保険料負担額と社会的入院数者数の関連性
高所得者の保険料負担額が増加
厚生労働省は社会保障審議会医療保険部会において、2022年度の国民健康保険料の年間上限額を3万円引き上げて、現在の99万円から102万円に見直す案を示しました。
対象となるのは単身で年収1,140万円以上の世帯で、主に高所得者の保険料負担が増加することになります。
医療保険・介護保険などの社会保険は、サービスの利用に応じた負担をする「応益負担」と、所得が高ければ高いほど負担が増加する「応能負担」を組み合わせて自己負担割合を決めています。
上限なく所得に応じて保険料を増加させてしまうと、保険料が高いため自己負担でまかなうと考える人が増えてしまうため、保険料の自己負担額の上限額を決めています。
高所得者の上限額の引き上げは、中間所得層との負担バランスを考慮しての提案です。
また、国民健康保険の保険料は、基礎額と後期高齢者医療制度への支援金を合わせた「医療分」、40~64歳の加入者が一緒に払う「介護保険料」で構成されていますが、引き上げられるのは「医療分」だけとなる見込みです。
社会的入院につながる要因
医療費と介護保険の利用率には、関連性があると考えられています。2015年、介護保険制度の持続可能性を高めるため、一定以上の所得がある人の自己負担額が1割から2割に引き上げられました。
その影響を京都大学が調査したところ、介護保険サービスにおける自己負担増加により、医療サービスの利用が増加する可能性が明らかになりました。
また、三菱UFJリサーチ&コンサルティングが調査した『介護保険における2割負担の導入による影響に関する調査研究事業』によると、介護保険サービスの利用者を減少させた人のうち、「介護にかかる支出が重い」ことを理由に挙げた割合は、1割負担の利用者で7.2%、2割負担で35%でした。

この調査結果は介護保険料の自己負担額が増加を理由に、医療サービスの利用が増える傾向を示唆しており、社会的入院を増やす要因になったと指摘する専門家もいます。
社会的入院が引き起こす望まない場所での最期
社会的入院の歴史と背景
そもそも介護保険制度が導入された目的は、社会的入院を抑制するためでもありました。介護保険制度を導入する以前は、認知症のような完治が望めない疾病は、入院で対応するしかなかったからです。
1963年に老人福祉法が制定され、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホームが設置されました。しかし、当時は老人福祉施設に入所させることに対する心理的な嫌悪感もあり、十分な活用にはつながりませんでした。
そこで、のちに老人医療費無償化が実施されるようになりました。
こうして病気や障がいをもった高齢者が亡くなるまで病院で過ごすという社会的入院が増加していったのです。
当時の社会的入院では、家族が望まない治療をされるケースも頻発し、90年代に入ると社会問題として可視化されました。
介護と医療とを分けて対応することで社会的入院を抑制し、高齢者医療を充実させていこうとしましたが、今なお社会的入院は存在していると言われています。
望まない場所でやむを得ず最期を迎えること
社会的入院の要因は、患者とその家族、病院側、それぞれの事情が複雑に入り組んでいることが研究者などによって指摘されています。
患者や家族に共通しているのは、「十分な介護サービスが適切な場所で利用できない」ことです。
また、病院側の「退院支援」が少ないために、入院が長引くという要因も考えられています。
高齢者の多くは病院や施設ではなく、自宅で最期を迎えたいと望んでいます。
日本財団は67~81歳の方(当事者)と、35~59歳の高齢の親を持つ方(子世代)に対して、人生の最期の迎え方に関する全国意識調査を実施しました。
その調査結果によると、死期が迫っているとわかったときに、人生の最期を迎えたい場所として、当事者は58.8%が「自宅」と回答しています。

しかし、現状では約8割の方が病院で最期を迎えています。高齢者が望む場所で最期を迎えるような支援や体制を整えることが求められているのです。
社会的入院を減らし、介護者の負担も減らす提案を
終末期の訪問介護を拡充する
自宅で最期を迎えたいと考える一方で、それを実現するのは困難だと考える人は少なくありません。厚生労働省の調査によると、医療や介護関係者をのぞく一般人の66.2%が、自宅で最期を迎えるのは困難だと考えていることがわかっています。

その理由としては「介護してくれる家族に負担がかかる」が最多となっています。そこで、注目されているのが訪問介護・看護サービスです。
東京大学の調査によると、終末期を迎えた高齢者が訪問介護サービスを利用すると、在宅で最期を迎えることが増える可能性が示されています。
訪問介護サービスの利用を通じて、高齢者や介護者の負担を軽減することが、在宅療養の継続などができるようになったのではないかと考察しています。
「在宅ターミナルケア」の導入により広がる選択肢
社会的入院を防ぐために、特に注目されているのが「在宅ターミナルケア」です。これは、終末期を迎えた高齢者を在宅で看護・介護しながら最期を迎えるための準備をするための支援です。
一方、介護老人福祉施設でも、ターミナルケアを推進しています。施設で適切なケアを受けることで、より良い最期を迎えるようにする環境を整えているのです。
こうした介護施設では、配置されている医師の見込みで回復の見込みがないと診断された入居者に対して、本人やその家族からの同意を基に看取り介護を実践しています。
例えば、東京都にある特別養護老人ホームでは、なじみの職員や入居者、ご家族と「お別れ会」を実施しています。
職員が亡くなられた方のエンゼルケア(死後に行う処置のこと)を行い、最期に寂しい思いをされないようにみんなで見送りをしているそうです。
その施設では、入居者の約90%が施設での看取りを希望していると言います。
こうした取り組みを進め、高齢者が望む最期の場に選択肢を増やすことも大切ではないでしょうか。
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2020年9月7日 制定