対し直角に渡ること。
可能な場合は、介助者に同行してもらうよう促しています。

ちなみに踏切で発生した電動車椅子による事故を年代別に見た場合、70代の割合が最も多く、次いで60代、80代となっています。
運転免許返納後の移動寿命を延命
移動難民の高齢者を支える電動車椅子
シニアカーを含む電動車椅子は、免許証の自主返納や、鉄道・バス廃線で移動に不自由を感じている高齢者とって、介助者に頼らず一人で出かけられる移動寿命の延伸を叶える手段の一つです。
「電動車椅子」は大きく介護用と自操用の2つのタイプがあります。
介護用は病院や施設などで使用されているものです。
利用者自身が操作して移動するのが自操用で、シニアカーとも呼ばれるハンドル型と、車椅子にバッテリーとモーターを搭載したジョイスティック型があります。
近年、最も普及しているのがハンドル型で、中でも四輪タイプの需要が増えています。
価格は30~40万円ほどで自費での購入も可能ですが、介護保険制度の福祉用具貸与種目の対象なので、要介護認定高齢者であれば、1割の自己負担でレンタル利用が可能なところも普及を後押ししている背景と言えます。

電動車椅子の国内出荷台数は一時落ち込みを見せる時期もありましたが、2013年から徐々に回復し、今後ますます需要が増えるものと見込まれています。
免許不要で外出のハードルを下げるシニアカー
高齢者が買い物や日々の用事を歩いて行うことは簡単ではありません。中には外出自体が億劫になってしまう方もいます。そんな方にとって外出のハードルを下げ、楽にしてくれるのがシニアカーです。
シニアカーは、運転免許証やナンバープレートは必要ありません。家庭用の100ボルトのコンセントで充電できる手軽さもポイントです。また、操作が難しくないので、家族など介助者に頼らずに一人で外出できることも利点として挙げられます。
シニアカーが高齢者の一般的な移動手段として浸透すれば、社会問題にもなっている、高齢者の引きこもり防止にも活躍しそうです。
位置付けは「歩行者」、正しい知識の習得を
死亡事故や加害者となる可能性も
シニアカーはハンドルで操作するので、自転車や原動機付自転車と同じカテゴリーかと思われがちですが、道路交通法の位置づけでは「歩行者」扱いとなり、歩道の通行が義務付けられ、ヘルメットの着用義務もありません。
普及の一方で、前述したようなシニアカーによる事故が問題視されています。
車や列車との交通事故で被害者となるケースや自損事故など、年間200件前後とその数は決して少なくありません。また、最高速度が時速6kmとはいえ、歩行者と接触すれば加害者となってしまう可能性も十分ありえます。
利用者は正しい知識、周囲は理解とサポートを
シニアカーを安全に使用するためには、正しい取り扱い方法や交通ルールをきちんと理解する必要があります。
事故の中には、操作を誤ったために起きたケースが多く、歩道に出る前に練習を行い、十分に操作に慣れておかなければなりません。販売店や交通安全協会が実施する、講習会への参加もおすすめです。また、バッテリーの確認など、定期的な点検を必ず行いましょう。
さらに、周囲の理解やサポートも重要で、例えば道路や線路を横断するシニアカーを見かけた際は、渡り終えるまで見守る。緊急時は非常ボタンを代わりに押すなどの協力が求められます。
みんなのコメント
ニックネームをご登録いただければニックネームの表示になります。
投稿を行った場合、
ガイドラインに同意したものとみなします。
みんなのコメント 6件
投稿ガイドライン
コミュニティおよびコメント欄は、コミュニティや記事を介してユーザーが自分の意見を述べたり、ユーザー同士で議論することで、見識を深めることを目的としています。トピックスやコメントは誰でも自由に投稿・閲覧することができますが、ルールや目的に沿わない投稿については削除される場合もあります。利用目的をよく理解し、ルールを守ってご活用ください。
書き込まれたコメントは当社の判断により、違法行為につながる投稿や公序良俗に反する投稿、差別や人権侵害などを助長する投稿については即座に排除されたり、表示を保留されたりすることがあります。また、いわゆる「荒らし」に相当すると判断された投稿についても削除される場合があります。なお、コメントシステムの仕様や機能は、ユーザーに事前に通知することなく、裁量により変更されたり、中断または停止されることがあります。なお、削除理由については当社は開示する義務を一切負いません。
ユーザーが投稿したコメントに関する著作権は、投稿を行ったユーザーに帰属します。なお、コメントが投稿されたことをもって、ユーザーは当社に対して、投稿したコメントを当社が日本の国内外で無償かつ非独占的に利用する権利を期限の定めなく許諾(第三者へ許諾する権利を含みます)することに同意されたものとします。また、ユーザーは、当社および当社の指定する第三者に対し、投稿したコメントについて著作者人格権を行使しないことに同意されたものとします。
当社が必要と判断した場合には、ユーザーの承諾なしに本ガイドラインを変更することができるものとします。
以下のメールアドレスにお問い合わせください。
info@minnanokaigo.com
当社はユーザー間もしくはユーザーと第三者間とのトラブル、およびその他の損害について一切の責任を負いません。
2020年9月7日 制定