寝たきりが続くことで体が寝具に圧迫されて血行不良となり、組織が壊死してしまう褥瘡(じょくそう)は体を動かすことの少ない高齢者によくみられる状態です。別名「床ずれ」とも呼ばれている褥瘡、次回の介護報酬改定でこれを管理する加算が追加されることとなりました。
介護報酬改定で”褥瘡マネジメント加算”が新設
特養において、褥瘡の発生率は半数を超える

厚生労働省が褥瘡の発生率について特養に対する調査を行なったところ、55.7%が「発生したことがある」と回答。その中でも「職員がいち早く気がつくことができなかった」と答えた施設は16.6%もあり、早期の発見が課題となっていました。
この状況を改善するため、厚生労働省は「褥瘡マネジメント加算」を新設。定期的なモニタリングの計画とそれに応じたケアを展開することで、月10単位、3ヵ月に1度の加算を受けられるようになりました。
さらに、「排泄支援加算」も4月から新設。排泄について自立できていない高齢者に対して個別の支援を行うことで加算が得られることになりました。こちらは1人あたり月100単位で半年間算定できます。
排泄は自立した生活を送る上で非常に重要です。施設から在宅に復帰することができない理由で「排泄が自立していないから」という高齢者が多くなっている状況を鑑み、支援に力が入った形となったわけです。
褥瘡はどのようにして起こるの?
そもそも褥瘡の「褥」は布団、瘡は「デキモノ」をそれぞれ指し、長期間布団で寝込んでいる際にできるデキモノという意味で床ずれと同義。寝返りが打てないことで骨の突起部分や皮膚に圧迫が続いたり、乾燥によって刺激に対して弱くなることで発生します。
褥瘡になりやすいのは仙骨部と呼ばれる、おしりの真ん中にある骨の飛び出した部分。後頭部やかかとなどにもできる場合があり、骨が突出している部分には注意が必要です。
また、状態がひどくなると菌が体にまわって箇所が黒ずんで化膿したり、発熱することもあります。場合によっては命の危険もあり、褥瘡がまだ小さい段階でケアしていくことが大切です。
褥瘡発生のさまざまな要因をみる
褥瘡発生の直接的要因は皮膚や軟部組織の壊死
褥瘡が発生してしまう直接的な要因は、主に体の重みが皮膚や軟部組織を圧迫し、血流が途絶えてしまうことにあります。骨が突起になっている部分に持続的に圧力が集中し、循環障害が発生してしまうことで組織が壊死してしまうのです。
こうした持続的圧迫の他にも、体が不自由であることから寝返りをうまく打てずに同じ体勢をずっと続けることも、組織が壊死してしまう要因となります。
褥瘡には介護量や情報量などの間接的な要因も
直接的な原因以外にもさまざまな間接的要因があり、これらが複雑に絡み合って発生するのが褥瘡です。

例えば、栄養が足りていない場合。むくみが起きることによる皮膚の弾力低下や、皮下脂肪と筋肉組織が薄くなることによる骨の突出が褥瘡につながってしまうのです。また、体を動かさないことをきっかけとして、菌に対して抵抗の弱い骨粗鬆症(こつそしょうしょう)や糖尿病を患っている人、抗がん剤やステロイド剤の使用によって体力が落ちている人も褥瘡のリスクが高まるようです。
一方で褥瘡には、体の問題だけでなく、社会的な要因も絡んでいます。その中でも重要なのが介護のマンパワー不足。体が弱って寝返りが打てない高齢者をケアする余力がない場合や、介護者が自宅において寝たきりの高齢者の世話が十分にできないなどの環境が褥瘡の発生を促してしまうようです。
自宅で十分なケアができない背景には、介護や福祉の制度に関する情報不足や経済力不足という事実が存在。介護保険サービスを受けることができるのにもかかわらず、知識がないために利用していない、あるいは希望するサービスがある反面でそれに充てるお金が足りず、介護サービスを受けることができないのです。
褥瘡の治療・予防方法とは?
褥瘡の治療方法はとにかく皮膚のケア!
ここまで詳細を追ってきた褥瘡、その治療として代表的なのが“塗り薬“。褥瘡であることがわかったら、薬を使ってマッサージし、皮膚をケアしていくことがなによりも大切となります。一方で栄養補給およびリハビリテーションが必要なケースもありますが、褥瘡は予防が非常に難しく、適切な治療も困難となるのが現実です。
褥瘡がひどくなって再発を繰り返すと、場合によって必要になるのが外科的手術。皮下脂肪や筋肉をそのままはぎ合わせる筋皮弁という方法を行いますが、これによって褥瘡となってしまった部分に筋肉をつけて血行を改善することで次の褥瘡を予防します。しかし外科手術は大掛かりになるため、有効となる場合かどうかは慎重に見極めなければなりません。
予防しようと体を反対向きにすれば、次は反対側に発生してしまうのが褥瘡のやっかいなところ。再発しないよう注意しながら体位変換していかなければならないので、治療・予防は非常に難しいのです。
バランス良く栄養を摂取し、褥瘡となりにくい身体へ
褥瘡状態になってしまっては最悪の場合に手術もありえますが、そうなる前の予防が不可能というわけではありません。
予防は体の同じ箇所にかかる体圧を分散させるケアによって実現。そのために必要となるのが適切なマットレス選びです。体が沈むマットレスを選ぶことで、骨突起部を中心として体とマットレスの接触部分が広くなり、これによって圧迫が除圧され、体圧が分散されるのです。
こうしたマットレスは、介護保険サービスでレンタルすることが可能で、「体圧分散マットレス」や「二層式エアマットレス」などのタイプがあります。これらのマットレスは、日本褥瘡学会でも推奨されており、褥瘡予防の選択肢としては見逃せないものだと言えそうです。
| 栄養 | 必要量 | 主な働き |
|---|---|---|
| たんぱく質 | 体重1kgに対して1.1~1.5kg/日 | 繊維芽細胞(せんいがさいぼう)、コラーゲンに必要 不足すると皮膚の強度・筋肉量が低下して骨が突出して褥瘡を起こしやすくなる |
| 水分 | 食品中の水分を除き1リットル/日 | 個々の細胞機能を正常に保つために必要 脱水を起こすと重篤なケースになる可能性も |
| 亜鉛 | 12~15m/日 上限値30mg/日 |
核酸やタンパク質合成に必要な酵素に含まれる 欠乏すると味覚異常が現れ、食欲不振を招く場合がある |
| 銅 | 2.5~5mg/日 上限値10mg/日 |
カルシウムと共に傷口のコラーゲン(肉芽細胞の構成要素)の網目を収縮させる酵素を維持させ、血液の合成材料にもなる |
| 鉄 | 15mg/日 上限値40mg/日 |
鉄は血液中で赤血球のヘモグロビンと結びついて組織への酵素の運搬を行う 鉄が不足すると赤血球が形成されないので酵素運搬能力が低下して皮膚や組織が弱くなる |
| カルシウム | 600mg/日 上限値2300mg/日 |
褥瘡の治癒過程でカルシウムが不足するとコラーゲンの形成がうまくいかず治癒のスピードが遅れてしまう |
| ビタミンA | コラーゲン合成と免疫機能に重要な役割をもち、上皮組織の正常な文化を調節する | |
| ビタミンC | 150~500mg | ビタミンAと共にコラーゲンの合成といった組織の修復に必要なビタミン 褥瘡を治癒するにはコラーゲンを新しく作るのにビタミンCが大量に必要 |
また、撥水(はっすい)クリームと呼ばれる入浴後の水をはじくクリームを塗って、乾燥を防ぐことも予防にとって効果的。このとき、マッサージによって皮膚に負担をかけないように注意する必要があります。スキンケアすることが重要である反面、骨突起部のマッサージは皮膚に負担をかけてしまうのです。
さらに、栄養面に関しても気にかける必要があります。褥瘡は皮膚が圧迫されて栄養が行き渡らないことで発生するため、圧迫軽減と同時に栄養を十分に取り、体を丈夫にしておくことも重要です。タンパク質を多く含む主菜、炭水化物の主食、そしてビタミンやミネラル用の副菜をバランス良く摂取することがポイントです。
今回は長時間の寝たきりなどから起こる褥瘡についてのニュースをピックアップ、その発生に係る要因や対策をみてきました。それらの重要性を鑑み、厚生労働省は次の介護報酬改定で褥瘡マネジメント加算を追加し、褥瘡の管理とケアに力を入れるわけです。褥瘡は最悪の場合、皮膚が壊死して細菌が体にまわり、命を奪いかねない重大な病気。細心の注意を払いながらケアを進めていかなければいけませんね。
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2020年9月7日 制定