介護医療院は1年間で10倍にも増加した
全国で223施設が新たに開設された
介護医療院の施設数やベッド数が、全国で急速に増えています。
2018年6月末時点の施設数は21施設、ベッド数は1,400床だったものが、2019年4月26日に厚生労働省が発表したデータによると、2019年3月末時点の施設数は150施設、ベッド数は1万28床。
実に施設数で129増、ベッド数で8,628床増となっていて、それぞれ1年間で7倍に伸びました。

今回の介護医療院の増加は、「介護医療院の開設状況等」で明らかになったもの。詳細に見ていくと、2つのポイントに気づくことができます。
まず、京都府や千葉県といった大都市を抱える都道府県において、転換元が大規模な施設であること。京都府は466床の1施設が、千葉県では320床の1施設が介護医療院へと転換しています。
もうひとつは、福岡県のベッド数が931床で全国最多となっている点です。ちなみに、全国最多の施設数を誇るのは北海道でした。
一方、まだ介護医療院が未設置の自治体も6県(岩手県、宮城県、新潟県、滋賀県、和歌山県、宮崎県)あるなど、地域差が大きく現れています。
基本的に、介護医療院の整備に関する方針は、都道府県と市町村の協議によって決定します。
厚生労働省は、介護療養病床などからの転換を優先させつつ、新規参入に手を挙げる施設を引き出したい意向で、自治体はこうした厚生労働省の指示のもと、今後の対応を模索しているというのが現状です。
2018年に創設された介護医療院とは
ここ最近、耳にするようになった介護医療院とは、どういった介護施設なのでしょうか。
介護医療院は2018年4月に創設されたばかりで、それまでの介護施設より医療ケアに重点が置かれています。
なぜなら、より要介護度の高い利用者の支援を中心に設計されているからです。そのぶん、報酬水準も高めに設定されています。
基本的なコンセプトは、快適な生活施設をベースに、常に医療ケアが必要な介護度の高い人を受け入れて、看取りやターミナルケアのフォローがしっかりできることです。
背景として、2024年3月までに廃止される介護療養病床の受け皿になる転換先が必要であることから創設されました。最新の介護保険施設として、介護療養病床をはじめ転換老健からの介護医療院転換を想定しています。
また、介護医療院にはⅠ型とⅡ型があります。それぞれ人員や設備の基準が異なっていることが特徴です。
医師の配置基準では、Ⅰ型は利用者48名に対して医師1名以上、施設で3名以上。Ⅱ型は利用者100名に対して医師1名以上、施設で1名以上と大きな違いがあります。
薬剤師はⅠ型は利用者150名に対して薬剤師1名、2型は利用者300名に対して薬剤師1名の配置が決まっています。
看護職員は両型とも6:1ですが、介護職員はⅠ型5:1、Ⅱ型6:1です。
Ⅰ型のポイントは、医師の宿直が必要となる介護医療院も、併設している医療機関の宿直医が兼任できること。一方、Ⅱ型は、宿直医は不要で、人員基準が老健と同程度になっているのがポイントです。
国は介護と医療の連携を進めたい考え
介護医療院が設置された背景について
要介護者の支援では、介護と医療を切り離して考えることはできません。介護サービスを利用しながら医療ケアを合わせることで、要介護者本人や家族は安心して生活を送ることができます。
2001年、それまでの療養型病床群は、介護療養病床と医療療養病床に分かれていました。
入院患者が介護と医療、どちらのケアをより必要としているかを中心に両立してきた制度でしたが、実際にはサービス内容に大きな差が見られず、結果として、効率化をはかるために介護医療院へと転換される流れとなったのです。
国は、介護や医療のニーズの変化に対応するため、介護医療院に介護や医療といったシンプルな役割だけでなく、生活介助を含めた生活支援を前提に地域社会で利用者の生活の場となるような施設を目指しています。
つまり、介護施設と医療施設を融合させつつ、生活全般の介護支援から医療ケア、終末期医療の役割まで、ジャンルの垣根を越えた総合的な施設であることが期待されています。
そのため、介護医療院は「住まいとしての機能だけでなく介護サービスが受けられる場を、医療機関が手厚くサポートする」という新しいコンセプトの施設となりました。地域包括ケアシステムの考え方を具体化する、最新の機能を持ち合わせています。
長期的に利用者がさまざまな支援のアプローチを施設内で受けられることで、入居から終末期までを見越したサービスが集まること、そして通所リハはショートステイ、地域交流といった拠点の役割も期待されることなどが目新しい特徴です。
有床診療所の減少から介護医療院への転換が読み解ける
介護医療院の創設で、医療機関の対応に明らかな変化が生まれてきました。近年減少傾向の有床診療所が、介護医療院へと形態を転換するケースが増えています。
厚生労働省が毎月末に発表している「医療施設動態調査」を見ると、有床診療所の施設数は2020年1月に6,500ヵ所を割り込み、ベッド数は2019年10月に9万床を割り込むと予測されています。
中でも、療養病床のベッド数の減少はペースが早まっていて、2019年2月末の時点で前月より1,233床減少の31万5,578床。

そのような状況を受けて、介護医療院への転換が進んでいると考えられます。
有床診療所のうち、過疎地などの地域包括ケアシステムを支える入院受け入れを行ってきたタイプの病院は、厳しい経営環境にさらされています。
厚生労働省では、各地域の包括ケアシステムの維持のため、診療報酬の見直しを行うなど、地域包括ケア型有床診療所の支援に取り組んでいますが、現実には施設数、病床数ともに減少に歯止めがかからない状況です。
今後、有床診療所はそのまま存続するか、介護医療院への転換を実施するか、将来の病院経営を見据えた決断を迫られる事態に直面しています。
転換を促進する試みが実施されている
加算や特例措置があっても転換スピードは遅い
要介護者や高齢者が増え続けるにつれ、介護や医療の役割がますます必要な状況に対応できる社会に変化するため、介護医療院に大きな期待が寄せられています。
国も、時代に対応出来る介護医療院へのスムーズな転換ができるように、介護療養病床に働きかけています。
介護医療院が創設されたのは2018年度です。当初、それまで全国にあった約5.9万床の介護療養病床と約7.2万床の医療療養病床が2017年度末に廃止。そのまま合計約13.1万床の介護医療院へ転換されました。
もともと、介護保険で利用できる重度の要介護者に医療ケアとリハビリを行っていた介護療養病床。
ただ、多床室タイプが多いこと、娯楽が少ないこと、要介護度や症状の変化によって退所を求められる場合があるなど、生活の場として長期的に利用するにはデメリットが多く、安心した暮らしが難しい側面を持っていました。
そのため、介護、医療、生活支援、そして住まいという高齢者の暮らしの場になりえる場としてスタートした介護医療院の普及は、ますます高齢社会を迎えた日本にとって大切なテーマです。
とはいえ、実際には、介護療養病床の転換が思うように進んでいない現状が広がっています。
理由としては、重度の要介護認定者を中心にするⅠ型と比較的安定した利用者を受け入れるⅡ型で、設置基準に大きな差があるからです。
Ⅱ型への転換をしようとすると、それまでの介護療養病床から人員やスペースを老健レベルにまで改修しなければならず、病院経営に大きな負担となるのです。
政府も転換を促進するため、施設の改修に猶予を与える特例措置や、介護報酬の加算など、本格的な転換までの負担を軽減する対策を取っています。
転換にあたっての課題と必要な支援とは?
転換を促進する対策を行っている政府の狙いとは裏腹に、医療療養病床からの転換の場合、財源の負担が医療保険から市町村の介護保険へと移ることがスムーズな転換の大きな妨げになっています。
介護療養病床から転換する場合、同じ介護保険の財源内にとどまるため自治体の負担に影響はありません。
一方、医療療養病床が次々と転換を申請するとなれば、予算規模の小さな自治体ほど新たな負担の増大が自治体運営に直撃しかねません。
したがって、市町村によっては転換に消極的な自治体もあり、政府と自治体との思惑に大きな開きが出ているのが現実といえます。
また、自治体の保険料負担の増大のほかにも、介護医療院への転換の猶予期間が2024年3月までに設定されていることも理由として考えられます。
2018年度から実際に介護療養病床から転換した施設の具体的な運営データをみて、転換すべき期限までにじっくり検討したいという病院側の慎重な姿勢も見てとれます。
転換する姿勢を見せている場合でも、設置基準をクリアするための大規模な施設改修の費用や時間をどうするか、スタッフの意向をどうまとめるかなど、現場レベルで解決しなければならないことは山積みだからです。
下記の図は、「全国老人保健施設協会」がすでに介護医療院に移行した施設に対して調査した「介護医療院開設に当たって必要な支援策」の調査結果です。
ほかにも、政府の現在の転換促進策の緩和や、移行定着支援加算の期間延長、転換申請にともなう手続きの簡素化など、医療機関の立場に立った追加の対策が必要であると言われています。
このように、地域に開かれた交流の拠点でもある介護医療院への転換を促進することで、より地域に密着した医療と介護のケアが今後可能となってくるでしょう。
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2020年9月7日 制定