高い専門性を発揮する専門・認定看護士
訪問看護での評価向上を検討
近年、訪問看護の利用者は大幅に上昇しています。2019年の利用者数は介護保険適用で54万6,200人、医療保険適用で28万8,795人に上ります。2009年と比較すると、前者は約2倍、後者は約3倍にもなっています。

こうした背景を受けて、厚生労働省ではサービスの質向上や実態把握について議論を進めています。
2021年10月に開催された「中央社会保険医療協議会総会(第493回)」では、専門・認定看護師による専門性の高い訪問看護において、評価や報酬の見直しを図っています。
現在、専門・認定看護師がほかの訪問看護ステーションの看護師と共同して訪問看護を行った場合、専門性の高い看護を行ったことに対するインセンティブを含めた報酬を受け取ることができます。
しかし、専門・認定看護師が単独で訪問看護を行った場合は看護内容のいかんにかかわらず、通常の訪問看護基本料のみが支払われます。
厚生労働省はこうした制度の歪みを解消することを検討しています。
専門・認定看護師が誕生した経緯
専門看護師と認定看護師は、1987年に厚生省の「看護制度検討会報告書(21世紀に向けての看護制度のあり方)」において、専門看護婦(当時の呼称)、看護管理者の育成が提言されたことを契機としています。
この提言を受けて、日本看護協会で委員会を設けて創設について検討を開始。1994年に専門看護師制度、1995年に認定看護師制度が発足されました。
2種類の看護師はそれぞれ特定の医療分野で認定されます。
1995年から特定分野の認定が開始され、現在では専門看護師は13分野、認定看護師は21分野に拡大しています。
2002年の診療報酬改定では、「緩和ケア診療科加算」「外来化学療法加算」「院内感染防止対策未実施減算」「褥瘡対策未実施減算」が新規項目として追加され、専門・認定看護師の評価制度も確立しました。
専門・認定看護師の役割と課題
かけられた大きな期待
専門看護師は「看護師として5年以上の実践経験を持ち、看護系の大学院で修士課程を修了して必要な単位を取得した後に、専門看護師認定審査に合格することで取得できる」資格です。
主にがん看護や在宅看護、慢性疾患看護、家族支援などの分野で専門的なアドバイスや看護師育成などに携わっています。
一方で認定看護師は「看護師として5年以上の実践経験を持ち、日本看護協会が定める600時間以上の認定看護師教育を修め、認定看護師認定審査に合格することで取得できる」資格です。
主に皮膚や排泄ケア、緩和ケア、認知症看護などの分野で専門性を発揮することが期待されています。
両者の違いは専門看護師が大学院などで定められた課程を修める必要があるのに対し、認定看護師は特定の期間機関で課程を修了する点が挙げられます。
また、専門看護師には「実践・相談・調整・倫理調整・教育・研究」の6つの役割が期待されているのに対し、認定看護師の役割は「実践・指導・相談」の3つに絞られています。
専門看護師は患者と家族に対するトータルケアを行っていますが、認定看護師は患者に対するケアを重点的に行っています。
全国的にはまだ希少な存在
現状、専門・認定看護師の数は十分だと言えません。専門看護師の登録者数は全国で2,733人で、そのうち1,146人は関東甲信越に集中しています。和歌山県や愛媛県などには、わずか1人しか登録されていません。
認定看護師は全国に2万1,847人と普及が進んでいますが、専門看護師と同様に関東甲信越に7,586人と首都圏に集中。最高は東京都の2,452人、最低は高知県の122人とその差は明らかです。
また、訪問看護の中心的役割を担う訪問看護ステーションへの配置も進んでいません。
厚労省の調査によると、機能強化型訪問看護管理療養費加算を申請している事業所において「認定看護師がいる」のは31.2%、「専門看護師がいる」のは3.4%にとどまっています。
逆に「どちらもいない」と回答した割合は66.2%を占めています。

専門・認定看護師を拡充するための展望
専門・認定看護師になるための支援制度が不足
専門・認定看護師が不足する原因は資格を取得するためのハードルが高いことが考えられます。
先に触れたように、専門・認定看護師になるには定められた課程を修了しなければなりません。
そのため、資格を取得するために仕事を辞めなければならないケースが多いのです。
例えば、専門看護師の資格を得るために大学院に就学した人のうち、「所属していた施設を退職」と回答した人が42.1%に上ることがわかっています。就学前から所属していた施設で就労できたのは、常勤・非常勤を足してもおよそ29%にとどまります。

退職しなければならない理由としては「就業しながら学業を行う時間がない」が最多で51%ですが、次いで「休職制度がなかった」が44.2%で二番目に多くなっています。
中には、「入学の要件で就業が禁止されていた(11.0%)」や「所属施設が進学を許可しなかった(9.9%)」という理由もあります。
看護師としてキャリアアップできるうえ、患者にとっても看護サービスの質を向上させる資格ではありますが、多くの人が学費の補助や休職制度といった支援制度の不足を指摘しています。
専門・認定看護師になるためには勉学以外の多くの壁を乗り越えなくてはならないのです。
三方にとってよい医療体制の確立
国はこのような状況を鑑み、専門・認定看護師の不足を補い在宅医療を支えていく看護師の養成を図るため、看護師が就労しながらeラーニングや所属施設で特定の医療行為における研修を受けられるように体制を整えました。
いわば専門・認定看護師に準ずる存在で、「特定行為研修修了者」と呼ばれています。
「特定行為研修修了者」の登場により、医療負担額の軽減や通院頻度の減少など、患者本人や家族の肉体的・精神的負担が軽減されていることは、すでに厚生労働省の調査で明らかにされています。
今後、在宅医療を進展するためには、より一般的に普及している訪問看護ステーションに専門・認定看護師や特定行為研修修了者を増やしていくことが肝心です。
そのためには、専門性の高い看護師を数多く抱える病院と、訪問看護ステーションの連携を深めていく必要があるでしょう。
特定行為研修修了者と協力しながら、専門・認定看護師を取得しやすいような支援体制を構築し、人員の拡充を図ることで、利用者・家族・医療従事者の三方にとってよりよい医療体制を確立することができるのではないでしょうか。
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2020年9月7日 制定