
2016年の平均寿命は男性が80.50歳、女性86.83歳です。平均寿命は年々伸長しており、長期化する高齢期をどのように過ごすか、社会的な課題になっています。
かつて高齢者が少なかった時代においては、高齢期といえば「余生を過ごす」という印象が強くありました。しかし現在は、元気で活動的な高齢者、いわゆる「アクティブシニア」が増加し、そんなイメージはなくなりました。
今や、高齢者は地域コミュニティの運営に欠かせない存在。高齢者の「孤立化」や「無縁化」、「貧困化」などが深刻化するなか、少しでも多くの高齢者が社会的なつながりをもち、自分らしい生活を送れるよう支援する機運は年々高まっています。
こうした取り組みのひとつが「生涯学習」です。「生涯学習」とは、文字通り「人が生涯を通して学習を続けていくこと」を意味し、自治体やNPO法人、大学などによってさまざまな学びの場が提供されています。
「高齢者大学」運営の問題点…地域によって内容や受講期間に大きな格差
「高齢者大学」や「シニア大学」などと呼ばれている、主に自治体などが実施している生涯学習があります(以下、「高齢者大学」と表記)。大別すると「広域型」と「地域密着型」に分けられるでしょう。
- 広域型の高齢者大学とは
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「居住制限」のない高齢者向け大学のことで、「大阪府高齢者大学校」(運営主体:NPO法人大阪府高齢者大学校、共催:大阪府、後援:大阪市、堺市)が当てはまります。この大学校は、学校名に“高齢者”と入っていますが、実際は「年齢制限」はない学校です。
大阪府が、以前取り組んでいた「アクティブシニア講座」と「シルバーアドバイザー講座」の理念を継承、発展させ、運営をNPO法人に移管したもので、「高齢者による高齢者のための大学校」を理念に掲げ、約160名のボランティアによって運営されているといいます。
63教科もの豊富な講座があり、昨年は約2,500名が受講したそうです。全国的に見ても「居住制限なし」「年齢制限なし」とした高齢者大学はほかに見当たらず、運営主体がNPO法人だからこそ実現できた形態と言えるでしょう。
- 地域密着型の高齢者大学とは
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居住制限がある高齢者大学のことで、こちらは全国に広く見られるタイプです。そのほとんどが都道府県や市区町村によって運営され、対象者の年齢を「60歳以上」としています。講座内容や受講期間などは運営主体や地域によって大きく異なります。
新潟県高齢者大学(運営主体:新潟県社会福祉協議会)は「基礎応用課程講座(2年制)」を設け、生活に役立つ実践的な講座を充実させています。講座実施会場を新潟市、長岡市、上越市と県内3市に設け、受講者の地理的ハンディキャップにも配慮しています。
実は、新潟県高齢者大学のように実践に焦点を当てた充実した講座と2年に渡る受講期間そして複数の会場を用意している例はまれ。座学のみで、単発もしくは10回程度で完結し、期間も1日から半年、受講場所は県庁所在地という高齢者大学が一般的です。
こうした高齢者大学の場合、学ぶ意欲が高まっても次のステップに進めず、受講の成果を発揮できないまま終わってしまうケースや、受講のために県庁所在地まで行けないという理由から、申し込み自体を諦めるという例も見受けられます。
最高齢の男子大生は80歳、女子大生は78歳!70歳を超えても学ぶ意欲は旺盛

国公私立大学・大学院もシニア学生の獲得に乗り出しました。
高齢者向けの年間定期購読雑誌の発行などを手がける、いきいき株式会社のアンケート調査(国公私立大学・大学院100校を対象とした40代以上の学生数調査)によると、40代以上で国公私立大学・大学院に在籍している学生は全国で4,404人いたそうです。
全国最高齢の男子大生は80歳(千葉大学)、女子大生は78歳(学習院大学)でした。70歳を超えても旺盛な学習意欲を持つ高齢者が全国にいることがわかります。
各大学がシニア学生の獲得を図る理由はさまざま。
地域貢献という側面だけでは説明できないでしょう。
大学、特に私立大学は深刻な経営難に直面しています。
日本私立学校振興・共済事業団によると、2009年度に赤字だった私立大学は226校で全私立大学の約4割に上っており、少子化を背景とした学生獲得難に対処した行動と見ることもできるでしょう。
入学を促すため、学費減免制度やシニア奨学金を設けている大学もあります。
なかでも、大阪商業大学の「シニア特別授業料減免制度(対象者は満55歳以上)」は魅力的です。
「入学年度の4月1日の年齢×1万円」を減免するという制度で、60歳なら年間授業料が60万円減免になります。
大阪商業大学の通常の年間授業料は74万円ですから、年間14万円で大学に通えることになります。
上述したNPO法人や自治体によって運営されている高齢者大学は、学校教育法における大学ではありません。
あくまで“大学”という名称がついた学習機関です。
一方、国公私立大学は、卒業すると学士資格を得ることができます。
運営主体による主な違いはここにあります。
高齢者は健康や趣味への興味に偏っている? 高齢者と高齢者大学で異なるニーズ
高齢者人口が急増するなか、高齢者大学や国公私立大学・大学院への入学者は増えていくのでしょうか。ヒントは高齢者の学習活動の内容や学び直しの実施状況などにありそうです。
自治体運営の高齢者大学の目的を見ると「高齢者の生きがいづくりを推進し、地域社会で活躍できる人材を育成する」とうたっているケースが大半。
運営側としては、高齢者の教養の向上はもちろんですが、地域コミュニティの中核となり、貢献する高齢者を育成したいという狙いが隠れています。
平成26年版高齢社会白書によると、高齢者が行っている生涯学習で最も多かったのは「健康・スポーツ(健康法、医学、栄養、ジョギング、水泳など)」。
以下「趣味的なもの(音楽、美術、華道、舞踊、書道、レクリエーション活動など)」「家庭生活に役立つ技能(料理、洋裁、和裁、編み物など)」が続きます。

つまり、高齢者の学習ニーズは、健康や趣味などに偏っており、即社会貢献につながるとは言い難い状況です。
またデータを見る限り、国公私立大学・大学院への入学者数は増えそうにもなく、現状「学校(高等・専門・各種学校、大学、大学院など)の正規課程での学習」を行っている高齢者はわずか1%でした。
学び直しの実施状況を尋ねた「教育・生涯学習に関する世論調査」によると、「(社会人となった後に)学んだことはなく、今後も学びたいとは思わない」と回答した高齢者は、60~69歳で48.2%、70歳以上では65%に上っています。

このままでは、高齢者大学は衰退する可能性もあります。
高齢者大学の活性化のためには、同窓会活動などの「人的交流」が効果的
では、高齢者大学の活性化を図るには何をしたらいいのでしょうか。同窓会ほか人的交流をアピールするのも一案です。実際、新潟県高齢者大学では同窓会事業の一環として、グループ討議などを含んだ研修旅行を実施しており、同窓生が交流する機会を設けています。
高齢者が生涯学習を行っていない理由を「一緒に活動をする仲間がいない」とした高齢者は60~69歳で13.6%。人的交流に魅力を感じて入学する高齢者は一定数いると考えられます。
また、「身近なところに施設や場所がなかったり、学習の内容や時間帯が希望に合わない」と回答した高齢者は60~69歳で12.6%。実施場所を増やしたり変更することで利用者を増やせるとも考えられます。

健康意識や認知症予防への関心の高まりも相まって、こうした生涯学習に対する高齢者の興味はより強まると予想されます。高齢者大学などは時代に即応した対策を講じ、高齢者の生きがいある生活づくりに今以上に貢献してほしいですね。
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2020年9月7日 制定