「在宅介護推進」の流れを受けて高まるニーズ…配食事業の必要性とは?
2025年には、高齢化率が30%を越えて、団塊の世代が一気に後期高齢者に突入します。
日本はかつてない高齢者ばかりの国になりそうです。
ですが、高齢者の基準を65歳から75歳に引き上げ、65歳前後は“準高齢者“として、扱うよう提言されていることもまた事実です。
昔と比べて、今の高齢者は明らかに若く、元気です。今すぐの喫緊の課題として介護を必要としない人、まだまだ住み慣れた自宅で元気に暮らしたい人、介護が必要であっても、在宅で暮らしたい人などの間で、お弁当の宅配、つまり配食のニーズが高まっています。
いちいち食事の準備のために外出するのがとても大変だったり、買い物をできる場所が近くになかったりなど、高齢者の「買い物難民」も多くいて、問題となっています。
そのようなニーズをとらえて、さらに低カロリー、低塩分、普通食などのニーズをくみとったお弁当宅配サービスの利用者は増えつつあります。

高齢者は、自分で食事を作る自炊を好むため、買い物代行やネットスーパー等の利用が盛んです。足腰に衰えがあり、重いものを持つのが大変な高齢者にとって、自宅まで水やお米などを届けてくれるこのサービスは、非常にありがたく、便利なサービスといえるでしょう。
ただし、注文にはインターネットを使いこなす必要があります。高齢者にはハードルが高いのが現状です。また、最低注文額などもあるため、まとめ買いの必要があるので金額計算なども大変で、年金暮らしの高齢者には厳しいものがあります。
滋賀県の「コープしが」では、離れて暮らす家族が注文し、配達時に安否情報をメールでしらせてくれるサービスもあります。
顔なじみのスタッフが届けてくれるので、日々の様子が把握できますし、異変があったときでも対応してくれます。
こうしたサービスは家族にとっても安心で、コープしが側にとっても、インターネット利用とまとめ買いの双方を満たしてくれる顧客となるので、多くの人が幸せになれる仕組みだといえます。
伸びる配食事業。6年間で1.8倍に成長!
実際、配食事業は業種として伸びています。
厚生労働省の調査によると、2009年から2014年の6年間の間に、1.8倍に市場規模が伸び、1,050億円に拡大しています。
厚生労働省としても、自助による健康管理の取り組みを進めてほしいと考えており、在宅医療や在宅介護の推進を行っています。
施設でケアするには高齢者の数が増えすぎ、医療費がかかりすぎるからです。
それらの流れを受けて、栄養管理面を強化した配食事業はさらにニーズが高まると予想されています。

医療・介護関連施設に準じた栄養管理を行ってくれる配食事業への要求や、現段階では栄養がとれていても、今後低栄養になるリスクのある地域高齢者、老化による健康障害に陥りやすい状態の人たちの予防を目的として、栄養管理を正しく行った配食事業へのニーズが高まります。
配食事業は今後も伸びる市場であり、市場規模は拡大すると予想されています。営利・非営利・業態・行政の関与の有無を問わず、さまざまな業種がこの市場に参入しています。
なぜこんなにも配食事業は伸びているのか?
住み慣れた地域で在宅を基本とし、生活の継続を意図する地域包括ケアシステムの旗印のもと、適切な栄養管理を行う食環境の整備は欠かせないものです。
厚生労働省の調査では、在宅で居宅サービスを受けている利用者や家族にとって、食事について心配事や困りごとを抱えている人が多かったという調査報告があります。
食事内容、食事の準備や料理、食事形態、買い物などと困りごとを抱えている人たちにとっては、なんらかの食事サービスを利用するという選択肢が考えられます。
内閣府の調査によると、外食や店で売っているお弁当やお惣菜などを利用している人も多く、またそういったものをまったく利用してない高齢者も多くいました。
一方で民間や公的機関の配食サービスを利用している人は4%程度にとどまり、市場は伸びているにも関わらず、利用状況は非常に低いのが現状です。

しかし、今後は自分で食事の準備ができなくなってしまったり、用意してくれる人がいなくなってしまったりした場合に、食事サービスの利用を希望する人は65歳以上で69%と非常に高く、潜在ニーズは非常に高いものだと考えられます。
そして、民間や公的な機関による配食サービスの利用の意向が高まっており、今後は本格的に宅配サービスの利用が伸びていくものと考えられます。

社会的な視点で見ても、高齢化が進んでいく中で、健康寿命を伸ばすことは非常に大きな課題でもあり、それには社会保障制度の改革を推進すると同時に、自立のための環境を整えることが重要です。
伸びる配食サービス。その課題点とは!?
ニーズも高く、市場規模も伸びている配食サービスには、課題点もあります。
まず、管理栄養士や栄養士が不在の事業者において、栄養価計算を行っていない例や、治療食を提供している例がありますが、それらを食べて本当に栄養が満たされるのかという問題。
これは安さだけに注目していると、そうした業者を選んでしまいがちです。
また、摂食嚥下機能の低下が起こっている高齢者は多いのですが、なかなかそうした高齢者に特化した食事を提供している業者が少ないという問題点もあります。
そしてなにより、厚生労働省の考えによると、配食への希望を持っていなかったり、持っていたとしても十分に事業者に伝えられていなかったり、さらに、配食が栄養教育の教材としての役割を十分に果たせていないという問題点があげられます。
こうした課題を解決していくことが、事業者に求められており、また、事業として配食サービスを成功させるために必要なカギとなるのではないでしょうか。
ブラック労働じゃない?介護事業から撤退したワタミも、配食サービスは継続
居酒屋チェーンのワタミは、施設の入居率が伸び悩み、介護事業から撤退しました。
ですが、配食サービスは継続しており、「ワタミの宅食」としてCM展開も行っています。
うまくやれば、配食事業は利益を出すことができるのです。
問題はいかにして栄養面に気を配った食事を、年金等の限られた生活資金で暮らす高齢者に安く届けるかで、そこにはサービス業の過重労働などの問題もつねに裏でつきまといます。
配食サービスが伸びるのは問題ありませんが、その裏で若者が過酷な労働にさらされているのでは、現在社会問題化している長時間労働の問題に、宅食サービスも巻き込まれかねません。ただでさえ、飲食チェーンなどの食にまつわるサービス業はブラック化しがちです。
セブンイレブンもお弁当500円以上で送料無料の宅配などのサービスを開始しましたが、ではその宅配コストは誰が負担するのかという問題があります。
ワタミもセブンイレブンも、従業員を酷使するブラック企業だという批判も一部あり、裕福な高齢者が若者を格安で使うという図式がここにも見て取れます。
配食サービスに関わる人達のブラック化を防ぐためにも、年をとっても適切な栄養を摂取するためにも、正しく健康的な食生活にはお金がかかるということをしっかりと国は認知を広げる必要があるでしょう。
補助金を出せとまではいいませんが、食にはお金がかかることを知ることが重要です。
また、適切なお金を出せば、より健康に配慮した食事が届けられる高付加価値サービスになることも、欠かせないことでしょう。
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2020年9月7日 制定