9月のインフルエンザ患者数は昨年同時期の約9倍に
沖縄での流行が感染拡大の原因のひとつ
今年もインフルエンザが流行する時期が近づいてきました。例年だと冬の12月~1月頃にインフルエンザの患者数はピークに達しますが、2019年は初秋の9月から感染者数が増加しています。
厚生労働省の発表によると、9月9日~15日の1週間だけで、全国の定点医療機関(約5,000ヵ所)の患者数は前年同時期の8.7倍にもなりました。今年の流行規模は、例年よりも大きくなる恐れがあります。
なぜ今年のインフルエンザは、例年より早くから流行の兆しを見せているのでしょうか。
要因のひとつとして考えられるのが、沖縄県における発生数の急増です。
沖縄県では冬場に例年よりも感染者が少なかった場合、インフルエンザウイルスに感染しなかった人(免疫がない人)が多くなります。
その後、温かくなっても継続して発症者が出続け、流行が維持されることで夏場でも発生するケースがあります。
実際、今年の沖縄県では、子どもが夏休みに入る頃からインフルエンザが流行り始めていました。そのため、旅行者が現地からウイルスを持ち帰り、それが本州で広まって、9月からの全国的な患者数の増加につながったことが考えられます。
以下のグラフは、今年10月30日時点での基幹定点におけるインフルエンザ患者入院報告数です。

年齢別では0歳が3例、1~9歳が19例、10代が6例、30代が2例、40代が2例、50代が3例、60代が1例、70代が13例、80歳以上が19例と、高齢者が圧倒的に多くなっています。
昨年は老人ホームの集団感染で74が感染、7名が死亡
昨シーズン(2018年~2019年)は、インフルエンザ感染による高齢者の死亡が各地で報告されました。
例えば兵庫県淡路市では、今年の1月21日に老人ホーム(定員は168人、1月11日時点における入居者数は165人)で入居者と職員の計74人がインフルエンザに集団感染し、そのうち71~99歳の入居者7人が発症後に亡くなるというケースが発生しています。
この老人ホームは3階建てとなっていて、亡くなった7人は全員が2階で生活していました。県洲本健康福祉事務所によれば、1月8日に職員1人が最初に発症し、その3日後の11日には1人目の入居者が亡くなり、21日に7人目が亡くなったといいます。
同施設では、感染した職員の出勤停止、入居者の外出禁止・面会制限などの対策に取り組んでいたようですが、結果として、施設内でのインフルエンザの感染・拡大は防げなかったのです。
先述の通り、今シーズン(2019~2020年)は昨シーズンよりも流行が早く、感染者数の規模も大きくなる恐れがあります。高齢者ご自身はもちろん、高齢者と同居している方も、インフルエンザの感染リスクを理解し、対策を考えておくことが大切です。
70歳以上の高齢者は死亡リスクが若い人の30倍である
高齢者はインフルエンザが重症化しやすく入院率も高い
高齢者はインフルエンザに感染しやすく、死亡するリスクも高くなっています。
大阪大学医学部付属病院が発行している資料によると、インフルエンザによる入院患者数は人口1万人あたり1.24人。年齢階層別にみると高齢者が重症化しやすく、入院率が高くなる傾向がみられます。
特に発症後に死亡する割合は世代間に大きな差があります。
厚生労働省の『今般の新型インフルエンザ((A/H1N1)対策について)』によると、インフルエンザに70歳以上の高齢者が罹患した場合の死亡率は0.03%で、これは全体平均である0.001%の30倍です。
若い世代であれば感染しても免疫力があるので、病院で診察を受けて薬を処方してもらい、自宅で療養すれば重症化は避けやすいでしょう。しかし高齢者は免疫力が落ちているため症状が重くなりやすく、合併症を引き起こす恐れもあります。
インフルエンザというと、罹患すると危険なのは乳幼児と考えられることも多いですが、重症化率・死亡率などのデータを見る限り、60代~70代の方がはるかにリスクは大きいのです。
合併症などによるインフルエンザ関連死は毎年1万人以上
毎年、日本でインフルエンザに感染する患者数は推定1,000万~1,500万人と言われています。
厚生労働省の「人口動態調査」によると、2017年までの過去5年間、インフルエンザを直接的な原因とする死亡者数は多い年で2,569人、少ない年でも1,130人と1,000人を超えていました。

また、インフルエンザを直接的な死因とするケースだけでなく、間接的な死因とするケース(別の病気を併発して亡くなった場合など)も含めた「インフルエンザ関連死」の総数は、毎年約1万人に上ります。
特に免疫力の低い高齢者の場合、インフルエンザを原因とする合併症のリスクは高いです。
中でも「肺炎」は生死にかかわる合併症であり、インフルエンザに関連した死亡原因の約6割を占めるとのデータもあります。呼吸器の慢性疾患や糖尿病といった持病があると肺炎のリスクはさらに高くなるため、該当する人は注意が必要です。
さらに近年ではトロント大学などの研究により、高齢者はインフルエンザによって心筋梗塞を発症しやすいこともわかってきました。こうした合併症を防ぐためには、まずは感染そのものを防ぐことが、高齢者にとって最重要事項です。
高齢者をインフルエンザの猛威から守るために
予防接種によって集団感染を防ぐことができる
高齢者をインフルエンザの感染から守るには、早めの予防接種が大切です。
先述した、昨シーズンに集団感染を起こした兵庫県の老人ホームは、県から入居者に抗インフルエンザ薬の予防投与を行うよう助言されたものの、実際に投与したのは助言を受けてから1週間以上経過してからでした。
さらに、入居者と職員の計26人がインフルエンザに感染し、入居者の男性1人が亡くなった京都府の介護老人保健施設では、入居者・職員に予防接種を行ったのは男性が亡くなった後だったといいます。
死亡者を出したこれらの施設では、インフルエンザへの予防対策の遅れが、感染拡大をもたらした大きな要因であると考えられるわけです。
日本感染症学会の提言においては、入院患者などを対象とする抗インフルエンザ薬の予防投与は、できるだけ早期に行うよう呼び掛けています。
特に老人ホームの場合、入居者同士の交流が病院よりも活発なので、集団感染のリスクはより高いです。そのため多くの有識者・専門家が、「高齢者施設では入居者全員の予防接種を、早期かつ積極的に実施する必要がある」と指摘しています。
大流行を見通し、過去3年より多い量のワクチンが供給された
今シーズン(2019~2020年)、厚生労働省は2019年10月4日の事務連絡で、インフルエンザワクチンの供給について各都道府県に情報を発信しました。それによると、2019年の供給見込み量(9月30日時点)は、過去3年で最も多くなっています。

今年は、定点当たりの発症報告数が例年よりも多いことから、インフルエンザワクチンの製造販売関連団体に対して、納入を迅速に行うよう努めることを同省は依頼しています。
※図の挿入なお、季節性インフルエンザワクチンの予防効果が期待できるのは、通常、接種してから(13歳未満の売は2回接種した)2週間後~5カ月程度です。
したがって、10月に接種した人の場合、3月になると効き目が弱まっていることも考えられるので注意が必要です。
また、インフルエンザワクチンはシーズンごとに流行が予想されるウイルスに合わせて作られているため、十分な免疫を保つためには毎年欠かさずに予防接種を受けなければなりません。
さらに基本的な予防策として、外出する際はマスクを着用し、人混みの中に行って帰宅したら必ずうがいと手洗いを入念に行いましょう。
今回は今シーズンのインフルエンザについて考えてきました。これからの本格的なインフルエンザ流行シーズンを前に、国、病院や施設による昨年の教訓を生かした対応が急がれています。
高齢者のインフルエンザ感染のリスクを考え、事前の予防対策を徹底することが大切です。
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2020年9月7日 制定