高齢者のネット利用がコロナ禍で広がっている
ネット通販利用が倍増
一般的に「高齢者は最新技術が苦手」というイメージが定着しています。しかし、近年はスマートフォンの普及などによって、高齢者のネット利用が進んでいます。
2021年の『高齢社会白書』の調査によると、60歳以上の高齢者がスマートフォンを利用している割合は日本44.5%。
アメリカ62.6%、ドイツ65.2%、スウェーデン58.8%と比較すると、まだ普及率は低いように思われますが、割合は年々増加傾向にあります。
特に増えたのは、ネットショッピングの利用です。携帯やスマートフォンをどんな目的で利用しているのかを尋ねたところ、「インターネットで情報を集めたり、ショッピングをする」が2020年では31.7%となり、2015年の16.5%から倍増しています。

また、三井住友カードが60~70代を対象に行った調査によると、「普段の買い物で一番多く利用する決済方法は?」に対して、クレジットカードが約49%と最多でした。
その他のカード利用をあわせると、キャッシュレス派が67.4%となりました。
高齢者の消費活動はこれまでのイメージとは異なり、最新技術を使いこなしている人が多いことがわかります。
ICT利用による6つの効果
高齢者のICT利用には、以下のようなメリットがあると考えられています。
- コミュニケーションやアクティビティの増加
- 楽しみ・喜び・刺激・安心感の提供
- 健康面の改善
- 居場所と役割の形成
- 家族や友人とのコミュニケーションの増加と円滑化
- 介護やリハビリテーションなどでの家族の負担軽減
まず、ICT技術を利用することで、さまざまなコミュニケーションが円滑化します。SNSやオンラインツールなどによって、これまで疎遠だった旧友や遠方で暮らす子や孫とも気軽に連絡が取れるようになります。そのため、精神的に良い影響が表れるのです。
また、ICTを利用することで脳が活性化することもわかっています。
半身まひになってしまった女性がブログを書くことは、身体能力だけでなく、思考能力の改善など、リハビリテーション効果も期待できるとされています。
このように、精神的・肉体的にも高齢者のICT利用はメリットが大きいのです。
アクティブシニアの活躍に期待
高齢者の8割はアクティブシニア?
加齢とともに身体機能や認知機能は低下するのが一般的です。認知能力は50歳を境に急激に衰えます。そのため、高齢者が健康的に生活を営むためには、日常での行動を活発化する必要があります。
介護の業界では、2025年問題などが取り沙汰され、要介護者は右肩上がりで増加すると言われています。一方で、高齢者全体の割合をみると、高齢者のおよそ8割は要介護でない元気な高齢者です。

元気な高齢者の中でも、特に活発に活動する高齢者は「アクティブシニア」と呼ばれており、人生100年時代における高齢者のモデルケースとして注目されています。
「食」「運動」「社会参加」で健康寿命を延伸
日本では「予防医学」という考え方が広まっており、平均寿命よりも健康寿命をいかに延ばすかにフォーカスしています。これは、疾患になる未病の段階で高齢者などにアプローチしたり、啓蒙活動を行うことで生活習慣を改善していこうとするものです。
予防医学でポイントとされているのは「食」「運動」「社会参加」の3つで、いずれも健康寿命を延伸する効果があるとされています。
例えば、スポーツ参加。
運動不足の人と定期的にスポーツを行っている人の死亡率を比較した結果、さまざまなスポーツにおいて、健康寿命を延ばすことが示されています。
最も寿命を延ばしたのはテニスで9.7年、次いでバドミントン6.2年、サッカー4.7年、サイクリング3.7年、水泳3.4年と続きました。
上記を見ればわかるように、個人スポーツよりも大人数でのスポーツの方が効果が高いとされています。理由はまだはっきりとはしていませんが、不完全な回復を挟んで運動を繰り返す「インターバルトレーニング」がいいという説があります。。
こうしたスポーツなどを楽しめるアクティブシニアが増えれば、健康的な高齢者が増えると予測されます。結果的に病気を患う高齢者が少なくなり、2025年問題などを軽減するのではないかと考えられているのです。
超高齢化社会を支えるアクティブシニアとICTのミックス
アクティブシニアが介護分野で活躍
アクティブシニアを増やすだけでなく、社会参加をいっそう促していこうという動きも強まっています。厚労省では介護人材不足を解消するため「介護のしごと魅力発信等事業」に取り組んでいます。
その一環として、働く意欲の強いアクティブシニアを介護分野で採用しようと、さまざまな調査や施策を行っています。例えば、新たにアクティブシニア向けのWEBメディアを立ち上げて、啓発活動や講習セミナーなどをオンラインで実施する施策を進めています。
介護人材を若い世代だけでなく、アクティブシニアまで広げていければ、現状の不足感を解消する一手になるかもしれません。こうした取り組みを加速させるには、高齢者のネットやICT利用をより普及させていく必要があります。
ICT活用で健康寿命を延ばす取り組み
医療、介護、健康分野でのICT利用は、新型コロナの感染拡大によって、必要性が高まっています。近年話題になっているオンライン診療などもその一環で、実は2010年代前半から普及の必要性が叫ばれていました。
すでにICTの活用によって健康寿命の延伸に一定の効果を示している取り組み例もあります。新潟県見附市では、筑波大学と協働してICTシステムを活用した健康づくり事業を実施してきました。
高齢者の個人差に合わせて、個別運動プログラムをICTシステムによって考案する仕組みで、参加した高齢者の体力年齢が4.5歳若返るという結果が得られ、医療費も年間で10万円ほど削減されました。

ICTを積極的に活用するアクティブシニアが増加すれば、健康寿命も延伸し、介護業界をはじめとした人材不足にあえぐ業界の一助になる可能性もあります。超高齢化社会に向けて、アクティブシニアは心強い存在になるのではないでしょうか。
みんなのコメント
ニックネームをご登録いただければニックネームの表示になります。
投稿を行った場合、
ガイドラインに同意したものとみなします。
みんなのコメント 3件
投稿ガイドライン
コミュニティおよびコメント欄は、コミュニティや記事を介してユーザーが自分の意見を述べたり、ユーザー同士で議論することで、見識を深めることを目的としています。トピックスやコメントは誰でも自由に投稿・閲覧することができますが、ルールや目的に沿わない投稿については削除される場合もあります。利用目的をよく理解し、ルールを守ってご活用ください。
書き込まれたコメントは当社の判断により、違法行為につながる投稿や公序良俗に反する投稿、差別や人権侵害などを助長する投稿については即座に排除されたり、表示を保留されたりすることがあります。また、いわゆる「荒らし」に相当すると判断された投稿についても削除される場合があります。なお、コメントシステムの仕様や機能は、ユーザーに事前に通知することなく、裁量により変更されたり、中断または停止されることがあります。なお、削除理由については当社は開示する義務を一切負いません。
ユーザーが投稿したコメントに関する著作権は、投稿を行ったユーザーに帰属します。なお、コメントが投稿されたことをもって、ユーザーは当社に対して、投稿したコメントを当社が日本の国内外で無償かつ非独占的に利用する権利を期限の定めなく許諾(第三者へ許諾する権利を含みます)することに同意されたものとします。また、ユーザーは、当社および当社の指定する第三者に対し、投稿したコメントについて著作者人格権を行使しないことに同意されたものとします。
当社が必要と判断した場合には、ユーザーの承諾なしに本ガイドラインを変更することができるものとします。
以下のメールアドレスにお問い合わせください。
info@minnanokaigo.com
当社はユーザー間もしくはユーザーと第三者間とのトラブル、およびその他の損害について一切の責任を負いません。
2020年9月7日 制定