介護業界の働き手が高齢化している
介護職員の平均年齢は46.2歳という調査結果が発表
現在、体力的にも精神的にもハードと言われる介護現場で働くスタッフの年齢が上昇しています。
介護職員の労働組合である「日本介護クラフトユニオン」が発表した就業状況のデータを見ると、平均年齢は月給制で46.2歳、時給制のスタッフでは51.4歳でした。介護をする側とされる側の年の差が、どんどん狭まってきているのです。
月給制の職員のうち、全体の約36%は50代以上。介護保険制度が導入された2000年から3年後の2003年時点で50代以上が約6%だったことと比較すると、およそ6倍もの増加率です。

一方、時給制の職員のうち、約半数は50代以上で、若手の30代以下の職員は約19%という低い数字をマークしています。このように、日本の介護の現場は増え続ける中高年と減り続ける若者職員という反比例の構図が深刻化しています。
これは一般の介護職員だけに限りません。施設介護職員やケアマネージャーの年齢の中央値は40歳前後、訪問介護職員に至っては50歳から60歳前後の職員が全体の大きな割合を占めています。
問題は、20代以下の若手職員の数が危機的に少ないという事実です。施設介護職員のうち、20代職員の割合は約10%となっています。
これでは中高年職員が介護サービスの中心として負担が大きいばかりでなく、段階的に経験を積ませてベテラン職員を育成する、将来的にリーダーや管理職を担える人材を育てる、といった長期的な人事管理も困難になってしまいます。
仕事量の多さに見合わない低賃金に不満が募っている
近年、介護業界の給与水準が他の業界と比べて低いことが、社会問題になっています。介護職員の高齢年化や若手職員が極めて少ない現状は、第一に賃金の低さ、そして賃金に釣り合わない仕事量の多さが大きく影響しているという指摘がされています。
2019年8月に日本介護クラフトユニオンから発表された介護職員への調査でも、「働くうえで不満がある」のは月給制の職員全体の8割にものぼります。
また、厚生労働省による介護業界の雇用状況に関する調査でも、介護の現場を離職した理由は職場の人間関係と結婚や出産・育児などが大きな割合を占めていることが明らかになりました。
人事管理の重要性に加えて、結婚にともなう職員の生活の変化、出産休暇、育児休暇、時短勤務など、職場全体で子育てをバックアップする体制の整備が、現場で求められています。
このまま状況が変わらなければ、一人の職員に課せられる仕事量は増え続けるばかりです。
日常的なシーンで職員全体のコミュニケーションを円滑に進める工夫や、職員ごとに異なる家庭の事情、生き方の変化に対応できる柔軟な支援が求められています。
連日の残業対応に有給休暇も取得しにくい状況が続く…
通常業務以外の記録作業などが介護職員の負担に
介護の現場で長く働いてくれる職員を増やすには、一人ひとりのワークライフバランスを意識した事業所運営が不可欠です。
働き方改革などが社会的に注目を集めている昨今でも、介護現場では人手不足が深刻化していて、一人あたりの業務量が増え続けています。
職員たちがより良い働き方ができるように大切なことは、まず介護現場で当たり前になっているこの業務量の多さを改善することです。
介護保険制度で求められるさまざまな記録作業や、事業所運営に必要な人事・経理関連などの雑務作業、次の担当者への引き継ぎ業務、イベント行事の準備や運営、利用者のトラブル対応など、直接的な介護業務以外に発生する雑務作業も膨大な負担となっています。
居宅ケアマネの日常を覗いてみると、始業前に事務作業を行ったり、認知症の方への突発的な対応が必要になったりと、通常業務に上乗せされる仕事によって、現場職員たちの処理能力はパンク状態に陥っています。
介護現場は人手不足で有給休暇も取りにくい
心身の休養やリフレッシュ、自己研鑽などに欠かせないのが、有給休暇制度。しかし、人手不足の介護業界では、取得しづらい状況が続いています。
現在、日本の有給休暇の取得率は先進国最下位で約50%。これは、正規雇用なら年間で最低10日間の有給休暇が付与されますが、そのうちで平均5日ほどしか取得できていないことになります。
もともと日本では、有給休暇を取得することに罪悪感があったり、他の職員からの批判的な目があったりと、休暇に対する考えが時代に追いついていない雰囲気が否めません。
日本介護クラフトユニオンが発表した有休取得に関する調査(複数回答)によると、月給制介護職員の約68%が「人手不足」、約40%が「仕事量が多くて取りにくい」ことを理由に、「有給休暇を取得できない」「取得しづらい」と回答しています。

さらに、3%の回答者が「申請しても認めてもらえない」と答えているように、介護業界の厳しい現実が数字でも明らかになりました。
労働法規によって定められた有給休暇が、介護の職場では「絵に描いた餅」になってしまっています。人材不足や業務量の増加により、有給休暇を消化する余裕すらない状況に陥っている現場も少なくありません。
労働環境の実態を見える化できるか
半数の施設が残業なしという調査結果は真実か
人手不足で残業が多いと思われがちな介護業界ですが、介護労働安定センターのデータによると「残業がない」と答えた正規雇用の介護職員は約半数。残業時間5時間未満の回答も全体の20%台でした。

サービス提供責任者のように施設の運営に大切な中間管理職の残業時間は、一般職員より多くはなっているものの、それでも約43%が残業なしと回答しています。
一般的にハードと考えられる介護業界のイメージに対して異なる結果が出ている背景には、業務時間内に終わらなかった仕事を時間外に行っていることが考えられます。つまり、サービス残業が発生しているわけです。
介護業界の待遇や職場環境に大きく影響するもの、それは介護報酬の改定です。
3年ごとに実施される介護報酬の改定にともない、人件費のための予算確保が難しく、増員はおろか人員整理の道へと進んでいます。結果、慢性的な人材不足となり、サービス残業せざるを得ない現場環境が生じている場合もあります。
実際、全労連介護・ヘルパーネットによる介護施設職員7,000人を対象とした調査データによると、回答時の1ヵ月間でサービス残業を実施していたのは約6割。その業務内容のトップは、記録作業が7割を占めていていました。
つまり、利用者への介護や介助の業務は人手不足の中でもやりくりができているケースが多い一方、さまざまな事務作業を業務時間外に行っているということです。
介護職員の約半数が残業なしというのは1つのデータに過ぎず、現実は見えない無償労働を現場職員が引き受けているのが実情です。
優良認証制度で働きやすい事業所を判別できる
人材不足を解決するには、まず十分な人員確保を行う必要があります。シンプルな話ではありますが、介護業界ではそれを許さない事業者が目立ちます。なぜなら、日本の介護の現場を担っている事業者は数こそ多いものの、その大半が超零細企業だからです。
厚生労働省の2017年のデータでは、訪問介護や通所介護、特別養護老人ホームや有料介護老人ホームなどの介護事業所の拠点数は、2万3,597施設と数多く設立されています。
しかし、1事業所あたりの従業者数(事務スタッフを除く)は、訪問介護で1拠点あたり常勤者は7.9名、通所介護では11.3名と、いずれも小規模であることがわかります。
また、有料介護老人ホームや、サービス付き高齢者向け住宅であっても、1拠点あたり25.7名ほどの規模となっています。
拠点ごとの従事者数からもわかるように、経営母体の企業規模が非常に小さいことは、わずかな利用者数の増減や介護報酬の変化に対応しづらいことを意味します。
サービスの質を維持しながら運営をするには、不安定な経営を続けざるを得ない実情が潜んでいるのです。
こうした事業所それぞれの問題を改善していくために、介護業界の人手不足解消を目指した新制度がスタートしています。それは、厚生労働省によって2019年度から始められた、介護事業所の優良認証制度です。
制度のポイントは、介護事業所の中で特に職場環境の改善や人材育成に力を入れている法人を公表すること。外部からの客観的評価を事業所の働きやすさの目安として発表して、介護業界を志す就職者や転職者を呼び込もうということが狙いです。
優良認定制度は自治体で行われている介護事業所の評価制度を参考にしています。今後、国レベルで統一した評価基準によって認定される事業所が増えることで、介護人材を増やし、離職率を減らせるきっかけになると期待されています。
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2020年9月7日 制定