在宅用介護食市場は拡大している
ユニバーサルデザインフードの生産量は前年比110%を記録
今月6月に、日本介護食品協議会が発表したプレスリリースによると、2018年のユニバーサルデザインフードの生産量は2万4,174トン、生産額は286億3,300万円であることがわかりました。
それぞれ前年対比で110.2%、114.9%の増加となっており、ともに2ケタ増と、順調な市場の拡大が見てとれます。

ユニバーサルデザインフードとは、日常の食事はもちろん、介護食としても使用することができる、すべての人が食べやすいように固さやとろみを配慮した商品のことです。
日本介護食品協議会では、このユニバーサルデザインフードについて、固さを「容易にかめる」「歯ぐきでつぶせる」「舌でつぶせる」「かまなくてよい」という4つの区分で分けています。
さらに、飲み込みやすいようにとろみの成分を調整した「とろみ調整」という区分を設けたうえで、規格に適合した商品にUDFマークを記載しています。
このユニバーサルデザインフードは、介護などの現場で口から食事を摂取することの重要性が認知されつつある近年、研究開発が進み、市場規模が拡大。
10年以上にわたって、生産量、生産額が2ケタ増を続けており、10年前の2009年と比較すると、ともに約4倍という目覚ましい伸びを見せています。
介護食とユニバーサルデザインフードの違い
介護の現場では、咀嚼する力や、嚥下能力が加齢などで失われた利用者を対象として、誤嚥や食欲の低下などを防止するために、通常のメニューを食べやすくアレンジした介護食が使われています。
この介護食は、咀嚼する力が弱くなった人向けに開発されたもので、食べ物を細かく刻んだ「きざみ食」、咀嚼と嚥下の両方の力が低下した人向けに、煮込んだり茹でたりしてやわらかい食感にした「軟菜食(ソフト食)」があります。
他にも、咀嚼能力や嚥下機能が低下している人向けに、ミキサーにかけて液体状にした「ミキサー食」、嚥下する力がかなり低下している人向けに、ミキサーにかけた食材をゼラチンや寒天などでゼリー状にした「嚥下食」などが存在しています。
美味しい食事の時間は、高齢者に毎日の楽しみとして生きる活力を与えるほか、認知機能や免疫力などに影響を与える低栄養状態を防止する効果もあります。
市販の介護食で介護の負担が軽減できる
背景には介護食作りへのストレスがある
介護食・医療職の販売会社である三嶋商事が、今年の1月から2月にかけて実施したインターネットアンケートによれば、介護食は介護者にとって大きな負担となっているようです。
調査の対象者は、在宅介護を行っている3,000人。
介助行為別のストレスを、7段階に分けて回答しています。
その結果、介護食作りに対して「かなりストレスを感じる」「ストレスを感じる」「ややストレスを感じる」と回答した人は、それぞれ14.5%、14.4%、19.2%の計48.1%に上りました。
つまり、半数に迫る在宅の介護者が、介護食作りについてストレスを抱えているということです。
ストレスを感じる度合いとしては、10項目中の第6位ですが、これより上位の項目は排泄や入浴、食事などの直接的な介助に限られ、間接的な介助の中では食事づくりが最もストレスを感じる項目となっています。
同調査ではさらに、介護食づくりにストレスを感じている人を対象に、その理由についてもアンケートを実施。
「介護食の献立を考える」が87.1%、「献立のレパートリーを増やす」「介護食作りに時間がかかる」がともに78.5%となり、ストレスを感じる上位3つの理由となっています。

この介護食づくりの負担を減少させることは、ストレスを感じやすい介護行為を減らせるということです。
現在、介護食にも利用できるユニバーサルデザインフードの需要が増加し、市場規模が拡大しているのには、こうした背景があると考えられます。
要介護度の高い人ほど介護食を利用している
また、超高齢社会に突入している日本においては、介護食にも使えるユニバーサルデザインフードの需要が量的な意味でも高まっています。
経腸栄養剤や介護食品、口腔ケア用品などの販売を手掛けるイーエヌ大塚製薬が、在宅介護を行っている1,000名を対象にした調査では、要介護度が高まるにつれ、通常の食事を摂れる割合が減ることが判明しました。
この調査では、要介護1から要介護5までの人を在宅で介護する人を、介護度ごとに200人ずつに分けてアンケートを実施。
全体の43%の人が、家族と同じ食事を摂っていることが判明しました。
しかし、要介護1の人のうち61.0%が通常の食事を摂っているのに対し、要介護5では17.0%に留まるなど、要介護度が上がるほど通常の食事を摂ることができなくなることが明らかになっています。
現在増え続けている要介護の高齢者たちの多くは、介護食を必要としているのです。
しかし、きざみ食やミキサー食のような介護食には、見た目や味が悪くなりがちという欠点があります。そのため、介護される高齢者が食事を拒否する例も多くあります。
同じアンケートの要介護1では、介護拒否の事例が11.5%であるのに対し、要介護5では28.0%にのぼることもわかっています。問題に対するひとつの対策として、ユニバーサルデザインフードの需要が増えている側面もあります。
食事方法で認知症を防げるという研究結果も
予防効果があるとされた「マインド食」とは?
ユニバーサルデザインフードや介護食と同じく、近年高齢者向けの食事として近年話題となっているのが「マインド食」です。
野菜や豆、果物を中心としながら、オリーブオイルや魚介類をあわせる地中海式食事法と、脂肪やコレステロールを抑えながら、ミネラルを多くとるというダッシュ食を組み合わせた食事法です。
もともとこれらの食事法は、地中海式が心疾患の予防、ダッシュ食が高血圧の予防に効果があるとされて、食べられてきました。
アメリカのラッシュ大学医療センターの研究グループは、それらを合わせたマインド食がアルツハイマー型認知症の予防効果があるという研究結果を2015年に発表しています。

具体的な食事方法としては、緑黄色野菜やナッツ類、ベリー類、豆類、魚や鶏肉、オリーブオイルやワインなど、認知症予防に効果的とされる食材を多く摂取しながら、バターや赤身の肉、お菓子やチーズなどの避けるべき食材を可能な限り少なくするというものです。
また、1日の塩分摂取量についても6グラム未満にすべきとしており、世界的にみても塩分を多く摂取している日本人は、この点にも気をつけたいところです。
栄養を適切に摂取することが病気予防につながる
消化機能の低下や噛む力の衰えによって、高齢者は低栄養状態に陥りがちです。
低栄養状態になると、免疫力の低下や低血糖による意識障害など、さまざまな身体の不調が引き起こされてしまいます。そのため、必要な栄養素をきちんと摂取することが、高齢者にとっては必要不可欠です。
しかし、要介護度が上がるほど食事の自由度は下がり、日々の食べるものを意識的に選択することが難しくなります。
しかし、ユニバーサルデザインフードを利用すれば、咀嚼や嚥下の身体機能が低下したときや、口腔内の病気を患ったときにも、食事をすることができます。
現在、各メーカーは、ユニバーサルデザインフードをおいしく食べられるように、食材そのものの食感を残しながらも食べやすくしたり、嚥下しやすくしたり、減塩と栄養面のバランスを考えたりと、さまざまな工夫を行っています。
今回ご説明したように、ユニバーサルデザインフードは、今後さらなる市場規模の拡大が予想されます。病気の予防や食事を通じた高齢者の健康維持のために、今まで以上に一般的な食事となっていくことが考えられます。
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2020年9月7日 制定