55%の事業者が「配分方法」に苦慮している実態が明らかに
導入された処遇改善加算に早くも問題!
2019年10月から、介護報酬に「介護職員等特定処遇改善加算」が創設されました。この特定処遇改善加算には、消費税率8%から10%への引き上げによる増税分の一部が予算として充てられています。
今回の加算について、独立行政法人・福祉医療機構が、介護施設や事業所を運営している4,872法人を対象にした調査を実施。
調査結果によると、創設された特定処遇改善加算を算定すると回答した法人のうち、開始時期いついては、2019年10月からと回答した事業者が全体の76.5%と、多くの法人が加算を実施する流れが起きています。
しかし、実際に特定処遇改善加算を導入するにあたっては、法人にとって難しい現状があることも調査からは明らかになってきています。55.5%の法人が「介護職員内の配分方法の決定」が難しいと捉えています。
介護職員の給与水準引き上げに大きく貢献すると期待される特定処遇改善加算。一見、法人にも介護職員にも嬉しいニュースと思われる一方で、その対応に苦慮する法人が半数以上に上っています。
「増収分の配分方法をどうするか」「どうやって職場内の賃金バランスを図ればいいか」など、導入直後にもかかわらず、介護事業所にとって頭の痛い問題になっているというのです。

さらに、52.3%が「その他の職員への配分の検討」と答えるほか、加算の対象にならない職員への賃金バランスの配慮も苦慮する声が上がっています。
10月からはじまった、特定処遇改善加算とは
そもそも特定処遇改善加算とはどういう介護報酬の仕組みなのでしょうか。
特定処遇改善加算は消費税率引き上げと同じ2019年10月1日からスタートしました。その目的は、主にリーダー級の介護福祉士らの賃金アップを目指すものです。
特定処遇改善加算は、「月額平均8万円の賃上げとなる職員」「賃上げ後に年収見込額が440万円を超える職員」のいずれかを設定するのが原則です。
しかし、実際の設定基準は法人に委ねられているのが特徴です。これは、法人ごとに職員の職種の構成割合が異なるので、現場に裁量を持たせる運用ルールとなっているためです。これが職員への算定を行う「現場の混乱」の原因になっています。
また、申請に当たっては賃金改善計画の作成が必要です。「賃金改善の内容や改善を実施する期間」「改善する賃金項目や方法」などを記載して自治体に提出しなければなりません。
このように、それぞれの自主的に法人が賃金配分の方法について基準を設定するのが今回の特別処遇改善加算。
事業所に柔軟な裁量を持たせた結果、もともとリーダー級の介護福祉士のみを想定していた厚生労働省の意図とはかなりそれる制度となったと指摘する声あります。
「事業者の裁量」で平均改善額は6万円減少
「配分バランス」で現場が混乱
先述したように、配分対象となる職員は次の3つに分類されます。
- リーダー級グループ(経験・技能のある介護職員)
- その他の介護士グループ
- 介護士以外の職種グループ
特別処遇改善加算の基本ルールは、①のリーダー級グループの賃上げ額を、②や③と比べて2倍以上にするというものでした。合わせて、③介護士以外の職種グループの賃上げ額は、②その他の介護グループの2分の1を上回らないようにしていました。
その基本ルールに事業者の裁量がプラスされています。それが、「リーダー級グループ2 以上:その他の介護士グループ1:介護士以外の職種0.5 以下」の基準です。
この比率を満たせば、それぞれの職員への配分額や配分基準は事業所がかなり自由に裁量できるようになりました。
とくに、①リーダー級グループの職員の基準は勤続10年となっていますが、この年数は事業所の裁量で調整することも可能です。
しかも、①リーダー級グループの職員が多い事業所ほど、②や③のスタッフへの配分額も増えるようになっています。
福祉医療機構の調査でもこうしたポイントが「介護職員内の配分方法の決定(55.5%)」「その他の職員への配分の検討(52.3%)」というように、配分基準をどう設定するかが難しいと感じている法人が5割を超しているのです。
平均改善額はリーダー級で約2万円と「当初の8万円」から減少
リーダー級グループの職員で、月額平均8万円もの給与アップをベースに設計された特定処遇改善加算。実際はどのような改善状況になっているのでしょうか。
前出の調査結果では、一人当たりの賃金改善所要見込額は平均で、
- リーダー級グループ(経験・技能のある介護職員):月額約2万円
- その他の介護士グループ:約1万円
- 介護士以外の職種グループ:約5,000円
となっていて、全体の約7割の事業所が厚生労働省による「2:1:0.5」の配分に収まっています。
つまり、当初①リーダー級グループの職員のみを対象にしていた特別処遇改善加算は、勤続年数の設定などの基準が緩やかになっり、事業者の裁量で3つのすべてのグループに国の示した割合で配分されることとなったのです。
しかし、一方で、原則であったはずの月額8万円給与アップを達成した職員は、①リーダー級グループの中でも3.2%という低い数字に留まり、平均でも2万円と計画額を大きく下回りました。

また、3つのグループそれぞれの分配状況は、リーダー級グループでは45.2%。その他の介護士グループでは42.2%、介護士以外の職種グループでも48.2%にも上りました。
職員間の改善額に差を設けることなく、横並びに配分した法人が多かったことがわかります。
今後は事業者間の格差拡大の恐れも
加算足りず「持ち出す予定」と答えた法人は35.4%
職員ができるだけ不満を抱かず、公平感のある賃金改善のためには、3つのグループのバランス、職員一人ひとりの状況の把握など、さまざまな配慮が必要です。
そのため、調査結果によると、事業所によって法人持ち出しの実施を検討しており、特定処遇改善加算でカバーできない職種間の賃金改善差を別途で埋める予定のある法人が35.4%にも上ります。

とくに今回の特別処遇改善加算は①リーダー級グループの職員にスポットが当てられている分、加算による配分があまり見込めない③介護士以外の職種グループへの持ち出しが62.5%、そもそも対象外の職員への持ち出しも57.1%で予定があるとの回答がありました。
なかでも、事業所が法人の持ち出しをしてでも賃金改善をしていきたい職員にケアマネージャーがあります。
ケアマネージャーは介護職の中でも上位資格という位置づけがあるものの、加算対象となった①グループと給与面で大きな格差が開く可能性が高いのが問題視されています。
深刻さを増す大手と小規模施設との格差
大規模な法人であれば特定処遇改善加算を算定することはもちろん、裁量を柔軟にして対象職員を広げることもできます。また、法人持ち出しでフォローするといった奥の手を使うことも可能でしょう。
しかし、小規模な事業者になるほど、もともとの給与ベースが低い水準であるため、算定の申請そのものも難しい状況に陥っています。
実際、調査結果では特定処遇改善加算の算定予定がないと答えた7.2%のうち、小規模な運営を続けている事業所では50%が算定を予定していないと回答していることもわかってきています。
とくに、収益規模の小さな法人の代表例に通所介護事業所があります。
利用料や利用者の規模が小さいケースが多い通所介護では、加算額自体が満足に見込めません。
そのため、月8万円の賃上げ、または年収440万円といった要件をクリアするだけの賃金改善は非常に厳しい状況にあります。
今回の特別処遇改善加算の導入によって、今後、事業所ごとに運営状況に応じて賃金改善を実現して加算を継続していく事業者と、そもそも算定自体が困難な事業者に両極化していく不安が大きくなっています。
さらに、特別処遇改善加算がリーダー級グループの職員の賃上げをメインに進められていることが、同一法人内での職員の賃金格差や待遇格差を助長すると指摘する専門家もいます。
加算による賃金配分のバランスを巡っては今後も議論が続きそうです。
みんなのコメント
ニックネームをご登録いただければニックネームの表示になります。
投稿を行った場合、
ガイドラインに同意したものとみなします。
みんなのコメント 156件
投稿ガイドライン
コミュニティおよびコメント欄は、コミュニティや記事を介してユーザーが自分の意見を述べたり、ユーザー同士で議論することで、見識を深めることを目的としています。トピックスやコメントは誰でも自由に投稿・閲覧することができますが、ルールや目的に沿わない投稿については削除される場合もあります。利用目的をよく理解し、ルールを守ってご活用ください。
書き込まれたコメントは当社の判断により、違法行為につながる投稿や公序良俗に反する投稿、差別や人権侵害などを助長する投稿については即座に排除されたり、表示を保留されたりすることがあります。また、いわゆる「荒らし」に相当すると判断された投稿についても削除される場合があります。なお、コメントシステムの仕様や機能は、ユーザーに事前に通知することなく、裁量により変更されたり、中断または停止されることがあります。なお、削除理由については当社は開示する義務を一切負いません。
ユーザーが投稿したコメントに関する著作権は、投稿を行ったユーザーに帰属します。なお、コメントが投稿されたことをもって、ユーザーは当社に対して、投稿したコメントを当社が日本の国内外で無償かつ非独占的に利用する権利を期限の定めなく許諾(第三者へ許諾する権利を含みます)することに同意されたものとします。また、ユーザーは、当社および当社の指定する第三者に対し、投稿したコメントについて著作者人格権を行使しないことに同意されたものとします。
当社が必要と判断した場合には、ユーザーの承諾なしに本ガイドラインを変更することができるものとします。
以下のメールアドレスにお問い合わせください。
info@minnanokaigo.com
当社はユーザー間もしくはユーザーと第三者間とのトラブル、およびその他の損害について一切の責任を負いません。
2020年9月7日 制定