2022年に改定されるかかりつけ医の機能
国民に広く浸透する「かかりつけ医」制度
2022年度に実施される診療報酬改定で、ひとつの柱として注目されているのが「かかりつけ医」制度です。
かかりつけ医とは、特定の患者を日常的に診療し、その生活背景や心身状態を細かく把握している医師のことを指します。
病気の予防や早期発見などの広い役割が期待されています。また、時と場合によって専門医や介護施設などを紹介するなどの機能も求められています。
その制度は国民に広く浸透しています。厚生労働省の調査によると、「かかりつけ医を決めている」患者の割合は、全年齢層で83.3%に達しています。

しかし、年齢別に見ると75歳以上は約97%がかかりつけ医を決めているのに対し、15~39歳の患者は約56%と、かかりつけ医を決めている割合に差があることがわかります。
また、かかりつけ医がいない理由として、2020年の日本医師会の調査によると「かかりつけ医の探し方がわからない」「どのようなかかりつけ医師が適しているのかわからない」という理由が挙げられています。
対象患者を拡大して役割を厳格化
現在、政府は、かかりつけ医機能を持つクリニックや中小病院を受診し、そこから専門的な機能を持つ病院を紹介してもらうという流れを強化する方針を取っています。
しかし、制度の活用が進む一方で、いまだ患者サイドからはどんな機能を持っているのかわかりにくいという指摘もありました。
そこで、こうした機能をより明確にするため、今回の改定ではかかりつけ医機能を持つ診療所を評価するための「機能強化加算」の要件が厳格化されます。
例えば、この加算を算定するため、現行の制度では配置する医師についての明確な定義がありませんでしたが、今回の改定により「介護保険利用の相談対応、主治医意見書作成」「警察医との協力」「地域ケア会議への出席」などの項目が追加される予定です。
また、かかりつけ医に関する「地域包括診療料」「地域包括診療」加算についても要件が改定されます。
最も大きな改定は、対象患者の拡大です。これまでは脂質異常症、高血圧症、糖尿病、認知症が対象になっていましたが、今回の改定で慢性心不全、慢性腎臓病も追加されることになりました。
これにより、より多くの患者がかかりつけ医制度を活用することができるようになります。
さらに、服薬や運動などの生活習慣の指導において、医師の指示によって看護師や薬剤師が積極的に関わることができるようになり、患者の状態を判断して予防接種の相談なども行います。
新型コロナワクチンの接種など、患者の状態をよく知るかかりつけ医が指示できるようになるのです。
求められるリーダーとしての役割
行政・介護との橋渡しを担う
政府は、市町村などの地域で医療・介護のサービスを一体的に提供する地域包括ケアシステムの構築を急いでいます。その中で、重要な柱として位置づけられているのが在宅医療・介護の推進です。
2025年から団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になり、生活習慣病や認知症患者の増加が見込まれているため、高齢者が疾病を患っても在宅で安定的に医療や介護を受けられる体制づくりが不可欠です。
そこで支援の司令塔としての役割を求められているのが、かかりつけ医です。
かかりつけ医は患者の状態を最も把握しやすいため、認知症などの疾患を発見した際、すぐに介護予防サービスなどを提供する機関などを紹介することができます。
かかりつけ医が医療と介護の両面でサポートしてくれるとあって、患者側の安心感にもつながります。かかりつけ医は、今後の医療・介護提供体制において欠かせない役割を担っているのです。
幅広い診断ができる「総合診療専門医」の育成
冒頭の段落で述べた通り、かかりつけ医制度が広まらない理由として、一般的な患者がどのようにしてかかりつけ医を見つけたらいいのかわからないという点があります。
厚生労働省の資料によると、「日頃から決まって診療を受ける医師・医療機関を持たない理由」として「適当な医療機関をどう探してよいのかわからないから」「適当な医療機関を選ぶための情報が不足しているから」という理由が約2割を占めています。

一般的に、クリニックなどには内科や耳鼻科など専門科があります。そのため、患者としてはどの診療科でかかりつけ医を決めたらいいのか判断しづらいのです。
そこで、専門科だけではない幅広い知識を持ち、ほかの専門医との連携や適切な初期対応と継続した診療を行う「総合診療専門医」の育成が推進されています。
全日本病院協会では2018年から一定のキャリアを持つ全科の医師を対象に、研修を行って「総合診療専門医」の育成に取り組んでいます。
今後、かかりつけ医は定義が明確になり、より生活に根づいた医師として認識されるようになるかもしれません。
かかりつけ医体制構築のヒント
かかりつけ医と専門医との線引きを明確にする
海外では、特定の技能を持った医師を、かかりつけ医として指定する制度が定着しています。その代表的な例がドイツの家庭医制度とフランスの主治医制度です。
現在、日本におけるかかりつけ医は、診療報酬上での評価でのみ定義されており、法律や制度における根拠はありません。そのため、医師と患者の信頼関係で成り立っています。
一方、ドイツやフランスでは専用の法律を設けて、医師と患者の間に明確な契約関係を結んでいます。
ドイツでは18歳以上になると、特定の家庭医を登録する決まりになっています。
名目上は任意ですが、登録していないと金銭的なペナルティを受けます。
登録した家庭医を受診した場合は自己負担がゼロであるのに対し、そのほかの家庭医や専門医を受診した場合は10ユーロ(約1300円)がかかります。
フランスの主治医制度も同様で、主治医を経由する場合は自己負担3割なのに対し、経由しない場合は7割を負担しなくてはなりません。
両国では制度で明確な役割を定義して推進した結果、慢性疾患の管理に効果を発揮しているといわれています。また、新型コロナの感染拡大時も、すでに患者の状態を把握しているため、オンライン診療でも適切な診断を下すことにつながったとされています。
このように、先進国ではかかりつけ医と専門医で役割の線引きが図られており、それが患者にとってのメリットになっているのです。
歯科医や薬剤師などにもかかりつけ医機能を持たせる
日本では、ドイツやフランスのような法制度を設けるまでに時間がかかりすぎることや各団体との調整が困難であることから、かかりつけ医制度の適切なシステムを構築することで対応しようとしています。
在宅医療を推進する北海道家庭医療学センターでは、かかりつけ医制度の構築を進めるために、中間機関となり、さまざまな取り組みを行っています。
例えば、それぞれ外来診療と訪問診療を行う病院との連携を図り、総合診療専門医の育成などにも取り組んでいます。
こうした連携において、注目を浴びているのが歯科医です。歯科クリニックは各自治体に設置されており、小児から高齢者までのさまざまな年齢層が利用しています。
複数の市町村で形成される「二次医療圏」で、歯科病院の有無を調査したところ、ほとんどの圏域で「2~5病院」が設置されています。

歯科医は口腔状態などから、さまざまな疾病などを早期発見することができます。そこで総合診療的な知識を持ち、多職種連携を実施することでかかりつけ医機能の充実を図れます。
こうした動きは薬剤師でも進んでおり、法制度を整えたり、各団体との調整を行わなくとも、かかりつけ医としての役割を果たす場が拡大しつつあります。
2022年の診療報酬改定でかかりつけ医の定義がより明確化され、医療機関の役割が変わる可能性があります。また、国民もかかりつけ医制度を良く知ることで、適切な医療・介護を受けられるというメリットがあります。
かかりつけ医制度は、超高齢化が進んでいる現代において効率的な制度といえます。今後さらに、政府と国民の双方でかかりつけ医制度を推進していく姿勢が大切です。
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2020年9月7日 制定