4月から介護現場でも有給休暇の取得義務化
働き方改革の一環で”有休を年5日取得すること”が必要に
2018年6月に「働き方改革関連法」が成立、今年の4月1日から「年次有給休暇を年5日取得することを義務化」や「時間外労働(残業)の上限規制」などを盛り込んだ改正法が施行されます。介護業界を含めたすべての業種で適用されることになります。
初めて時間外労働に対して罰則のある上限が定められます。さらに有給休暇を取りづらい日本で「年5日の取得を強制する」という規定が設けられるのは、法改正としてはかなり重大なものなのです。
今回の法改正では、時間外労働について、月あたり45時間、年間360時間までが上限とされ、繁忙期など特別な事情があるケースでも、「月100時間未満・2~6ヵ月の平均で80時間(いずれも休日労働を含めての計算)、年720時間」という制限が設けられます。
また、年次有給休暇の取得については年10日以上発生している労働者が対象で、企業側は発生日から1年の間に、最低5日間の有休を消化させなければなりません。どちらも違反した場合、企業・労務担当者には罰則が適用されるため、強い法的拘束力があります。
重労働と呼ばれる介護業界においても、4月からの法改正は大きな影響を与えそうです。
日本は有休取得率が先進国最下位
まず、今回の改正によって年次有給休暇の所得日数は、正社員の場合、雇用されてから6ヵ月継続して勤務し、出勤義務のある日(全労働日)の8割以上を勤め上げたときに10日間発生します。
では、介護分野でも多いパート社員の場合はどうでしょうか。現行制度では「労働日数が週4日以下で週当たりの労働時間が30時間未満」のパート社員でも、週4日勤務であれば3年半、週3日勤務であれば5年半勤め上げた場合、10日間の年次有給休暇が発生します。
4月から施行される年次有給休暇5日取得の義務化は雇用形態に関係なく適用されるため、もし年次有給休暇の日数が10日以上になっていればパート社員であっても5日間の取得義務が発生するのです。
こうした制度が作られた背景には、日本における有給休暇の取得率が国際的にみて低いという事実があります。厚生労働省が公表している資料によると、日本人は有給休暇の取得率、取得日数ともに先進国では最低レベル。

また、「有給休暇の取得に罪悪感があるか」との質問に対して、「ある」と答えた日本人の割合は58%に上り、世界最多となりました。こうした現状を改善し、より働きやすい社会を作ろうというのが、今回の改正の狙いでもあるわけです。
「申請しても認めてもらえない」介護職員の4割が有休取れず
「自分だけ休むことはできない」という職場の雰囲気が
有給休暇の取得に消極的な傾向の強い日本ですが、介護業界でもその傾向は変わりません。
介護職員らの労働組合である日本介護クラフトユニオンが2018年に行った調査によると、介護職員の約4割が有給休暇について「なかなか取得できない」または「まったく取得できない」と答えています。

そして取得できない理由(複数回答可)としては、「人手不足」が64%、「仕事量が多くて取りにくい」が40%、「周囲の人に迷惑をかけるから取りにくい」が27%を占めていました。
中には「申請しても認めてもらえない」(3%)という回答もあり、有給休暇を取得する習慣が乏しい介護業界の実情を改めて浮き彫りにする調査結果となっています。
介護現場で有給休暇が取得しづらいということは、それだけ働く側・介護職員の権利が制限されているということです。
また実際の現場では「ほかの職員が有給休暇を取らずに働いているのに、自分だけ休むことはできない」という職場の雰囲気が作られているのかもしれません。有給休暇の取得状況の改善は、介護業界においても直近の課題です。
人手不足で有休が取れない介護業界の現実
前述の調査では、有給休暇を取得できない理由として最も多かった回答が、「人手不足」でした。現在、急速に進む高齢者の増加に介護職が追い付かず、介護業界では慢性的な人手不足が続いています。
介護労働安定センターが発表した『平成29年度介護労働実態調査』では、介護職員の過不足を問うアンケートに対して、「大いに不足」「不足」「やや不足」と答えた介護施設・事業所は全体の66.6%に及んでいました。
人材不足の原因として最も多かったのが「採用が困難」(88.5%)という回答で、さらに採用が困難な理由を尋ねたところ(複数回答)、「同業他社との人材獲得競争が激しい」(56.9%)、「他産業に比べて、労働条件等が良くない」(55.9%)などの回答が多くなっていました。
現場で深刻な人手不足が生じていると、「仕事に穴を開けるので、有給休暇を取得できない」という職場の雰囲気は強くならざるを得ないでしょう。
こうした状況が続けば、義務化を導入しても有給休暇が取得できず、違反に至ってしまうというケースも起きかねません。制度に従って職員に有給休暇を取得させるには、正社員を増やし、仕事量を分散させるなどの対策が急務です。
違反した事業者には懲役が科される場合も
従業員も企業側も「有休の取得義務化」を知らない
そもそも4月から施行される働き方改革関連法案について、「知らない」という企業、従業員も少なくありません。
昨年、民間企業が行った調査によれば、働く現役世代を対象に「有給休暇の取得義務化を知っていますか」と尋ねたところ、「知らない」と回答した人は51.5%と過半数を超えています。

また、今年1月に日本商工会議所が全国の中小企業2,881社を対象に、年次有給休暇の取得義務化を定めた法改正の内容や施行時期について質問をしたところ、「知らない」と回答した企業は従業員100人以下と50人以下の企業で約3割を占めました。
企業側・従業員側の両方において、制度の周知が進んでいないのです。
4月から施行される働き方改革関連法案では、ほかにも時間外労働や勤務間インターバルに関する規定が大きく変わります。
これら制度の周知、活用において、各企業・事業者側の責任は大きいのです。5日未満しか有給休暇をしていない従業員が1人でもいれば「法令違反」となり、罰則規定が適用されます。
介護事業者側にも義務化で大きな責任が生まれる
そのため4月以降、企業側は従業員の有給休暇取得状況に目を配らなければなりません。
企業に作成が義務付けられた「有給休暇管理簿」を使って、従業員に有給休暇を取得するよう促し、また取得の時期を指定していくことも必要です。取得時期ついては、企業側が一方的に決めるのではなく、従業員の希望を聞き、尊重するよう努力することが求められます。
なお、法令に違反すると以下の罰則が事業者側には科せられます。
- 年5日の年次有給休暇を取得させなかった場合⇒30万円以下の罰金
- 使用者(企業側)による時季指定(いつ取得するかの指定)を行う場合において、就業規則に記載していない場合⇒30万円以下の罰金
- 労働者の請求する時季に所定の年次有給休暇を与えなかった場合⇒6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金
人手不足が続くなか、対応に苦しむ介護施設・事業所が多いのが実情です。しかし、労働環境の問題を抱える介護現場でこそ有休義務化が必要ともいえるのです。こうした法令が施行される以上、今後は事業所側も働き方を変えていく必要があります。
今回は4月から施行される働き方改革関連法案、特に「年次有給休暇の取得義務化」について考えてきました。法律の施行によって介護業界にどのような影響が生じるのか、今後も注目を集めそうです。
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2020年9月7日 制定