訪問理美容が注目される理由
介護施設などで訪問理美容のニーズが高まる
体力の低下や、病気にかかり要介護の状態になるなど、高齢者はさまざまな理由で外出が難しくなることがあります。しかし、そのような状態にあっても身だしなみは気になるもの。そんなときに利用したいのが訪問理美容です。
訪問理美容は、自宅や介護施設へ赴いて、カットやシャンプー、ひげ剃りなどを行うサービスです。コロナ禍の影響もあり、その認知度や利用率は年々高まっています。
リクルートライフスタイルが発表した「訪問理美容サービスに関する利用実態調査2020」によると、2015年の認知度が55%だったのに対し、2020年は81.6%に上昇。利用率も18%から32%に伸びています。

また、まだ利用したことがない人に対し、「今後利用したいかどうか」を尋ねたところ、利用意向ありと回答した割合は47.3%に上ります。2019年調査では38.5%だったので、ここ1年で10ポイント弱も上昇していることがわかります。
訪問理美容の心理的効果
介護において、高齢者や利用者の「QOL(生活の質)」向上は大きな課題のひとつです。
その人らしいライフスタイルが維持できるように支援することが大切です。
今まで活発に社会活動をしていた人が要介護状態になると、行動範囲が狭まり、孤立したり、気力が失われてしまう可能性があります。
訪問理美容などで、高齢者の身だしhouなみを整えることは、生理的欲求や安全欲求を高める効果があることが報告されています。こうした欲求が満たされると、気分が爽快になり、食欲の高めるなどの作用があるとも言われています。
介護施設や在宅で引きこもる傾向が高まる高齢者や要介護者こそ、身だしなみを整えて社会性を保つことが大切です。精神的な充足感は社会的・肉体的にも良い影響があるのです。心身が活性化し、結果的に人との交流も活発になっていきます。
訪問理美容サービスの今
これまでの課題と現状
訪問理美容の重要性が注目され始めたのは1998年頃。愛知県や岡山県でモデル事業が実施され、その効果や問題点が検証されました。当時の報告書には、さまざまな課題が記されています。
「ベッドや車椅子などでの施術、あるいは酸素吸入中の施術、背部が曲がっている人、ベッドに寝たままの人など、日頃理美容所で行っている場合とは異なり、技術面でさまざまな創意工夫が求められる」
「在宅者の訪問理美容においては、事前に必要な情報を確認してお く必要があると同時に、施術中に万が一容態が急変したような場合を考えれば、責任の所在を明らかにするという意味でも、施術者を熟知している家族あるいはホームヘルパー等の付き添いが、不可欠である」
訪問理美容では、おもな顧客が要介護者であったり、寝たきりの高齢者が多く、理美容の国家資格に加えて、介護や介助の専門知識や技術が必要になります。
しかし、理美容の養成課程には、原則として介護や介助など、高齢者を想定した項目は含まれていません。現在、訪問理美容における資格などは、民間団体によるものが発行されていますが、中には数時間程度の座学講習のみで取得できてしまうこともあります。
専門的知識を持たない事業者では、思わぬトラブルを招くことも考えられるため、専門的な養成・研修の拡充が求められています。
潜在的な人材は豊富!
美容業界では、資格を持ちながらも理美容業に従事していない「休眠理美容師」が多いとされています。
例えば、美容師の登録者数は2014年時点で125万6,444人いますが、従業している数は49万6,967人。
およそ80万人の美容師が就業していないのです。

訪問理美容サービスは、時間や場所といった働く環境を柔軟に設定できるため、常駐勤務が難しい休眠理美容師の再就職を促進する効果も期待されています。
このように訪問理美容は発展の余地を大きく残しています。研修や養成機関を拡充できれば、より一般的なサービスになる可能性があるのです。
高齢者の美容に関する意識
高齢者の美容ニーズ
近年は高齢者によるカラーやマッサージなどのニーズも高まっています。
『山野研究紀要』に掲載された「高齢者の美容ニーズに合わせた美容室の実態調査」によると、高齢者の美容室に対する要望として「年代に合わせたヘアスタイルの提案」、「髪や肌に負担の少ないパーマ液やカラー剤の用意」、「美容に関する悩みに対応できる基本的な知識(化粧品やファッション、薄毛対策など)」、「白髪を自然に見せるためのカラーリング技術」といった項目が挙げられています。
こうしたニーズへいかに対応できるかが、美容室側としても高齢者層を集客する上での鍵となりそうです。

また、朝日新聞社の“アクティブシニア”に関するプロジェクト「Reライフプロジェクト」の調査によれば、「いくつになってもキレイでいたい」と回答した割合が約8割に上っています。
これらのことから高齢者の美容ニーズは高まっており、さまざまなサービスの提供が求められていることがわかります。
官民連携の取り組みも始まっている
こうした現状を受けて、産官学連携による訪問理美容師育成の取り組みも始まっています。文部科学省と穴吹ビューティカレッジは、2018年度に香川県で「専修学校による地域産業中核的人材養成事業」を実施しました。
人材教育は既存の理美容学校が実施し、自治体が地域理解などを進める活動を行い、介護施設や理美容事業者が独立開業支援・事業化マネジメントなどを担いました。
調査によると、訪問理美容師のサービスに対し、介護施設入所している利用者の満足度は、ほぼ100%に達していました。
こうした連携が加速すれば、より専門的な人材の育成が期待されます。訪問理美容は、高齢者や要介護者の心身機能向上や休眠理美容師の活用など、介護だけでなく社会にも意義があります。今後の発展に期待しましょう。
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2020年9月7日 制定