
「社会保障費が問題になっている」…と言ってもピンと来ない方もいらっしゃるのではないでしょうか。簡単に言えば、たくさんの高齢者を保険料や税金などで支えているのですが、そのどちらも金額が足りていない、ということです。
以前の【まとめ】ニュース:高齢の生活保護受給者が増えている理由とは?背景にある高齢者内での富裕層と貧困層の二極化でもお伝えした通り、最も問題視されているのが年金ですが、今回は「医療費」について考察してみます。
高齢者の医療費について、現状では、後期高齢者医療制度が整備されているために、75歳以上になると自動的に窓口での負担が1割になり、さらに特例として70~74歳でも同様の措置が取られています(平成26年4月1日から段階的な見直しが入っています)。
果たしてこの数字は、今の日本にとって適正な数字と言えるのでしょうか?各種のデータから考察すると、それがやはり財政的に不健全である様子が見えてきました。
高齢化に伴って医療費が増加の一途!対GDP比で10%間近となっている国民医療費はなんと40兆円を超える勢い

10月8日に厚生労働省から発表された「平成24年度国民医療費の概況」によると、国民医療費(病気やケガの治療のために医療機関に支払われた医療費の総額)の合計は39兆2117億円。
これは国内総生産(GDP)の8.3%にあたる大きな数字で、医療が日本経済を担う重要な産業であることは疑いようがありません。
この数字は今後も大きくなっていき、団塊の世代が後期高齢者の仲間入りを果たす平成37年には10%を超えると推測されます。事実、上記のグラフように高齢化が進むにつれて医療費の対GDP比は右肩上がりです。
医療技術の進歩によって高額医療は増えるでしょう。また、産業として拡大するのに伴って人材の確保が急務となり、人件費の高騰も予想されることから、産業として拡大していくのは間違いないでしょう。
その一方で、産業としての拡大がもたらす弊害があるのも事実です。それが、国民一人ひとりの、また国としての負担が増えること。
ご存知の通り、医療費は窓口による患者の負担や保険料などによってまかなわれています。そこで、年次別に見た医療費と自己負担の相関図が以下の表になるのですが、ご覧の通り、高齢になるにしたがって自己負担額より医療費の方が大きくなっています。

60歳を超えると負担額(保険料+窓口での負担)より医療費の方が上回り、70~79歳では13万2000円の負担額に対してかかっている医療費が65万5000円、80歳以上ともなれば11万9000円の負担額に対して医療費が約100万円にまで跳ね上がります。
この差額が、主に若い世代が支払っている保険料と公費、つまり国の負担によってまかなわれているのです。
39兆2117億円の医療費に対する財源のうち、約半分の48.8%は健康保険料で、それに次ぐのは国庫・地方を合わせた公費で38.6%。
実に15兆1459億円もの額を、税金をはじめとした国のお金でまかなっているのです(患者の負担はわずか11.9%!)。
現状の医療制度のままで産業として拡大していけば、同時に国の負担も大きくなっていくのは火を見るよりも明らか。そのために今、高齢者の医療費負担を増やすかどうか、という議論が巻き起こっているのです。
病院の井戸端会議が医療費増加につながっている!? 高齢者の自己負担率を1割から3割に上げれば医療費の抑制は可能に?
国の医療費が増えている原因のひとつに、「過剰診療」も問題となっています。
過剰診療とは、検査や投薬、ときには入院など、本来は必要ではないのに、医師が診療報酬を得るために無駄な診療を行うこと。
そのために発生する医療費も、もちろん公費と保険料、そして患者の自己負担でまかなわれるわけですが、過剰診療が増えれば増えるほど公費が使われることになります。
また、病院が高齢者の「井戸端会議」の場所になってはいないか、という指摘も一部では挙がっています。
もちろんすべての高齢者に当てはまることではありませんが、毎日のように病院に行き、顔なじみの高齢者同士でおしゃべりをして…という光景も珍しいものではありません。
こうした問題の元凶のひとつもまた、後期高齢者が支払う自己負担分が1割という低い割合に設定されているからと考えられます。そこで方方から上がっているのが、「高齢者も一律、自己負担を3割にすべきだ」という声。その根拠となるデータが以下です。

これは、家計に占める医療費の割合を記したグラフです。
平均は約2.5%となっていますが、60歳以上では平均値を超え、後期高齢者では4%近くにまで上ります。
確かに負担は大きいのかもしれませんが、医療費の平均月額は7656円とされており、これは外食費(1万2048円)や教育娯楽費(3万2262円)に比べると少ない数字であることがわかります。
つまり、家計に占める割合として医療費がそれほど高いものではないということであり、もう少し医療費負担を増やしても良いのでは?という考え方もできることに。
過剰診療や、病院が高齢者のたまり場になることの抑制にもつながるという考え方には一理あるものと思われます。
一方で、こうした議論が始まると「収入の少ない高齢者はどうすれば良いの?」という疑問も提示されます。
以前の【まとめ】ニュース:高齢の生活保護受給者が増えている理由とは?背景にある高齢者内での富裕層と貧困層の二極化でもお伝えした通り、生活苦にあえぐ高齢者が多いのは事実です。
しかしそれは、医療費の抑制とは別問題と考えた方が良いのではないでしょうか。
医療サービスとは選択の自由があるものであり、否応なく生活に支障をきたす生活費の問題とは区別すべきでしょう。
収入が少ない高齢者に対しては、医療費負担を少ないままにするのではなく、生活保護費の見直しや高齢者の雇用促進といった点で支援をするのが理に適っているのではないでしょうか。
確かに、高度経済成長期を必死に働いて生きてこられた高齢者に対して敬意を表するのは大切なこと。今の高齢の皆さんは、老後に豊かな暮らしをするために貯蓄を増やしてきたという側面もあるでしょう。
それを今になって、医療費負担増という形で支払わせるというのはある意味、乱暴に思えるかもしれません。しかし逆に言えば、そうせざるを得ないほど日本の財政が逼迫しているという局面に立たされているのです。

上記の表のように、高齢の皆さんが貯蓄する理由として最も大きなものは「医療・介護」のため。その蓄えをいつ使うのかと考えれば、答えは「今」なのではないでしょうか。
…と、こうした声が挙がっているのは事実ですが、今回の衆議院議員選挙における各党の公約を見ても、このような具体的な案や数字がマニフェストに掲げられているわけではありません。
高齢化に伴って高齢者がどんどん増えていること、そうした高齢者が政治家にとっての大きな票田になっていること、また大きな力を持つ医療機関の各団体との関係性など、そこには様々なしがらみがあることは想像に難くありません。
とはいえ、前述したように、日本の財政は待ったなしのところまで逼迫しているのが現状です。今回の選挙を機に、民意を医療制度の改革にも期待したいところですね。
高齢者だけでなく、現役世代にできることは?メタボ予防・解消で約1兆円近くの医療費削減に!?
さて、医療制度の改革や高齢者の自己負担増を求める一方で、現役世代にも医療費削減に貢献できることはないか…と考えると、ないわけでは決してありません。
それは何かというと、健康管理に気をつけるということです。

上記の表は、年齢別のメタボリックシンドロームの状況です。定期的に健康診断を受けている人であれば、その際に医師から通告された経験がある人も少なくないのではないでしょうか。
メタボリックシンドロームとは、肥満・高血糖・高中性脂肪血症・高コレステロール血症・高血圧のいずれかが重複して起こっている状態のこと。
わかりやすい基準で言えば、男性は腹囲が85センチ以上、女性は90センチ以上になるとメタボリックシンドロームが疑われます(もちろん血液検査を行って正確な診断をするのが望ましいですが)。
表を見ると、女性より男性に多く見られ、特に50代以上の男性では4人に1人がメタボの可能性が強く、予備軍も含めると半数以上がメタボということに。
厚生労働省が発表している「医療費の見通しの推計方法について」という資料を見ると、メタボの人はそうでない人より年間の医療費が9万円も高いそう。
現役世代の人口統計から推計すると、メタボ予備軍の人が予防してメタボにならなかったとすると約8800億円の医療費削減に。また、現在メタボの人がメタボ解消にまで健康状態を戻すことができれば、最大で9600億円もの医療費削減につながることになります。
糖尿病による人工透析の必要がなくなれば、約800億円の医療費削減に!
残念ながらメタボリックシンドロームを予防・解消できないと、その後に待っているのが生活習慣病。代表例を挙げると、ガン、心臓病、脳卒中、高血圧、高脂血症…とたくさんありますが、注目したいのが糖尿病です。

メタボと同様に年齢別の糖尿病の状況を記したのが上記のグラフ。見ると、生活習慣病というだけあって高齢者に多くなってはいますが、現役世代のうちに健康管理に気をつけていれば防げるものとも考えられます。
糖尿病にかかると、定期的な通院が必要になったり、薬の管理、食事制限など、日常生活に様々な支障をきたしますが、中でも大変なのが、重症化した場合に受けなければならない人工透析です。
人工透析とは、糖尿病によって低下した腎機能の代わりとなる医療行為。
腎臓は体内の毒素をろ過する役割があるのですが、それを人工的に行うのです。
体内から血液を抜き出して、ダイアライザーと呼ばれる血液透析器で血液を浄化し、また体内に戻す…という治療では、1回につき約3時間、週に何度も通わなくてはならない場合も珍しくありません。
人工透析にかかる費用についてはあまり知られていないかもしれませんが、日本透析医学会の調査によると、年間で約500万円もかかるそう。
1年間で人工透析を行う患者の数は約1万7000人と言われており、もし人工透析をしなくて良かった場合を推計すると、年間で800億円以上も医療費の削減につながることになるのです。
メタボを予防すれば糖尿病の予防にもつながり、かつ医療費の削減にも。自分の健康を考えるだけでなく、国のためにもなると考えると、国民一人ひとりが健康管理について高い意識を持つ必要があると言えるでしょう。
日本のガン検診受診率は主要国の中でも最下位クラス!? 医療費削減のためには受診率アップも必要に
最後に、ガンについても触れておきましょう。
ガンは、今や日本人の死因第一位となっている病気ですが、一方で、「国立がん研究センター」の発表では、2人に1人はガンにかかるという怖いデータもあります。
もちろん遺伝的な要素も含むので、“予防”と言われてもピンとこないかもしれませんが、ガンの原因の多くは喫煙や食生活。
これが生活習慣病に数えられる大きな要因ですが、予防できる病気だということも判明。
男性がかかるガンの約6割、女性では約3割が予防できるとも言われています。
予防と同時に、ガンの治療で大切なのが早期発見すること。早い段階でガンを発見できれば完治への道も開けますし、その後にかかる治療費も不要になるはず。またこれも、メタボ予防や糖尿病予防と同様に、医療費の削減に貢献することは間違いありません。

それなのに、です。
上記はガン検診を受診する割合を主要国別にグラフにしたものですが、ご覧の通り、日本人の受診率の低さは際立っています。
この数字をもっと上げることができればガンの早期発見・早期治療が可能になるだけでなく、がん予防に対する意識が高くなり、結果として医療費の削減につなげられるはずです。
一方で、健康であれば老後にやりたいことも自由にできるでしょう。さらには、働くことができるのであれば収入を増やすことができ、所得税など税金を支払うことで国の財政の助けにもなります。
自分が健康になることは医療費を削減するだけでなく、国の財政を潤すことにもつながるのです。そう考えると、自らの健康について見直してみようという気になりませんか?
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2020年9月7日 制定