社会に浸透してきた性的マイノリティへの配慮
LGBT向けの介護施設が増えている
電通ダイバーシティ・ラボの『LGBT調査2018』によると、LGBTと呼ばれる性的マイノリティの人は、8.9%にのぼり、約11人に1人いるとされています(調査対象6万人)。2012年調査時の5.2%から3.7ポイント上昇しています。
その中には当然高齢者も含まれており、これまでもLGBTの人に向けた介護支援の必要性が指摘されてきました。こうした傾向を受けて、全国にはLGBTの人でも利用できる介護事業所も登場しています。
中には地域内にあるほかの施設から、LGBTの高齢者について相談を受け、対応しているような事業所もあります。このようにLGBTに理解のある介護施設は、今後も増えていくことでしょう。
世間のLGBTへの理解は進みつつある
近年は、LGBTへの理解も急速に浸透しています。
先に述べた調査によると、「LGBT」という言葉の意味を知っている人(「知っている」「なんとなく知っている」と回答した人の合計)は68.5%にのぼっています。
2015年調査時は37.6%だったため、わずか3年間で30ポイント以上も上昇しています。

さらに、76.0%の人が「LGBTについて正しい理解をしたい」という意向を持っていることもわかりました。このように、世間では性的マイノリティに含まれる人を尊重することへの関心が高まっています。
例えば、2015年には東京都渋谷区や世田谷区で「同性パートナーシップ制度」が導入されたことを皮切りに、2020年4月時点では全国47の自治体に同制度が広まっています。
同性パートナーシップ制度とは、同性カップルを認めて証明書を発行することで、病院などで家族として扱ってもらえるなどの一定の権利を認めようとするものです。
また、公共施設などで増えている「誰でもトイレ」も、障がい者や高齢者だけでなく、LGBTの人たちへの配慮する意味合いを含んでいます。こうした動きは少しずつ社会に浸透しており、LGBTの人たちに対する理解度は着実に深まっていると言えるでしょう。
性的マイノリティの高齢者が直面する現状
年代が高くなるほど理解度は低くなる
しかし、LGBTへの理解度には世代間格差も少なくありません。先に述べたLGBTという言葉に対する理解度を世代別に見ると、20代では「知っている」が40.1%なのに対し、50代では31.4%と1割近く低くなっています。
高齢者間での理解が進んでいないため、介護施設などでは性的マイノリティに対する支援や対策が取られにくい状況になっています。
SOMPOリスクマネジメントの『性的マイノリティの高齢者が直面する課題への対応』は、LGBTの高齢者が施設で経験する困難として、次のような具体例を挙げています。
- 性的指向や性自認に困難を抱える高齢者が差別を恐れずに通える施設がなく、サービスを受けられなかった
- 認知症や意識不明の患者について、同性パートナーの意向が考慮されない
- ホルモン剤を摂取しているが、ケースワーカーに理解されず、摂取を止められる
このように、性的マイノリティの高齢者は、福祉施設や医療機関などで、さまざまな不利益を生じることが指摘されています。
「カミングアウト」が難しいという現状も
こうした状況を生み出している要因のひとつに、自身が性的マイノリティだと打ち明ける「カミングアウト」はまだまだしづらい現状があると考えられています。
例えば、LGBTの人は「職場の同僚(上司・部下含む)へのカミングアウト」については50.7%の人が抵抗を感じているのに対し、抵抗がない人は21.1%にとどまっています。
抵抗を感じる理由のひとつとしては、会社などにそうしたサポート制度が整っていないことが挙げられています。

サポート体制が構築されていないのは、介護でも同様です。現在、介護福祉に関する専門学校などで、LGBTに対する接し方や人権に関する授業を実施しているケースは多くありません。中には介護現場で差別的な発言を聞いたことがあるという証言もあります。
こうした状況が改善しない限り、LGBTの高齢者を介護する環境の整備はなかなか進まないでしょう。
対策が求められる特有の問題とは
独居の高齢者になりやすい
性的マイノリティの人は、子どもがなく、独居で高齢期を迎えることが多いと予測されています。つまり、高齢者になったとき、介護をしてくれる人がいないケースが多くなりやすいと考えられます。
そのため、認知症を発症してからのサポートの遅れや孤独死の可能性が懸念されています。そのほか、同性パートナーと築いた資産などをほかの親族に相続されるなど、LGBTの高齢者が抱える問題は少なくありません。
約11人に1人がLGBTだと考えれば、介護に限らず、性的マイノリティの高齢者に対する支援が必要になることは想像に難くありません。
ケアマネージャーが率先して理解度を進める
こうした現状を改善するために必要なのは、高齢者支援で中心的存在を担うケアマネージャーの理解度を進めることではないでしょうか。
しかし、同性のパートナーを持つ利用者のケアマネジメントが「難しい」と思うケアマネージャーの割合は35.5%で、生まれたときの性別を変えた利用者さんのケアマネジメントが「難しい」と思う割合は46.2%にものぼります。
その一方で、性的マイノリティについて何らかの形で学んだことがあるケアマネージャーは、あまり「難しい」と思っていないこともわかっています。
介護が必要になったLGBTの高齢者のパートナーが同性だった場合、現在では意向を反映できないことも少なくありません。ほかの親族の意向が強く反映されてしまいやすいのです。
しかし、ケアマネージャーの73.2%は同性パートナーの意向も決定に反映させたいと考えているようです。

性的マイノリティを受け入れやすい社会が少しずつ広がりを見せつつある今、高齢者の中にも「性的マイノリティはいる」という考え方を持つことが大切です。
まずはケアマネージャーの方が、LGBTについて正しい知識を学ぶ機会を増やす必要があるのではないでしょうか。
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2020年9月7日 制定