介護職の約半数が悩む、深刻な腰痛問題
腰痛に悩む介護職員は増加傾向にある
8月20日、介護職の労働組合UAゼンセン日本介護クラフトユニオン(NCCU)が、介護職の腰痛についての調査結果を公表しました。そこで仕事を原因とする腰痛が「ある」と回答した人は46.4%。約半数の人が腰痛を感じていることがわかりました。
腰痛を抱える人の多くが今のところ「仕事に支障はない」(55.8%)と答えた一方で、「かなり痛い」(20.8%)、「仕事が続かないほど痛い」(7.7%)と深刻に悩んでいる人もいたようです。
実際に取り組まれている腰痛対策には、「定期的な健康診断」「予防体操」「2人以上での移乗の推進」「教育・推進の徹底」が挙げられました。また「ノーリフトケア」の導入は、5.8%と低いことがわかりました。
腰痛を引き起こす動作要因
厚労省の発表によると、社会福祉・介護事業における労働災害は年々増えており、事故の内容としては「動作の反動、無理な動作」や「転倒」が多くみられます。
「腰痛」の業種別発生状況をみると、保健衛生業(社会福祉施設、医療保健業など)の割合が30%と最も高くなっています。

特に社会福祉施設での腰痛は、近年増加傾向にあることがわかっています。介護職員が腰痛を引き起こす要因には、動作要因、心理・社会的要因、個人的要因、環境要因など複合的な要因が考えられます。今回は、動作要因について詳しく説明していきます。
介護業務の中で腰に負担のかかりやすい姿勢や動作としては、以下の4つが挙げられます。
- 前かがみや中腰の姿勢(おむつ交換・体位移動など)
- 腰をひねる(食事・入浴・移乗介助など)
- 長時間の同じ(食事・入浴介助など)
- 持ち上げる(起き上がり・移乗介助など)
この4つの動作を腰に負担をかけずに行うことが、腰痛を防ぐうえで大切なことだと言えます。
自治体や国もノーリフトケアを積極的に推進している
ノーリフトケアの先進県「高知」で行っている取り組み
2016年、全国に先駆けて高知県では「ノーリフティングケア宣言」をしています。県が「介護福祉機器等導入支援事業費補助金(当時=福祉・介護就労環境改善事業費補助金)」を予算化し、介護業界の意識と働き方を変える取り組みを推進しました。
このノーリフトケア(ノーリフティングケア)とは、以下の5つの動作をなるべく行わず、福祉用具などを活用して行う介助方法のことです。
- 押す
- 引く
- 持ち上げる
- 運ぶ
- 体をねじる
このノーリフトケアを積極的に取り入れた結果、職員の腰痛防止に効果が表れたことはもちろん、利用者とのコミュニケーションの時間が増えたり、二次障がいの防止や姿勢が改善されたりと、ケアの質の向上にもつながったようです。
職場環境の改善によって、離職率が減少するという効果もありました。
また、福祉用具を用いてのノーリフトケアは、人力による介助のように密着を必要としないので、新型コロナウイルス感染症対策としても効果的だと言えます。さらに異性への介護に抵抗を感じる人でも安心して介護ができます。
高知県では「ノーリフティングケア宣言」から5年が経った今もなお、ノーリフトケア実践施設は年々増え、組織的な腰痛予防の取り組みが進んでいます。
加算など腰痛対策に積極的な姿勢
2021年4月に介護職員処遇改善が改定されて、「職場環境等要件」の取り組みが毎年求められるようになりました。
「職場環境・処遇の改善」の中の一つにまとめられていた腰痛に関する事項に、「腰痛を含む心身の健康管理」が新たに設けられたのです。
ノーリフトケアに取り組む事業所が評価されるようになって腰痛予防対策が加算対象になったことは、国としても介護職員の腰痛対策に前向きに取り組んでいると言えるでしょう。
ノーリフトケア普及を阻む壁とは
両者に利点も浸透に至らないのは何故か?
介護をする側、される側双方に利点の多いノーリフトケアですが、前段で述べたように導入率の低さから全国的に浸透しているとは言えない状況です。
必要性を感じてはいるものの導入までは至っていないという声が多く、その理由には以下のようなものが挙がっています。
- 正しい使い方がわからない、教えられる人がいない
- 人の手による温もりある介護への強いこだわり
- コストがかかる
- 一つひとつの作業に時間がかかる
定期的な研修で介護者のスキルアップ
ノーリフトケアの浸透が進まない理由の一つに、介護者の知識や技術不足が挙げられます。自治体や社団法人が実施するノーリフトケア研修も増えおり、最近はオンラインでの養成講座もあるので、遠方からも参加しやすくなっています。
ノーリフトケアの導入が全国に普及するためには、まだ課題が残っています。しかし、今後ますます深刻になる介護職員の人手不足、少子高齢化社会における介護の持続性やケアの質向上の鍵となることは間違いありません。
日本ノーリフト協会のホームページに掲載されている情報によると、ノーリフトケア発祥の地であるオーストラリアでは、導入後は労災申請数や労災申請に伴う費用が、1年間で約46%も減少していることがわかります。

今後もノーリフトケアの普及による介護職の腰痛予防には、期待が高まっていくでしょう。
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2020年9月7日 制定