管理者を主任ケアマネに限定するルールが猶予された
猶予機関は2026年度までに
12月12日、「居宅介護支援事業所の管理者を主任ケアマネージャーに限る」としていた厚生労働省の経過措置が正式に延長されました。
これには、以前より、居宅介護支援事業所の運営基準を厳格化する動きがあったことが関係しています。
もともと2020年度末を過ぎると「主任ケアマネのみ管理者になれる」という運用ルールに切り替わる予定でしたが、2026年度末まで一時的に適用を猶予することが決定したのです。
決定した猶予のポイントは、次の2つです。
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延長できるのは、2020年度末(2021年3月31日)の時点で管理者が主任ケアマネージャーの資格保有者ではない事業所のみ |
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延長した事業所の猶予期間は2026年度末までの6年間で、延長した時点の管理者が継続して勤務していること |
裏を返すと、2021年度(2021年4月1日)から、新規の管理者は、主任ケアマネージャーの資格保有者しか仕事に就けないことになったわけです。
ちなみに、2016年度の調査によると、管理者で主任ケアマネージャーの資格を保有している割合は44.9%。半数以上は資格を持っていない状況でした。

なぜ管理者に主任ケアマネの資格を求める流れになったのか、見ていきましょう。
厳格化の背景は「質の向上」にある
そもそも主任ケアマネージャーとは、介護保険サービスに基づいてケアプランを作成するケアマネージャーの上位資格です。
一般のケアマネージャーの指導や相談をしながら、介護保険サービスの要となるケアプランの質向上を目指します。
活躍の場は、ケアマネージャーが在籍する居宅介護支援事業所をはじめ介護老人福祉施設、地域包括支援センターなどさまざま。
なお、特定事業所加算の事業所に配置義務があるため、専門性が高く、比較的大きな規模で運営している事業所では、必ず主任ケアマネージャーが勤務しています。
主任ケアマネージャーになるには、ケアマネージャーとして一定の経験を積んだ後、各都道府県で行われる研修を受講する必要があります。
自治体によって、受験資格や研修内容が多少異なるのがポイントです。
今回、議論の要点になっている、管理者に主任ケアマネージャーの資格を求めることの背景には、訪問介護のサービスの質を向上するという目的があります。
管理者には、スタッフ全体の指導や育成への責任が求められます。良質な人材が育ってこそ、ケアマネージャーによるケアプランはさらに精度が高いものになるからです。
その点、主任ケアマネージャーの資格取得に必要な研修では、受講者たちは、現場のケアマネージャーへの指導や育成方法や人事管理などの人材マネジメント全般を学びます。
そのため、主任ケアマネージャーが管理者になればよりよいサービスの提供が可能になると、厚生労働省は捉えています。
有資格者が確保できず閉鎖になる事業所も
主任ケアマネには人材育成を促進する効果がある
管理者を主任ケアマネージャーとする動きがある一方で、そもそも主任ケアマネージャーの資格自体が必要かといった議論も根強く残っています。
「研修を受講するための条件が厳しい」「資格があるからといって質の高い指導力や育成力が伴うわけではない」「加算のための資格ではないか」など、ケアマネージャーとしてのノウハウや経験の積み重ねで、主任ケアマネージャーの役割も果たせるのではないかといった見方です。
しかし、厚生労働省が行った事業所に対する調査によると、管理者が主任ケアマネージャーでない事業所(43.7%)より、資格を持つ管理者である事業所(51.2%)のほうが、事業所内で定期的に事例検討会や相談時間を設けたり、同行訪問で指導していたりする割合が高いことがわかりました。
具体的には、定例の事例検討会の実施について、主任ケアマネージャーがいる施設は62.6%であるのに対して、いない施設は28.4%にとどまっています。
このほか、定期的に相談時間を設けている事業所の割合も主任ケアマネがいる施設で41.5%、対していない施設は27.7%、同行訪問ではいる施設42.1%、いない施設19.9%というように、大幅に差が出ていました。
つまり、主任ケアマネージャーの資格不要論も耳にするなか、実際のデータでは主任ケアマネージャーが管理者で活躍している現場のほうが、盛んに人材育成が行われているのがわかります。
問題は、今回の経過措置の延長を実施してもなお、主任ケアマネージャーの資格取得には高いハードルが残されている点です。
有資格者は1万人以上不足している
主任ケアマネージャーになるには、ケアマネージャーとしての一定の業務経験と研修の受講が必要です。
そのため、事業所で主任ケアマネージャーを配置するには時間がかかります。そういった状況をふまえて、当初2021年度末までの猶予が設定されていました。
管理者が主任ケアマネージャーではない事業所が約半数もある現状では、突然主任ケアマネージャーの配置ルールと徹底してしまうと、ケアマネ事業所の相次ぐ閉鎖を招きかねないためです。
実際に、2018年からの猶予期間3年で、主任ケアマネージャーの配置はどこまで進められるのでしょうか。
厚生労働省が2018年度に行われた介護報酬改定の影響を調査した結果によると、「3年間の経過措置をもってしても、2021年3月までに主任ケアマネージャーを配置できない」と回答したケアマネ事業所は、10.1%にものぼっています。

主任ケアマネージャーでない管理者が研修を修了できない(13.4%)、修了できるかわからない(7.7%)と回答していて、当初の3年間の経過措置では全体の約2割を超える事業所で、配置基準のクリアが難しい状況となっていました。
もともと厚生労働省が経過期間を3年間に設定したのは、当時の主任ケアマネージャーの資格保有者数と今後の取得率の伸びを推定した結果からでした。
2016年時点で必要なケアマネの人数は3万9,866人。しかし、資格保有者は2万8,463人にとどまっていて主任ケアマネージャーは大幅に不足していました。
ただ、2015年には1年間で4,402人が研修を修了、一気に主任ケアマネージャー数が増加したこともあって、3年あれば事業所は配置対応できると見込んだのです。
現実には、主任ケアマネージャーの十分な配置が難しいことが明らかとなったため、経過措置がさらに6年間継続されることとなりました。
主任ケアマネの研修における課題は地域差など
研修受講費の地域差は3倍という事実も
厚生労働省主導で実施されている、管理者の主任ケアマネージャー資格要件。
一方で、主任ケアマネージャーの研修制度は各都道府県によって違いがあり、全国的に統一されていないことが、資格保有者の増加が伸び悩んでいる状況を生み出しています。
まず、主任ケアマネージャーになるための研修を受講するには、以下の4つのハードルをクリアしなければなりません。
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質の高いケアマネジメントができていること |
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ケアマネージャーの資格を持っていること |
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専門研修課程または介護支援専門員の更新研修を修了していること |
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ケアマネージャーとして現場で就業していること |
さらに、受講費用は自己負担。全国平均は4万3,690円と、実施する都道府県によって受講費用にはバラツキもあります。
最安の自治体は秋田県の2万996円に対して、最高は愛知県の6万2,000円。価格差は3倍で、経済的なコストの不公平感が強くなっています。

さらに、介護従事者の半数は主任ケアマネージャーの仕事に対して、「給与面でのメリットが感じられない」「責任が重い」と考えています。
そういった理由から、ケアマネージャーまでをひとつのキャリア形成に考えていることも、資格取得が進まない背景となっています。
厚労省は実態調査を開始した
2回目の経過措置延長で、いまだに主任ケアマネージャーの資格取得に大きなハードルが残っている状況をどう改善するのでしょうか。
自治体によって費用に差が大きいなど、受講要件の地域差がなぜ生まれているのかについて、厚生労働省は実態調査に乗り出しました。
とりわけ都道府県で3倍もの受講費用もの開きがあるのは、地域医療介護総合確保基金の活用法の違いが考えられます。
本来、受講費用を下げて介護資格者を増強する目的の基金ですが、2万996円と6万2,000円の都道府県では、自己負担費用だけで受講を躊躇する人も多いはずです。
また、主任ケアマネージャーの研修受講への、該当条件が厳しい点も問題です。
例えば、ケアマネージメントリーダー養成研修修了者や認定ケアマネが通算3年以上専任ケアマネとして働いていることや、地域包括支援センターの就業者を主任ケアマネに準ずる人とすることなどが条件となっています。
都道府県によっては、市区町村の推薦が必要なケースもあります。
このように、ある程度自治体の裁量に任せることも必要なものの、あまりに受講費用や受講要件にバラツキがあるのは、全国的に配置基準を厳格化する方針と相容れないと考えられます。
厚生労働省は実態調査の結果を精査した上で、都道府県ごとに横たわるローカルルールを改善して、配置促進に向けて研修受講のハードルが下がる対策を考えることが必要でしょう。
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2020年9月7日 制定