難病ALSへの関心が高まっている理由
「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」は筋肉が衰えていく難病
10月1日、テレビで人気キャラクターの声を担当する声優・津久井教生さんが、医師から難病である「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」との診断を受けたことを公表しました。
現在、発声には問題ないものの、自力で歩くことは難しく、移動には杖と車椅子が必要な状態だといいます。
また、7月に行われた参院選では、ALS患者である船後靖彦さんが当選し、注目を集めました。このように現在日本では、ALSに対して社会的な関心が高まりつつあります。
では、ALSとはそもそもどのような病気なのでしょうか。
ALSを発症すると、手足やのど、舌、呼吸するために必要な筋肉が次第にやせて、力が失われるという症状が現れます。
これは筋肉そのものに問題が生じているのではなく、筋肉を動かし、運動をつかさどる神経である「運動ニューロン」に障害が発生していることが原因です。
運動ニューロンに障害が起こると、脳から「体を動かせ」という命令が伝達されません。そのため、思うように体を動かすことができず、次第に筋肉がやせ衰えていくのです。
なぜALSが発症するのかについては、神経の老化と関連しているとされています。しかし、現代医学では未解明のままです。
現状でのALSへの治療法は、症状を軽くする対症療法と、進行を遅らせる薬の投与が中心です。
ALS患者は40年で約30倍に増加している
現在、ALS患者数は国内で増加傾向にあります。厚生労働省が行った調査によると、1975年当時の患者数は416人だったのに対して、2005年には7,302人、2014年には9,950人と年々増え続けているのが現状です。
1975年から2014年までの約40年間の間だけで、患者数は約30倍も増えています。

「難病情報センター」のホームページによると、1年間で新たにALSに罹患する人は、人口10万人当たり約1~2.5人。
罹患率は男性の方が女性よりも1.2~1.3倍高いという特徴があります。
では、なぜこれほどALSを発症する人が増えてきたのでしょうか。その要因のひとつとして、ALSは高齢者がかかりやすい病気であることが挙げられます。
この病気は基本的にどの年齢層においても発症のリスクはありますが、最もかかりやすいのは高齢者世代であることがデータにより明らかにされています。
昔は全体的な平均寿命が短かったために発症する人は少数でした。しかし高齢化が急速に進展している現在では、ALSの患者数もまた増え続けているのです。
ALSが60代以降で急増している
受け入れできる介護施設は3割しかない
厚生労働省が2005年に行った難治性疾患克服研究事業の報告書によると、日本におけるALS発症年齢は50~74歳の年齢層に集中。男女ともに発症のピークは65~69歳となっています。

ALSが進行すると、将来的に寝たきりになる可能性が極めて高いといわれています。
さらに経管栄養(胃ろう)や人口呼吸器に頼らなくては生活が難しいため、手厚いケアを24時間体制で行える生活環境が必要です。
高齢者の場合、自宅でのケアが難しいときは、要介護状態でも受け入れてくれる介護施設へ入所するという選択肢があります。
しかし実際のところ、ALS患者を受け入れている介護施設は全国的にまだ多くありません。
胃ろうや吸引程度の処置で済むならば対応できる施設は多くあります。しかし、人工呼吸器がいる患者の場合は高度な医療的処置を必要とします。
そのため、看護師数が不十分な介護施設では対応しきれないのです。
このような事情があり、ALS患者の受け入れができる介護施設は、全施設数の3割弱にとどまっています。
高齢の方で、もし病院の診察によりALSを発症していることがわかったら、早めに対応方法を考えておくことが大事です。
「重度訪問介護」サービスを利用するALS患者はゼロ?
ALS患者が自宅で生活する場合、障害者総合支援法の重度訪問介護サービスを利用できます。しかし近年、これらサービスの運用方法のあり方を問題視する声が高まっています。
例えば京都府では、自治体間で重度訪問介護を受けている人数、サービスを受けている時間に大きな格差が生じています。
2017年度、舞鶴市と綾部市では利用者ゼロで誰にもサービスを支給していないのに対して、京都市では324人に支給され、24時間体制で切れ目なくヘルパーの派遣を受けていました。
府内の15市における重度訪問介護の支給実績をみると、12の自治体で利用者数が10人以下で、ほとんど普及していないのです。
もともと重度訪問介護は、ヘルパーが連続で8時間以上寄り添って生活をサポートすることを想定したサービス。
ところが京丹後市などでは一人当たりの支給時間は「月26時間」にとどまっていて、京都市の「月284時間」とは大きな差があります。
重度訪問介護の利用対象にはALS患者も含まれているため、こうした格差はそのままALS患者に対するサポートの差にもつながるわけです。
確かに2012年の「社会福祉士及び介護福祉士法」の改正によって、たんの吸引などの医療行為が看護師以外にも認められるようになるなど、ALS患者を取り巻く環境は少しずつ改善しつつあります。
しかし、まだまだ問題は山積しているのが現状なのです。
65歳を超えると障害者は介護サービスを打ち切られる事態も
介護サービスの自己負担額が増えるケースがある
また、ALSなどの重度障害を持った人が65歳を境に高齢者に制度上移行することで、現場には混乱も起きています。

現行制度では、障害福祉サービスを受けている人が65歳になると、介護保険サービスに切り替えるよう自治体から要請されます。
しかし、障害福祉と高齢者介護では異なる点も多く、64歳まで利用していたのと同じサービスを利用できなくなるなど、障害福祉と介護保険の違いによる問題が少なからず生じているのです。
こうした65歳での切り替え問題が起こるのは、障害者に福祉サービスを提供する障害者総合支援法において、「介護保険法において同様のサービスがある場合は、介護保険を優先する」と規定している点に原因があります。
さらに負担面での問題もあります。制度上、介護保険によって64歳まで受けていたサービスの質・量を維持できないという場合、不足分は自治体の判断により障害福祉サービスを上乗せできるとされています。
しかし、原則1割負担が発生する介護保険の料金が、障害福祉サービスに比べて高くなってしまうのです。
こうした65歳になると直面する障害者の負担増も、制度切り替えにより生じる大きな問題となっています。
介護保険法と障害者総合支援法の壁を解消すべき
政府は障害者や家族団体からの批判を受け、近年、制度の改正に向け議論を進めてきました。
2018年4月から、65歳になるまでの5年間において介護保険に相当する障害福祉サービスの支給を受けていた低所得者に対して、障害福祉サービスと介護保険の自己負担の差額を、償還方式で支払える制度が施行されました。
さらに障害者と高齢者の双方に対して行う訪問サービス、通所サービスを、同じ拠点で提供できるようにする「共生型サービス」も2017年に国会に提出され、昨年4月から新たにスタートしました。
しかし対応すべき課題はまだ多く、就労中は「重度訪問介護」の補助を受けられないという問題も議論されています。
今後は、より利用者のニーズに応えた介護サービスの整備を行っていく必要があるでしょう。
今回は、ALSの問題について考えてきました。高齢のALS患者への支援を充実させるためには、介護保険法と障害者総合支援法の間にある壁を解消することが不可欠。
両制度の壁をなくし、「65歳問題」をどのように解決していくかを巡っては、今後も議論が続きそうです。
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2020年9月7日 制定