ケアマネージャーを目指す介護職員が減少している
ケアマネ受験者数は過去最少に…多くが「割に合わない」と認識
3月8日、厚生労働省は第22回(2019年度)介護支援専門員実務研修受講試験(ケアマネ試験)の受験者数を公表しました。
それによると、47都道府県での受験者数は4万918人。過去最少だった2018年度の4万9,312人と比べて8,394人も減少しています。

本来、今年度のケアマネ試験の試験日は2019年10月13日だったため、受験者数もその時期に合わせて把握されるはずでした。
しかし試験日当日に台風19号が襲来。関東や東北の1都12県で試験日が2020年3月8日に延期され、全体の受験者数もその時になってようやく判明したのです。
ところが今年の3月8日はご存じの通り、新型コロナウィルスの感染が拡大している時期でした。2019年度試験の受験者数が8,000人以上も減った背景には、こうした試験日にまつわる不運が重なったことも影響しています。
そうした事情を抜きにしても、現在、ケアマネ試験の受験者数は減少中。2017年度の受験者数は13万1,560人でしたが、2018年度には5万人を切るほどまで、一気に減少しています。
受験者数が減った理由の1つが、制度変更による受験資格の厳格化です。2018年度試験から2級ヘルパーなどが受験資格の対象外となったことが影響したと考えられます。
そしてもう1つの理由が、ケアマネージャーの職種について「要求される役割の重さや研修・勉強の多さに対して、報酬額が低すぎる」という認識が広まったこと。
本来、ケアマネージャーは、介護福祉系のキャリア・待遇において最上位に位置するとされています。
「介護職でキャリアアップするなら、最終的にはケアマネージャーを目指す」というのが基本的な道筋としてあったわけです。
ところが近年、努力を重ねてケアマネージャーになることに「割に合わない」と思う人が増えている、と指摘する声が高まっています。なぜ、このような事態が起こっているのでしょうか。
ケアマネは高齢者と事業者の仲介・調整役
そもそもケアマネージャーは、「介護支援専門員」と呼ばれ、要介護認定を受けた高齢者のケアマネジメントを行う役割を担います。
具体的には、介護サービスの利用計画を記した「ケアプラン」の作成、さらにはケアプランの内容に問題がないかを検討する「サービス担当者会議」をセッティングし、サービス提供者間の調整などを担当しています。
また、介護サービスの利用者がサービス内容に要望やクレームを言いたいとき、本人の代弁者となって伝えるのもケアマネージャーの仕事です。事業者側の回答や考えを、介護サービスの利用者に知らせるのもケアマネの仕事です。
すなわち、介護サービスの利用者と介護サービスの提供事業者、あるいは介護サービスの提供事業者同士を結びつける「仲介役・調整役」としての役割を果たすのが、ケアマネージャーであるわけです。
負担は増大するも待遇は十分に改善されていない
ケアマネージャーの負担は「1人で30人を担当」するまでに
近年、急速に高齢化が進むなか、ケアマネージャー1人当たりの担当する利用者数は増加しつつあります。
厚生労働省によると、2018年度におけるケアマネージャー1人あたりの利用者数は、2年前の2016年度よりも1.9人多い27.1人。ケアマネージャー1人で30人近い利用者を担当する必要があるのです。
30人の利用者に合ったケアプランの作成や介護サービス提供事業者との調整などを1人で行うわけですから、激務が続くのは当然。現場のケアマネージャーからは、「報酬と業務量が見合っていない」と指摘する声が上がっています。
例えば、兵庫県の自治体がケアマネージャーを対象に「自身の事業者に希望すること」を尋ねるアンケート調査を実施したところ(複数回答)、全体の過半となる52.2%が「給与など、待遇の改善を図る」と回答しました。
ほかの「人員の増員」(39.1%)や、「ケアプラン作成にあたっての助言」(30.4%)などよりも、大幅に高い割合を占めていたのです。

さらに現在、ケアプランとは別に、介護報酬の低い「介護予防プラン」の作成業務をケアマネージャーの業務に移行させるとの議論があります。
この点に関して「シルバー新聞」がケアマネージャーにアンケート調査を行ったところ、「反対」との回答が全体の60%に上りました。
もし実施されればケアマネージャーの負担が増えるのは確実です。これ以上、低い報酬で仕事を増やしたくないというのが、反対意見の多さにつながっていると考えられます。
2019年の処遇改善では居宅ケアマネが対象外になった
そういった流れを受けて、2017年には「介護職員処遇改善加算」が介護報酬制度に導入され、ケアマネージャーの待遇改善が図られました。
これにより2017年9月時点におけるケアマネージャーの平均給与は月34万5,820円となり、前年の同月よりも8,320円上昇。多少ながらも一定の待遇改善効果はみられたわけです。
ところが、2019年に追加で導入された「介護職員など、特定処遇改善加算」では、主に経験や技能のある介護職員のみが対象の限定的な待遇改善が測られました。さらに、居宅のケアマネージャーは対象外となったのです。
民間のアンケート調査によると、「介護職員など、特定処遇改善加算に居宅のケアマネージャーが対象外となったことに納得できない」と回答したケアマネージャーは、全体の53%に上っています。
受験者数の減少という事実から見ても、ケアマネージャーの人員獲得には待遇面での改善が不可欠です。
改善策としてペーパーレス化とAI化が進んでいる
一方で近年では、ケアマネージャーの仕事量や待遇を解消するための対策も取られるようになってきました。その1つが、ケアプランのペーパーレス化です。
日本介護支援専門員協会、NTTデータ、NTTデータ経営研究所は、ケアプランのペーパーレス化に向けた実証実験を2020年に開始。居宅介護支援事業所と介護サービス事業所の間で、ケアプランのデータを電子的に受け渡しできるようにすることを目指しています。
また、現在進められているケアプランのAI(人工知能)化も、ケアマネージャーの業務改善策の1つです。
例えば、福岡市では、民会会社と協働でAI活用によるケアマネージャー支援の実証実験を実施。数年後を目標に、AIを本格導入したケアプランの作成を開始する予定です。
さらに愛知県豊橋市でも、2018年度からAIを活用したケアプラン作成の体制を導入。豊橋市の過去8年分、約10万件に上る介護データを基に、高齢者の自立支援に貢献するケアプランが「CDI Platform MAIA」というAIにより作成されています。
将来のケアマネは調整業務に特化していく可能性も
2020年4月からは、これまでケアマネージャーしか担えない業務とされていた「要介護認定の調査」を、看護師や介護福祉士をはじめとするの21職種と介護施設の生活相談員などでも行えるようになりました(ただし介護現場での実務経験が5年以上必要)。

認定調査は介護保険制度の根幹を支える重要過程であり、市町村が主体的に実施することが原則とされつつも、業務負担を考慮して事業者に委託することが認められています。
これにより、ケアマネージャーの業務負担が緩和されるのではないかと期待されます。
現在、以上のようなケアマネージャーの業務軽減化の動きが進められています。将来的にケアプランの作成業務や諸々の事務はAIや他職でも担えるようになり、ケアマネージャーは関係者の調整業務のみに注力するという傾向が強まるのかもしれません。
今回はケアマネージャーの受験数が減少と、その要因の1つである「業務量と報酬が見合わない」という現状について考えてきました。
ケアマネージャーの受験者数が減っている事態に対して、どのような対応策が考えられるのか…今後も議論が展開されそうです。
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2020年9月7日 制定